ライブ日記2006春(2006年5月18日更新)

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 目 次

2006年春の本州ツアー 4月27日〜4月30日

1.4月27日(木) 東京 新橋・レッドペッパー(with Sketch、荒谷みつる)
2.4月28日(金) 東京 国分寺・クラスタ(with 覆面シンガー)
3.4月29日(土) 千葉 新柏・キッチンパタータ(with Sketch)
4.4月30日(日) 東京・Star Pine's Cafe(ステファン・グロスマン、打田十紀夫のゲストとして) NEW!!
5.5月1日(月) 小樽へ帰還 NEW!!

 

・2006年春の本州ツアー 4月27日〜4月30日

 2006年に入って早くも第二回目の本州ツアー。といっても、関東限定の小さなツアーになりました。
 今回のメインイベントは、何と言ってもあのステファン・グロスマンと打田十紀夫さんライブのゲスト出演という、夢のような舞台です。名付けると「グロスマンに会うぞツアー」(だんだん新庄選手のホームランみたいなネーミングになってきました)というわけです。
 時期としては春の連休中に少しかぶるため、いつもの私はずっと小樽でギターを弾いている時期ですが、こんな光栄な舞台を目の前にしてそんなことは言っていられません。

 さてさて毎度おなじみ、交通手段の話題。

 打田さんからお話を聞いて即お引き受けした後、私はAIRDOの超割チケットをGETしました。これはライブの2ヶ月近く前でした。(片道9500-10000円ほどですが)往復飛行機という、私のツアーではまれに見るゴージャスな交通手段。連休後半にそなえて、すぐ小樽に帰って運河でギターを弾くためでした。いわば「行きも帰りも楽ちんツアー」です。

 ところがその後、あのスカイマークエアラインズが羽田←→千歳間の航路へ参入を表明。連休シーズンから一定期間1万円以下という戦略的な価格設定を掲げたため、航空各社が価格を見直し、特にAIRDOは道民割引後の最低価格を9100円まで下げてしまいました。JR運賃で言えば仙台にもたどり着けないほどの低価格!

 こうして、通常は早く予約すればするほど得になる航空チケットで、早く予約したために逆に損をしてしまったという、世にも珍しいケースが発生してしまいました。トホホです。
 何度も貧乏ネタで申し訳ない...。

 

1.4月27日(木)東京 新橋・レッドペッパー(with Sketch、荒谷みつる)

 朝が弱い私は、時間に余裕を持って午後の便を予約したのですが、何と落雷の影響で40分くらい新千歳空港からの出発が遅れ、結局予定の到着時間から一時間近く遅くなってしまいました。
 そうそうに例の安ホテルでチェックインして、休む間もなく新橋のレッドペッパーへ。行く途中、お店にお電話すると、今回二カ所で共演するSketchさんから「やっぱりケータイ持ちなよ」「みんなには黙っててあげるからさぁ」攻撃が。
 いえいえ、こういうトラブルこそ、私が人生で追い求めるロマンや緊張感を盛り立てるのです。
 私の哲学に基づいた迷惑に、どうかハラハラしながら巻き込まれて下さい。


[写真:浜田隆史(Sketchさん提供)。]
 私は前回から引き続き、またもトップバッターで出演。

 レッドペッパーのオムニバスライブは、すでに恒例になりました。伝説の「三人の変態」ライブが、形を変えながら続いていることに、私は大きな意義と誇り、そして人の縁を感じつつ活動しています。


[写真:Sketchさん。左はStudio migmigの佐藤君。]
 二人目はSketchさん。最近、私はSketchさんと共演する機会が多いです。今回のツアー以外にも、6月初旬に札幌・小樽での共演が予定されています。

 ナイロン弦ギターを使った貫禄のプレイは、さすが今回の年長者。
 安田守彦さんのプロデュースするオムニバスCDにも参加予定とのことで、メロディアスなオリジナル曲も素晴らしいです。


[写真:荒谷くん。弾いているのはマーチン。]

[写真:荒谷くん。お客さんはみんな興味津々。]
 我々年長者を差し置いてトリをつとめたのが、今回正式には初めて共演する荒谷みつる君です。彼と初めて会ったのは苫小牧でしたが、時が流れてやっと東京で共演できました。

 若手ギタリストの中で、メキメキ頭角を現している彼のプレイは、実にオーソドックスかつクールで、音楽的にも素晴らしいものです。
 派手な特殊奏法がもてはやされることが多いこの時代で、通常の奏法だけでカッコよさを感じるギタリストは、むしろ貴重な存在です。

