
2025年アメリカ日記(2026.1.7まとめ)
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- (写真:11/23のFinaleイベントにて、司会のRichard
Dowlingさんと、出番を待つ私。)
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★11/19
アメリカへ。
突然ですが、私はこの日アメリカに入国しました。この週末に行われるWest
Coast Ragtime Festivalに参加させていただくためです。
オンラインでの参加は2021年にありましたが、アメリカのラグタイムフェスに実際に参加するのは、2023年のScott
Joplin Ragtime Festivalに続いて2回目です。
Warren JenningsさんとTomokoさんのおかげで、今回の貴重な機会をいただき、身が引き締まる思いです。
ただいまシアトルのタコマ空港でサクラメントへの乗り継ぎを待っているところです。海外旅行は滅多にある機会ではないので、いろいろ新鮮。前回の珍道中も思い出しつつ楽しんでいます。
成田からタコマに着いた時点で一旦全ての荷物を受け取り、乗り継ぎの手続きをしないといけなかったのですが、うっかり全部の荷物を持ってそのまま搭乗口に行ってしまって右往左往。人に聞きまくって、Baggage
Claimと書いているところから無事チェックインをやり直して、荷物を預けることができました。おかげで、かなり間の空いていた乗り継ぎ時間がちっとも飽きませんでした。
それにしても、いやはや、物価が高い…
スナック菓子が10ドル。水のペットボトルが4ドル近くでした。悩んだ末、買いませんでした。
さっき、空港のロビーでストリート演奏してるミュージシャンに2ドル投げ銭していたのですが、なんと水も買えない金額だったのかと反省しました(^◇^;)!
いよいよこれからサクラメント行きの飛行機に乗って、WarrenさんTomokoさんにお会いします。
そして明日は、私が最も敬愛する作曲家、David
Thomas Robertsさんにお会いする予定です。我が人生第3くらいのピークを迎えつつあります。
とにかく、頑張ります!

- ★11/19
Jenningsさんのお宅にて(1)
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- 11/18(日本時間では11/19でしたが、ここから現地時間で)の続き。タコマ空港からサクラメント空港までは2時間弱の距離。もはや空港でも機内でも日本語のサポートは得られませんが、2年前を思い出しながら、ドキドキ半分で空の旅を楽しみました。
空港のBaggage Claim(手荷物受取所)に着くと、荷物より先にWarren
& Tomoko Jenningsさんを発見しました。今回私をアメリカに招待してくれた大恩人。長年ラグタイム音楽を愛し、サポートしてくれている方々なのです。2年前、セダリアのScott
Joplin Ragtime Festivalで初めて実際にお会いしました。
しばし再会を喜び、荷物を回収したのですが、ギターがなかなか出てきません。今回は、機内持ち込みではなく(規定の大きさを少し超過していたので仕方なく)預け荷物にしたのが仇になったかと焦りましたが、サイズを超えた大きい荷物が別口で置かれている場所にギターがあって助かりました。
その後、空港から車で数十分の距離にあるWarrenさんのお宅にお邪魔しました。夕食から寝室までいろいろお世話していただき、心から感謝です。この日はぐっすり寝てしまいました。
翌日(11/19)は、地元サクラメント出身のミュージシャン、Bub
& Petra Sullivanさんが訪問してくれて、いろいろ労っていただきました。もちろん彼らもラグタイム音楽家で、フェスでの演奏が楽しみです。
PetraさんがWarrenさんのピアノで演奏してくれたWim
Statius Muller作のAntillean Danceは実に素晴らしい曲でした。スタティウス・ミューラーは、アンティル諸島キュラソー出身の作曲家で、カリビアン風の素晴らしいピアノ音楽を作っていました(2019年没)。Warrenさんから教わって、私もすっかり好きになってしまいました。

そして、私が最も敬愛する作曲家David
Thomas Robertsさんもいらっしゃいました。私は2006年にDavidさんの日本ツアーを企画して、全国6カ所でコンサートを開きました。それ以来19年ぶりにお会いできて、我が幸せここに極まれり。思わず泣いてしまいました。
話すことがいっぱいあり、また調子に乗って私もギターを弾きまくったりして、近況から昔好きだった音楽の話まで、長い時間語り合いました。
去り際にDavidさんが演奏してくれた「Kiyomi」は本当に名曲。また涙が溢れてしまう私なのでした。
Davidさんとの再会は、この旅でも本当に特別な事でした。またいつかお会いできますように。
さあ、ここからは気持ちも新たに、私も自分の音楽を頑張り、フェスに向けて練習していきたいと思います!
