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【そ】

そうしょくおん【装飾音】[名詞]
 本来のメロディーに付加する、飾りとしての音。広義にはあくまでメロディーの一部であることを主張するのだが、全体的に見ればやはり装飾なので、場合によっては無くても構わない音と言える。しかし、例えばある種のギター曲には、ほとんど装飾音だけで成り立っている曲もある。アレンジにおいては、比較的簡単なメロディーにあやを付けるために多用されたりする。あまり飾りを付けすぎると下品に感じることがあるのは、人間の顔と全く同じである。

そうば【相場】[名詞]
 @競争によって刻々と変わっていく市場価格を指す。例:「為替相場」「株式相場」。
 A相場(@)より転じて、一般に適切と思われる価格を表す。「思われる」という表現は実に巧みで、価格を動かしたのが誰の思惑かがはっきりしている場合でも、こういう受動態を使って主語を曖昧にする。「相場」という詩的な経済用語は、自由競争によって定まる財の価値は全て相対的なものだという達観した印象を与えるが、多くの場合は、実に少数の人が勝手な思いこみで価格を動かしている。話の途中でいきなり高騰したり暴落したりするギャラの相場を、一体どこのどいつが決めているのかは、音楽業界のミステリーの一つ。

そだてる【育てる】[動詞]
 未熟なものを大切に養って成長させる。はぐくむ。例:「子供を育てる」「この技術を大切に育ててきました」。さて、「文化」を育てるものが何であるかについては、いろいろな意見がある。経済学では、何と言っても社会資本の充実が前提に挙げられる。比較文化論では、他の文化との交流の仕方が重要な要素の一つとして挙げられる。社会的地位の向上を目指す企業や自治体のバランス感覚、文化振興を目指す起業家精神も重要だ。ともかく、いろいろな要素が商売としての文化を運営し「育てて」いく。ところで、アーティスト側は、自分たちこそ文化の伝道者かつ市場の開拓者だと考えている。「本当の音楽を聴かせることで、流行の曲しか知らない無知なヤツラの耳を育ててやっているんだ」。一方、ひとくせありそうな口の悪い客達は、オレたちこそアーティストを育ててやっているんだと主張する。「金を出すんだから口も出すぞ、つまらんライブが終わった後の説教こそオレたちの楽しみさ」。これも「互いを育て合う世界」というヤツなのだろうが、それにしては何やらギスギスしている。アイヌ語のウレパモシとは大違いだ。ヘイ、君たち、はぐくみ合ってるかい?

そっけん【即見】[名詞]
 音楽用語では、楽譜を見ながらすぐにその通り演奏すること。「即読」ともいう。驚嘆すべき超能力。即見ができないと、たいていの音楽の仕事には不利だし、音楽の先輩や仲間からバカにされることもある。実は私はこれができないのだが、例えば本を読まなくても言葉を知っていたりするので、あんまり気にしない。勉強が苦手な人はものを考えてはいけない、というわけでもあるまい。なお、楽譜ではなくTAB譜なら即見できるというちょっと変な人もいる。

そるふぇーじゅ【ソルフェージュ】[名詞]
 フランス語の「solfege」。何かずいぶん前から耳にしていた言葉だが、改めて『大辞林 第二版』を調べると「音楽の基礎教育のうち視唱力・読譜力・聴音能力などを養う教育課程の名称」とある。みんな知ってた? 私は恥ずかしながら、今初めて知った。いろんな人にとりあえず謝っておく。道理で即見ができないわけだよ。

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