 音楽に勝ち負けというのはありませんが、もし敢えてそういう尺度で語るとすれば、この日の彼はもうぶっちぎり状態だったと思います。彼のギター世界に触れる機会のなかった人は、ぜひ一度接してみることをお勧めします。

 最後は、恒例の三人によるセッション。皆さんのおかげで、盛況のうちに終了しました。

 

2.4月28日(金)東京 国分寺・クラスタ(with 覆面シンガー)

 今回のツアーは、さらに名付けると「忘れ物根絶ツアー」にしようと事前に心に決めていました。今までのライブ日記にも、しょうもない忘れ物のことがいろいろ書かれていて、あきれた方も多いと思います。これ以上日記用にうかつなネタを提供してしまうと、若ボケ扱いされかねないのです。
 新橋・レッドペッパーのライブでも、仲間の忘れ物にまで気を配り、細心の注意を払って忘れ物を防いできました。

 ところが、大事なものを忘れていたことに、この日気がつきました。
 新橋の時ではなく、そもそも出発時に忘れ物をしてしまったのです。
 それは何かというと...覆面シンガーの覆面でした。例のパンダ覆面、そして前回デビューした「アメリカン仮面」も、二本立てで用意していたつもりなのに、いざ荷物をチェックするとないのです。うわ〜〜〜。覆面君に何てお詫びしたらいいんだ? 私が彼を完全にオマケ扱いしているのがバレバレ。私は、彼のためにこの責任をとらなければいけなくなりました。


[写真:覆面シンガー「ダッシュ7」のあまりにも悲しい姿。]
...ということで、セブンイレブンのレジ袋で即席仮面を作り、彼にかぶってもらいました。新覆面クンの誕生です。

 彼は最初「セブンイレブン仮面」と名乗ろうとしたそうですが、クラスタの田中さんに「ダッシュ7」というかっこいい名前を付けていただきました。

 この日限りの覆面でしたから、当日のお客様は貴重なものを見たことになります。


[写真:CDにサインする覆面君。頼む方も頼む方ですよ。]
 国分寺のクラスタは、覆面シンガーが安心して出没できる都内唯一のお店ですが、彼は少しそれに甘えすぎかも知れません。

 彼と私は別人です。本当に、しつこいくらい声を大にして言いますが、別人です。


[写真:浜田隆史。]
 こっちが本当の浜田隆史です。
 どうかお間違えなく。

 クラスタのアットホームな雰囲気に心地よさを感じながら、新しい曲も含めてパワフルな演奏ができました。ついつい流れに乗って、2時間以上のステージになりました。

 私の方が覆面君のオマケみたいに見えますが、決してそんなことはありません。

 

3.4月29日(土)千葉 新柏・キッチンパタータ(with Sketch)

 この日はあいにくの雨。なぜか新柏でのライブの日は雨が多いのですが、今日は Sketch さんと、このツアー二度目の共演。「闘うオヤジの応援団」のご支援をいただいたライブシリーズです。Sketch さんは横浜からですからかなり遠方ですが、私は宿泊が南千住ですから電車が一本で済み、アクセスは結構楽ちんでした。あまり楽ちんすぎて、ちょっとパタータに早く来すぎてしまい、セッティングして即興演奏の録音までしてしまいました。


[写真:Sketch さん。料理を楽しみながら極上の演奏会。]
 いつも思いますが、闘うオヤジさんたちオバサンおネエさんも)は、実に音楽を楽しんでいる人たちです。ギターマニアックな人から全くそんなこともない人まで大いに盛り上がり、いつも素晴らしい雰囲気でステージ演奏を盛り立ててくれます。

 Sketch さんは、前回私がトップバッターだったということで、今回は私にトリを譲ってくれました。

 最初の場所で初めは緊張の面もちでしたが、すぐにこの場の雰囲気に打ち解けて、会場と一体になっていました。パタータには、ナイロン弦の響きも実に良く合います。


[写真:浜田隆史。これ、スゴクいい写真ですね。]
 新橋での私は、多少レガート気味に押さえて弾いたのですが、Sketch さんから「元気ないね?」と言われてしまい、この日は多少軌道修正してガシガシと行きました。

 良好なPAのおかげで、自分の状態をバッチリ確認しながら、思う存分弾きまくりました。前日のクラスタでの長時間演奏も、良い形で影響していたと思いますが、この日の演奏は自分でも非常に満足のいくものでした。

