19.ジャンボ(田原楽器) Jumbo (made by Tahara Gakki)

J−35(1969年製、#35912)(現在無し) NEW!!

表面板:スプルース単板
側板・背面板:ローズウッド合板
指板:エボニー
ブリッジ:ローズウッド
ネック:マホガニー
 
使用アルバム:なし
 
 2008年4月、ブルーベルBW-400を手放したのと入れ替えるような形で、オークションで格安で手に入れたギター。

 今は無きブランドであるジャンボ(田原楽器)は、1970年頃にはすでに当時としては画期的な高級手工ギターを発表していたという、日本のアコースティック・ギターの歴史に残るべきメーカーです。しかし私は、このJ-35を入手するまで、ジャンボ製ではマンドリンしか見たことがなく、実際にギターを弾くのは初めてなのです。国産ギターマニアと自称しておきながら、勉強不足もいいところでした。
 
 いつも参照させていただいているウェブサイト「ギター図鑑」の記述に従って、20フレット目に刻印されているシリアル番号(35912)を解釈すると、1969年12月製造のJ-35となります。
 
 名前の通りの巨大なネックブロックと中途半端なロングサドル、そして普通よりきついアーチ状になっている背面板が特徴的ですが、その他はいたって普通のマーチンコピーモデル。この外見上のオーソドックスさは、かえって当時は珍しかったのかも知れません。指板は、カタログ情報通りエボニーのようですが、後年になると同じ型番でも指板がローズウッドのモデルもあったようです。田原楽器のスタートは1969年とのことで、このモデルは最も初期の形を残しているといえるでしょう。ついでに、糸巻きも、昔の国産ギターでは割とよくある形のオリジナル仕様で、意外にしっかり回せます。

 右の写真にある通り、表面板が中央の合わせ目で長く割れていて(裏板補修済みながら段差あり)、ブリッジも低く削られていました。トラスロッドも回らないようで、正直言って状態はよくないです。

 しかし、弦をきちんと張り替えて音を出すと、その豊かな鳴りは多少のマイナス面を吹き飛ばすほどの確かな存在感を感じました。
 
 私が今まで弾いてきたギターで言えば、マスターのマーチンコピーモデルによく似た音がしています。そのマーチンを思わせるコードのまとまり感、ふくよかな低音とクリアな高音、そして合板では出せないタッチの差をよく取ってくれます。
 
 国産ギター名器の名に恥じない、良いギターを手に入れました。
 
 さて、このギター、見れば見るほど面白い欠点(?)がわかってきます。 まず、指板のボディーへの進入角度がもともときついらしく、トップが少しでも盛り上がったら、弦高がすぐ高くなってしまうような構造になっています。後々のことも考えて、もうちょっと弦高調整のための余裕が欲しいところでした。

 そして、単板の表面板は結構薄いように感じます。サウンドホール周辺で計ると3ミリもありませんから、割れやふくらみには弱いようです。良い音と引き換えに、耐久性が犠牲になっている感があります。 フレットも今のギターとはちょっと違うようです。太いフレットは私好みですが、指板の端の方で早めに切れていて、特に一弦側が微妙に短いのです。これだと、弦落ちに悩まされるリードプレイヤーもいるかも知れません(ネットでそういう評価の書き込みを見たことがあります)。 慣れれば問題になる局面は少ないと思いますが、これからジャンボを中古で入手しようとする人は注意すべき点かも知れません。

 でも、繰り返しになってしまいますが、本当に音は良いのです。 これが全てに優先します。当面は、ピックアップを付けずに家での練習に使っていますが、このギターの響きは大好きなので、録音や演奏の機会があればどんどん使っていきたいと思います。
 