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- ★11/20
Jenningsさんのお宅にて(2)
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感動冷めやらぬ中、前の日はよく眠れたのに、この日の夜はあまり寝付けず、改めて時差ボケの不思議さを感じました。
この日は至って平穏無事の1日。朝ごはんをいただいたあと二度寝させていただき、起きたらとにかくギターの練習。
クラシック・ラグは転調も含んでいて、覚えなければいけない細かい指遣いがいっぱいあります。これを涼しい顔をして弾くには、しつこくても繰り返し練習する以外にありません。
WarrenさんTomokoさんの優しさのおかげで、家でたっぷり練習の時間が取れました。
遅めのお昼・夕食として連れて行っていただいた寿司レストランは、こう言っては失礼かもしれませんが、とても本格的で美味しかったです。アメリカでお寿司といえば、我々日本人はアメリカナイズされたスゴいものを想像しがちですが、ここのお寿司はお味噌汁も含めて日本の味に近く、大満足でした!
Warrenさんのお宅に戻って、何とスタインウェイの自動演奏ピアノ「Duo
Art」の演奏(Mimi Blaisさんの演奏した「Heliotrope
Bouquet」)も聞かせていただき、気分は一気にラグタイムの世界へ突入したのでした。
さあ、いよいよ明日から始まるWest Coast
Ragtime Festival。興奮と緊張を抑えて、早く眠りにつかなければいけません。
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- ★11/21 West
Coast Ragtime Festival (1)
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この日の朝、WarrenさんとTomokoさんのご自宅を離れ、会場となるRancho
Cordovaのホテル「Marriott」から歩いて3分くらいの距離にある「Holiday
Inn」にチェックインしました。多くのミュージシャンはここに泊まることになっています。全てWarrenさんが事前に手続きしてくれていたのです。
Innと言いながらとてもデラックスなお部屋で、私には分不相応なくらい。いくら感謝してもしきれません。
さあ、いよいよ会場へ。フロントではすでにJared
SzaboくんやFrederick Hodgesさんなど、2年前のセダリアでのフェスでお会いしたみなさんの顔もちらほら見かけ、笑顔でご挨拶。とても心温まる瞬間です。ミュージシャン専用のタグをいただき、売店で販売用のCDを預けているうちに、すぐに開演時間になりました。
フェスは大きなホテルの部屋を借り切って行われていて、大小含めて4つの部屋(California、Rancho
Cordova、Junior、Newport)が会場となります。
私が見た一人一人をご紹介すると、また時間がかかってしまいます。詳しく書きたいのですが今は時間がありません。出会った順にコメントのみ記します。
最初に一番大きな会場(California)で見たのはFrederick
Hodgesさん。2年前にも「アメリカ日記」で感想を書きましたが、彼のアーリージャズのピアノソロにはいつも圧倒されます。余裕綽々でユーモアのセンスも素晴らしい。
その少し後に別会場(Newport、一番小さな部屋)で、いきなり自分の出番がありました。
ここで私は、興奮を抑えつつ大事な曲を弾きました。Warrenさんに1年以上前から委託されていた、Tomokoさんに捧げる曲「One
for Tomoko-san」を、Jenningsさん夫婦の見ている前で演奏したのです。Tomokoさんにサプライズとしてお届けするというWarrenさんの意向で、今までずっと伏せていた曲です。録音したCDRも手渡しすることができて、本当に良かったです。

感慨に浸る間もなく、Newportに次から次へと出てくる素晴らしいピアニストたち。若き才能Jared
Szaboくん、近代ラグからバッハまで芸術的な演奏で魅せるアーティスティックなピアニストWilliam
NcNallyさん、そして自然なタッチでクラシックラグを快活に演奏するJohn
Reed-Torresさん。めくるめくラグタイマーたちの競演でした。次のアーティストも気になりましたが、気づいてみたら午後3時を越えていました。お昼ご飯抜きではいられないので、後ろ髪を引かれる思いで会場を出ました。
ミュージシャン用の軽食ルームは、メイン会場のあるMarriottではなく、Holiday