 一部の人に大好評の歌もの「プハプハ」まで披露し、いい気分。

 最後はもちろん二人での共演。こうしてライブは盛会の内に終了しました。打ち上げでは、ゆつ☆さん自作のスヌーピー・ギターや、S.Sさんの持っていたヴィンテージまで、その響きに酔いしれながら四方山話。
 ホテルに帰ると、意外にもまだ11時半くらいでした。それならと、テレビで私が今唯一と言っていいほどハマっている韓国のドラマ「チャングム」を途中からチェックしました。チャングムだけは何とか助けようとするハン尚宮に、いや〜もう泣かされました...(知らない人はすみません)。

 明日はメインイベントなのに、何やってるんだか、私は。

 

4.4月30日(日)東京・Star Pine's Cafe(ステファン・グロスマン、打田十紀夫のゲストとして) NEW!!

 ついに、ずっと楽しみにしていた日がやってきました。
 私がフィンガースタイル・ギターの道に入るきっかけになったカントリー・ブルース・ギタリスト、あのステファン・グロスマンの28年ぶり来日ツアーの最終日です。ステファン・グロスマンは、私がずっとお世話になってきた打田十紀夫さんの師匠でもあり、彼の来日公演は打田さんの長年の夢。その企画が幾多の逡巡を経てついに実現し、私も我が事のようにうれしいのです。

 (ちなみに今回、畏れ多いのでデジカメは無し。)

 はやる心を抑えて、数年ぶりに吉祥寺のStar Pine's Cafeへ。お店に入って最初に目に飛び込んできたのが、イスに座ってリラックスしているステファンでした。あわあわしながら「ナイストゥーミーチュー」のご挨拶。打田さんはステファンに以前から私のことを紹介してくれていて、彼も大変喜んでくれました。教則ビデオの通り、とても人の良さそうなオジサンで、いっぺんで打ち解けてしまいました。打田さんご夫婦は、ツアー企画の疲れも何のその、ついに大仕事をやり遂げつつあるという充実感で一杯に見えました。本当に良かった!
 また、打田さんからお話を聞いていたギターと尺八ユニット「風りん」のギタリスト、ナベタケンさんとも初対面。ナベタさんはTABのツアースタッフとして同行されていました。前日にカワセ楽器でCD『サンキング』を購入、楽しんで聴いていた私は、ナベタさんとも意気投合。ナベタさんは、あのグラウンドナッツ(いわゆる「イカ天バンド」の一つとして全国的に有名)で活躍された人で、会社員の頃イカ天を欠かさずチェックしていた私は不思議な縁を感じました。

 リハの時間。
 おお、ステファンが動いている! あっ、ギター弾いてる! この曲知ってる! あっ、唄った! もう目を皿のようにして「動くステファン」を拝見しました(動かないでどうする)。打田さんとのデュオ演奏も、まるで一つの生き物のように息がピッタリ。
 私はトップバッターですから、一番最後にリハしました。私のオタルナイ・チューニングでのラグタイム演奏に、ステファンが「アメイジング!」などと言ってとても驚いて誉めてくれたのが光栄でした。今でも信じられないくらいです。また、このように分け隔てのない気さくな人だからこそ、彼は今まで数え切れないくらい多くのギタリストと長い友好関係を保ち、またその活動を盛り立てたりしてきたのでしょう。

 その後、お客の一人として来ていた Sketch さんに昨日の忘れ物を渡しました(Sketch さんも意外に忘れ物が多い?)。控え室では、短い時間ながら、私もつたない英語力を鼓舞しながらステファンといろいろお話ししようとしました。でも、私も想像以上に興奮していたらしく、何を話したのかあんまり覚えていません。「新しいアルバムを是非作って下さい」とお伝えしたのは確かですけど。

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 そして本番の時間。もちろん大入り満員。
 私はカクカクになるくらい緊張していましたが、ギターを持ったらもう腹をくくり、「パイナップル・ラグ」、「ウォータールー・ガールズ」、「ウエスト・コースト・ブルース」の三曲を演奏。最後の曲では自分でもわからない世界にいってしまいましたが(この曲は演奏するたびに構成が変わる...)、大会場で満員の観衆なんて滅多に味わえない舞台をいただき、心から楽しんで演奏できました。こんな素晴らしい機会をくれた打田さんには、本当に感謝の言葉もありません。

