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Stars and Stripes Vol.1 / The Beach Boys(River North Nashville Records 51416 1205 2、1996年)

 私のビーチボーイズ好きは、既に未完成アルバム「スマイル」を紹介した時点でマニアックなモノかも知れません。ここで、そんなマニアックさとは対極の、とても楽しいCDをご紹介します(いや、ある意味これもマニアックか?)。
 これは、一種の企画盤CDで、ビーチボーイズの過去のヒット曲を他の有名アーティストたちが歌う、いわゆるトリビュート・アルバムです。それだけならよくあることなのですが、何と全曲にビーチボーイズ本人たちがコーラスで参加しているという驚くべきもの。つまり、これはトリビュートであると同時にビーチボーイズのオリジナルアルバムでもあるのです。私の知る限り、こんなアルバムは他にありません(XTCが自分たちのトリビュート盤に偽名で参加したという例はありましたが)。

 1曲毎に変わる参加アーティストはカントリー系のミュージシャンのようで、ウィリー・ネルソンを除いては日本であまり馴染みのない人が多いのですが、それぞれの歌いっぷりはとても気持ちよく、ビーチボーイズとの共演を心底楽しんでいるのがよくわかります。アレンジは各曲発表当時にかなり忠実なのに、最新の録音が素晴らしいのです。お祭り的な雰囲気と相まって、みんな力の入った演奏をしています。
 特に「アイ・ゲット・アラウンド」「ファン、ファン、ファン」などのロックン・ロール・ビートは、ベスト盤を聞くよりも迫力があって、思わずシビれてしまいます。長年のファン、おなじみのヒット曲を楽しみたいサーファーたちは大満足でしょう。

 また、ポップ・マニアックなブライアン・ファンも、彼を含めたコーラス隊の見事なハーモニーに、唸ってしまうのではないでしょうか。最終曲の「キャロライン、ノー」を歌う Timothy B. Schmit の歌声は、若い頃のブライアンにそっくりで、ビックリしてしまいました。
 陽気な曲が多い中で、異色の出来としては、やはりウィリー・ネルソンらしい「The Warmth of the Sun」が挙げられます。彼のしっとりとした歌が、行き場のない余韻とはかなさを演出しています。正直言ってこの曲(ブライアンとマイク・ラブの共作)は初めて聴いたのですが、とても優れたバラードでした。
 このアルバムは、今は亡きカールが参加した、おそらく最後のアルバムだろうと思います。そう考えると、何だか偉大なロック・グループの栄光の記念碑のようで、感慨深いものがあります。

 多くの人が楽しめる、この懐の深さ。ビーチボーイズがもはやただの一ロックバンドではなく、アメリカの文化現象の一つなのだということを、私たちは改めて認識できるでしょう。個人的には、ビーチボーイズ全CDの中でも、特にお勧めしたいと思います。

 さて、このCDは輸入盤で買ったのですが、特殊ジャケットの中にCMを兼ねたクーポン券が入っていました
 「Nutritional Energy Drink(滋養強壮ドリンク?)」の広告!
 チョコレート、バニラ、ストロベリー、チョコレート・モカ!(何かみんな甘ったるそう!
 何と4種類の味のパックが、このクーポン券で1ドル割引だ!
 ...あらら。
 何か、このCDには、あらゆる意味でアメリカを強く感じてしまいました。

 

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