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★ 押尾コータロー(YURAI Works YRI-1001、1999年)

 再びギターミュージックのCDをご紹介します。ギターファンならすでにご存じの人が多いと思いますが、私と同じ日本のアコースティック・ギタリストの押尾コータローさんです。以前から、私の友人である一(はじめ)君や前澤君(二人とも「過去の共演者ご紹介」に出ています)から、お名前は伝え聞いておりました。
 押尾さんは、私が参加していた昔のギター同好会「ギタリスツ」の初期に在籍されていたことがあり、当時まだ北海道の大学生だった私は「内地(本州のこと)はいろんな人がいるなあ」と思ったりしていました。こういうつながりがあったにも関わらず、私は不運にも未だ一度もお会いしたことがありません。

 実は1年前、私がTABギタースクールの録音ブースでCD『クライマックス・ラグ』の録音をしていた頃、前澤君が遊びに来て、押尾さんのこのデビューCDを聞かせてくれたのです。「あれ、浜田くん、まだ押尾くんに会ったことなかったっけ?」と言われながらそのCDの音を聞くと、驚異的な音のコントロール、卓越したギター音楽の表現力に、私は一発で惚れ込んでしまいました。と同時に、同じ日本のギタープレイヤーとして恐怖と嫉妬心すら感じたのです。CDからだけでもこれほどの衝撃が伝わるのですから、実際にライブを見に行った方の驚きが容易に想像できます。

 「光のつばさ」「彩音」「Dancin' コオロギ」などの自由なオリジナル曲から、「禁じられた遊び」「戦場のメリークリスマス」といった親しみやすい名曲まで、ソロ・ギターの独特な世界が楽しめます。タッピングなどの特殊奏法も織り交ぜながら、自然な音使いの中に取り込んでいるのが素晴らしいと思います。
 個人的に特に好きなのは「第三の男」の原曲風アレンジと、ラベルの名曲「ボレロ」のアレンジです。前者は私もアレンジしている映画音楽のテーマですが、まさかソロギターでここまで原曲のツィター風にできるとは思いもよりませんでした。とても楽しい演奏です。後者は、まるでもともとギターのために書かれた曲のように思えてしまうくらいで、さざ波のような波動が徐々に上り詰めていく様が圧巻です。オリジナルでは、「Dancin' コオロギ」のファンキーなグルーブ感が好きです。

 押尾さんもそうですが、私は、AKIさんの『Jimi's Spirit of Acoustic』、小川倫生さんの『太陽と羅針盤』など、現代日本のアコースティック・ギター・ソロの新しい潮流が近年次々と生まれていることを、一音楽ファン、一ギターファンとしてとてもうれしく思います。岡崎倫典さんや小松原俊さん、打田十紀夫さんたちの登場以前、日本でこの分野を支えていたのは、中川イサトさんや小林たけしさんくらいだったことを考えると、現代の日本のアコースティック・ギター界の活況にわくわくしてしまうのです。願わくば私も、潮流とまでは言わなくとも、小さな渦くらいは作ってみたいと思います。
 あまり知られていないかもしれませんが、アコースティック・ギター・ソロの潮流は、アジアの同胞・台湾にも押し寄せています。台湾の方から、あちらのギタリストたちのオムニバスCDなどを買ってみると、これがまたすごい。こちらは、今度ご紹介したいと思います。

 ちょっと話が横道にそれました。とにかくこのCDは全ての人におすすめです。
 本当に機会があれば、ぜひお会いしたい方です。

 

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