 終わったら、すぐ私も観客の一人に。混雑していて、見る場所を確保するのも大変でしたが、打田さんの新曲・新ネタを含む楽しいステージに酔いしれました。ステファンとの出会いから結局馬場さんのプロレス名勝負にまで話が及び、また久しぶりの新作CD『ワン・カインド・フェイヴァー』の新曲「追想」など、音楽的に新鮮な驚きもありました。しかしすぐ「あのかっこいいジャケット写真、実は住宅展示場で撮ったんですよ」などと、全然言わなくてもいいオチを付けてくれたり。
 打田さんも、ステファンに負けず劣らず、大人物の風格です。

 さて、小休止の後、いよいよステファン・グロスマンのライブ!
 久しぶりのライブという事でしたが、まさに歴戦の強者で、全くブランクを感じさせない堂々たるエンターテナーぶり。会場はステファンの音楽に酔いしれ、私も初めて彼のアルバムを買ったときのような初々しい気持ち、ドキドキするような懐かしい気持ちで、心から彼のステージを楽しみました。
 ああ、そうだ、この曲もあった、おっ、いよいよストラッティン・ラグだ(実は今でもソラで弾けます)。おかげさまで練習しましたよ、何回も。この曲も、あの曲も、そうだ、教則ビデオでもやっていたなあ。あれはどのアルバムに入っていたっけ? 実はレコードでアルバムをほとんど持ってるんだよなあ。
 そんなことを考えながら、楽しい時間はあっと言う間に過ぎていきます。

 続いては、ステファンと打田さんの師弟対決、いえ、デュオ演奏。リハでも感じましたが、実に自然に、まるで何十年も一緒に演奏していたかのような(心の中ではまさにその通りだったと思います)、素晴らしいギターデュオでした。時間も国境も超えた音楽文化の伝承。これはその理想的な形ではないでしょうか。

 そして、これでは終わりませんでした。何と光栄にも私もこのブルース・セッションに数曲混ぜてもらえることになったのです。後で話を聞くと、京都と名古屋ではROOTSさん(天満さんと平野さんのギター・ヴァイオリン・ユニット)もセッションに参加していたとのことで、これは私たちのようなミュージシャンにとってかけがえのない貴重な体験になったと思います。
 何度も私にソロを回していただいて、恐縮というか、必死に、しかしテキトーに(?)楽しませていただきました。

 終演後は、近くの居酒屋で打ち上げ。奥さんのジョーさんも気さくな方でしたし、TABスタッフを含め、みなさんが気持ちよい酒を飲んでいました。一方私は、飲んでいても、「これは本当に夢ではないのか?」とこの期に及んで半信半疑な気持ち。無理もないです、だって、今こうして「ライブ日記」を書いていても、夢の国をさまよっていたように思えてしまうのですから。

 こうして、私の人生の中でも忘れることの出来ない、記念すべき日が幕を閉じたのでした。
 打田さんご夫婦、ナベタさんはじめスタッフの皆さん、また関係者の皆さんにも、心から感謝したいと思います。

 

5.5月1日(月) 小樽へ帰還 NEW!!

 昨日の打ち上げで遅くなり、日比谷線の終電を逃してしまいましたが、JRの終電で何とか宿まで帰り、サッとシャワーを浴びて就寝。朝は、飛行機の関係で早起きしなければいけなかったため、ちょっとせわしなくなりました。

 いつもはフェリーで気合いを入れて帰らなければいけないので、飛行機で帰るのは私にとって楽ちん過ぎて、これまた現実感がありません。ただ、北海道の天候はすぐれず、この日の新千歳空港の気温は8度とのこと。東京と15度も気温差があり、「今日戻ってすぐ小樽運河にギター演奏に出るのはやめよう」と決めました。風邪をひいてもつまらないし、何よりも、昨日の夢心地と充実感に、もう少しだけ浸っていたかったのです。
 翌日(5/2)は雨のため休み。その翌日(5/3)からは、今までのゴールデンウィークのブランクを一気に埋めるべく、死ぬ気でギター演奏。1日7時間以上ギターを弾いたかいがあり、何とか例年程度の稼ぎを残すことができました。

 これからも自分に出来ることを懸命にがんばっていけば、今回のように現実が夢を超える。
 取るに足りない自分の小さな夢を、もっと大きな夢が追い越すことになる。
 そう信じつつ、これからも演奏活動を続けていきたいと思います。

(完)

 

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