Innの2階に用意されています。そこで慌ただしくパンなどをいただき、またそそくさとMarriottに戻りました。
売店で気になっていたレコードを探索して、Tom
Sheaの唯一のレコード(訂正:レコード『Little
Wabash Special』のライナーノーツによると、これが3枚目のソロアルバムだったそうです)など、Stomp
Offの名盤・珍盤を片っ端から漁り、自分の経済力も考えて5枚だけ買いました。こういうのもフェスの醍醐味なのです。
次にNewportにて拝見したのがThe
Sullivans。一昨日お会いしたBub
& Perta Sullivanさんたちの心温まるステージを楽しみました。
4会場同時に様々な催しがあるので悩みます。Californiaではこれまた2年前にも会っていた若手の才能あるピアニストTadao
Tomokiyoくん、そしてその後はJuniorにて素晴らしいピアニストRichard
DowlingさんのJoplinセミナーに途中から参加しました。Euphonic
Soundsの特異な構成の分析を実にわかりやすくされていて、感銘を受けました。
次の催しはCaliforniaで行われる「Festival
Sampler」。出演する主な音楽家が一人ずつ紹介がてら演奏していくイベントです。私は時間を誤解していて本来一曲のところを二曲弾いてしまい赤面の至りでしたが、それ以外はつつがなく、綺羅星の如き音楽家たちのショーを楽しみました。
その後はすぐに自分の出番がふた枠ありました。
まずRancho Cordovaでの演奏ですが、ここはダンスフロアにもなっていて、音楽家の演奏に合わせて踊る方達がステキです。私のギターソロにも合わせてくれて、いやーむしろこちらが踊り出したいくらいに嬉しかったです。
そしてこの日最後の出番はやはりNewportにて。さすがにばてたのか、ちょっとミスの多い回でしたが、この回だけ完全生音で演奏できて、良い感覚でした。なお、他の回では、マイクやピックアップで音を出しました。
続いて登場したMax
Libertorくんもラグタイム界の若きホープ。2年前とは違う実にグルーヴィーなノリを楽しみました。
この日最後の鑑賞はJuniorでのJared
Szaboくんの演奏。前の順で演奏していたIsaiah
Burtonくん、そしてMaxくんもウォッシュボードで飛び入りして、若手コンテスト優勝者が3人揃い踏みという素晴らしい光景を楽しみました。
一人の人間が一日に楽しめる音楽に許容量というものがあるのかどうか、とにかく一日中ラグタイムに浸ったのでした。
これでも非常にかいつまんで記した日記なのですが、書くのに2日掛かってしまいました。MarriottではWi-Fiは有料なので、Holiday
Innに戻ってからでないと送信できないのです。これを書いている時点で2日目も終わってしまいました。残りの日記、さらに内容を補填した完全版は、どうやら日本に帰ってから執筆することになりそうです。
いろいろ書きましたが、一言だけ。音楽って、本当に良いものですね!
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- ★11/22 West
Coast Ragtime Festival (2)
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- 楽しみすぎて前の日の夜はご飯を食べそびれてしまい、Petraさんからのお土産を一部失敬していただき、空腹を凌いだのでした。いろんな意味で、人の優しさに生かされました。どうもありがとうございました!
Holiday Innは、前回書いた通り、私のような貧乏ミュージシャンには分不相応なくらいのデラックスなホテルです。なんせ中庭にプールがありますからね!
(追加:後で聞いた話では、だいたいのホテルにプールがあるのだそうです。日本で言えば「大浴場付き」という感じかもしれませんね…)
日本との文化的相違はあちこちで感じます。特に、アメリカでの固定シャワーの使い方をすっかり忘れていて、どうすればシャワーからお湯が出るのか、5分くらい悩んでしまいました。ちなみに、蛇口の上側に飛び出ている栓を引っ張るのが正解(^◇^;)。
朝は、Bub & Petraさんたちや、他のフェス関係者たちとレストランで朝食。ここは全て英語の世界、メニューの選択からしてできるのかどうかドキドキものでしたが、何とか無事に頼めました。
朝食は盛りだくさんで、とても良心的です。さらに、空港に比べたら飲み物の自動販売機のお値段も安めの設定(せいぜい2ドル弱)。旅人には嬉しいことです。(しかし買いませんでしたが...)