追記(2008-6-30):いつもお世話になっている札幌の楽天舎に、勇気を出して大きなリペアをしてもらいました。各所を調整してもらいましたが、一番大きなのはフレットの全交換でした。指板も削り、20フレット目に刻印されているシリアル番号がキレイさっぱり無くなってしまいましたが(笑)、おかげで弦高調整もバッチリ、1弦や6弦の弦落ちもなくなり、特定の音に共振していたトラスロッドも補修され、演奏は快適そのもの。まさに何の不満もなくなりました。
 さすがにここまでの大きなリペアは、入手料金よりも高くつきましたが、中古ギターの価値をきちんと見出して実用化することに、私は一つのロマンを感じます。というか、快適に弾けないギターなら、持っていても仕方ないのです。

 近い将来、ピックアップを付けて外でも弾きたいと思います。
 
追記(2013-2-17) 
ボロボロの状態から大修理してでも使っていた、愛着のある名器でしたが、2012年11月、友人にお譲りしました。
これで私のジャンボのギターはなくなってしまいましたが、このような日本の名器は大好きなので、機会があればもっと知らしめていきたいと思っています。

 

J−12−40(1972年製、#40207)(現在無し)

表面板:スプルース単板
側板・背面板:ローズウッド合板
指板:エボニー
ブリッジ:ローズウッド
ネック:マホガニー
 
使用アルバム:なし
 
 2008年7月、やはりオークションで格安で手に入れたギター。往年の名器・ジャンボの実力は、先のJ-35ですでに承知していたので、珍しいジャンボの12弦ギターとなれば、もはや問答無用。即決価格で一発落札してしまいました。
 到着して、まず状態のよさにビックリ。12弦ギターの中古は、状態の悪さをある程度覚悟して買うのが普通なので、今回はむしろ面食らったくらいです。このヘッドの付き板はハカランダではないかと思います。音には全く関係ないですが、なんか得した気分です。

 そして弾くこと数十秒、購入が大正解だったことを確信しました。
 サイドバックはローズウッド合板(カタログ資料で見かけた「単板」ではありませんでした)。シダー単板でウェットな響きのヤマキF-250に比べると明るく、ジャンボのサウンドカラーである乾いたレスポンスのいい響きが、12弦にもよくマッチしています。オール単板のヤマハLL-25-12に決して負けない、外鳴りのヴィンテージ・ギターです。
 私の12弦ギターを総括すると、ヤマキの深く暖かい残響、ヤマハのパワフルな安定感、そしてジャンボの乾いた鳴り。三者三様です。
 
 

 ヤマキ12弦との比較では、ナット側は同じですが、サドル側の弦幅が5ミリ広いことがわかりました。おそらくこっちの方がマーチンの仕様に忠実なのだろうと思います。狭いヤマキで弾き慣れていた右手には、少々慣れが必要かもしれません。
 
 ヘッド裏にはカワセ楽器取扱い品だったことを示すシールがあり、そのせいか弦高がとても低く、ビビリやブリッジ・サドルの不具合も皆無。J-35 では短いフレットに苦労しましたが、このギターのフレットには問題なし。表面板やブリッジに貼りマイクの跡があるものの、楽器としての状態は完璧です。

 最近(2008年7月頃から)自分なりに試しているチューナーマイクを2つ使ってミックスするピックアップシステムにより、ピックアップのないギターもすぐに外で弾く事ができるようになりました。そこでさっそく、このギターも小樽運河で弾いています。

 12弦ギターのきらびやかな響きは、ストリート演奏では存在感があり、好感触を持ちました。一日中ギターを弾く私の場合、12弦ギターのテンションのきつさは握力的に問題があるかと思ったのですが、実際このギターは弾きやすく、それほどきついとも感じません。強いて言えば指板の狭いヤマキの方が体力の消耗を若干防げるという程度で、ジャンボの弦高の低さはかなりありがたいです。

 これで12弦ギターの陣容は、私にとって理想的になりました。
 これからもどんどん弾いていきたいです。
 
追記(2012-4-20) NEW!! と、意欲はあったのですが...(笑)。12弦ギターで新アルバムを作るという構想が、私の怠慢のせいで棚上げになり、それほど弾く機会がないギターの一つになってしまいました。後の結婚生活の準備でギターの本数を減らす必要があったため、2011年春に他の方にお譲りしました。
 

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