日記を書くのに夢中になっていたら時間が過ぎてしまい、朝9:00スタートのところ、20分くらい過ぎてからMarriottに入りました。
最初に入った会場はJunior。前日のFestival
Samplerで、私のギター曲「蘭島」をピアノ二重奏で弾いてくれたMichael
Chisholm & Kevin Guinaさん(感動で泣きそうになりました)、そしてチューバとドラムのRobyn
& Steve Drivonさんの四人が、今年亡くなったChris
Bradshawさん(Jack Bradshawさんの奥さん)の追悼ライブを行なっていました。若いピアニストたちの育成にも励んだという彼女の人柄が偲ばれる、心温まるイベントでした。
その後すぐにNewportに移動して、コルネットなどマルチインスト奏者のT.
J. Mullerさん率いるジャズバンドを鑑賞。ラグタイムといってもピアノソロだけでなく、ブギウギからオールドジャズまで幅広いジャンルを網羅している、フェスならではの楽しみです。膝が揺れ過ぎて壊れるんじゃにかと思うくらいノリました。
次のWill Perkinsさんも見たかったのですが、後ろ髪を引かれつつCaliforniaに向かい、昨日はセミナーで少しだけ拝見したRichard
Dowlingさんを鑑賞。Max Morath亡き後のラグタイム界の牽引役のような存在で、ジョプリン・ラグの魅力を思う存分引き出した演奏が見事でした。
続いては、なんと世界最高のストライド・ピアニスト、Neville
Dickieの演奏!このフェスに参加している全ピアニストの中で、私が最も古くから(会社員時代?)、LPやCDと数えきれないくらい愛聴してきたピアニストです。
御年88歳とは全く信じられない、恐ろしいほどのスピードと音楽的センスやユーモアを両立させた素晴らしい演奏。衰えるどころかバリバリの現役! またも泣きそうになる、いやいやそんな暇もないくらい、終始圧巻のパフォーマンスでした。
思わず終演後のネヴィルさんに、拙い英語で感謝の言葉を伝える私でした。握手してもらった手は、やっぱり大きかったです!
次のRagabondsは、これまた2年前のフェスでも感激した凄腕ピアニストのBrian
Hollandさん率いる四人組バンド(ピアノ、バンジョー、チューバ、パーカッション)。特にGareth
Priceさんのウォッシュボードが超ノリノリで、グイグイ引き込まれました。
あっという間にお昼過ぎ。前日と同じく一旦Holiday
Innに戻って軽食をいただきました。そこでVincent
JohnsonさんとJared DiBartolomeoさんと記念写真。
それからまたMarriottに戻って、Newportで自分の出番。土曜日とあって多くのお客様がいらっしゃり感激。わあ忙しい。しかし、心地よく、だんだんとこの雰囲気に慣れてくる自分がいたのでした。
Newportの次の演奏者は、小気味よく快活なオールドジャズを演奏する曲者バンドFreebadge
SerenadersにMullerさん、Matt
Tolentinoさんなどが加わった混成バンド。明らかにこの小さな部屋では狭い大所帯ですが、それがまた良い感じ。大入り超満員で入場できない人もいるくらい盛り上がりました。
特に、バンジョーのGreg Sabinさんの「理知的な豪快さ」はちょっと真似できない。思うに、追分ラッキーフェスで言えば金一さんに相当するポジションでした(内輪ネタ)。
めちゃくちゃ楽しく盛り上がったあとは、ラグタイム作曲家で演奏家のVincent
Johnsonさんが登場、一転して堅実かつ誠実な演奏を味わいました。実は彼の作品集も私の愛聴盤の一つです。JoplinやLambのラグから自作曲まで、幅広い選曲。16時からの出番がなければ最後まで聴いていたかったです。
次の私の出番は、4つの会場とは別にある「Carmel」ルームで行われる、このフェスの支援者向けのレセプション演奏。軽食やお酒も楽しめるようになっているこの部屋にはなぜかピアノがなく、ピアニスト以外のミュージシャンがBGM演奏をするという趣向でした。
この実に社交的な雰囲気に、果たして田舎者の私は合っているのだろうかと一瞬ためらいましたが、ここまで来たら腹を括って涼しい顔。Mullerさんをはじめ、バンジョーやアコーディオンなど他の楽器の演奏者や歌手の皆さんがオシャレでご機嫌なオールドジャズを聴かせてくれて、私も及ばずながら代わりばんこに演奏させていただくのも楽しかったです。
次にNewportで拝見したのは、もはやお馴染みBubさんPetraさんの夫婦デュオThe
Sullivans。Petraさんの素晴らしいタッチによるラグタイムピアノに、Bubさんのややたどたどしい?マンドリンのコンビがとてもユニークで良い味を出しています。Bubさんの歌もハートフルで良かった。アメリカ音楽の良心を見たような気持ちです。
さらに続いて演奏したのはWillam
McNallyさん。現代ラグタイムから不思議な前衛的ジャズ風ピアノ曲まで、この人の音楽は視野が広く、いつも新しい発見があります。
普通、iPadで楽譜を読む演奏者は、めくる際にBluetoothで接続したフットスイッチを使うことがほとんどですが、この人は紙の楽譜と同じく手でめくるのがリアルタイムでスリリングでした。
見たいアーティストやイベントが目白押しの中、私はどういう心境だったのか、あえてNewportに留まって、次の「Open
Piano」を拝見しました。日本のオープンマイクに相当すると思うのですが、観客の多くは他の会場のライブを楽しんでいるようで、残念ながら演奏者以外のお客様はまばらでした。
演奏者は、ミュージシャンのリストに登録されていないような、いわゆるアマチュアの皆さん。ところがなんと、いきなりノリノリの演奏。I
enjoyed it very much! しかも、次から次へと出てくる皆さんがそれぞれ個性的で楽しい。Trebor
Tichenorさん風のフォークラグっぽい弾き方の人もいれば、Joshua
Rifkinのようにクラシックっぽい人もいます。
ひょっとしたら、このオープンピアノが、この日一番ビックリした事だったかもしれません。ここに集う人たちの多くが、祖父の代からこのような音楽を間近に楽しんできたに違いありません。世代の積み重ねこそが、文化としての音楽の自信や力強さに繋がっていくのだと、改めて感じ入りました。
その後、食事のため一旦Holiday
Innに戻り、再びNewportへ。自分の出番さえなければ他会場のライブを見たいところでしたが、またも楽しく演奏させてもらいました。
一番小さい部屋のNewportにいる時間が長くなっています。次の演奏者は、ちょっとニヒルな感じのNick
Arteagaさん。オリジナル曲中心で興味深い演奏。まだタイトルも決まっていないという新曲がラテンぽくって素敵でした。
さらに次のピアニストはJared
DiBartolomeoさん。ピアノロールを研究しているという学求肌の音楽家で、マニアックな曲に引き込まれました。
気づいてみたら、もう夜の10:30。またしても人間の限界を超えるくらいまで楽しみましたが、さらにCaliforniaにすっ飛び、Brian
HollandさんとCarl Sonny Leylandさんのご機嫌な演奏でトドメを指して、大満足でHoliday
Innに戻る私なのでした。
いよいよ次の日が最終日。まさに「Time
flies(光陰矢の如し)」、しかし「beyond
description(筆舌に尽くしがたい)」な体験になっています。
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★11/23 West Coast
Ragtime Festival (3)
この日は最終日ということで、少しでも長く楽しみたいと思い、早めに起床して一人でレストランの朝食を頼みました。慣れというのは恐ろしいもので、英語ペラペラ?とはいかないものの、要領さえわかれば、ほんの簡単なことはなんとか伝えられるような気がしてきました。
Holiday Innに泊まった二日間、とても快適でしたがここでチェックアウト。キャスターバッグと前々日に購入したLPの袋をフロントに預けて、名残惜しくも立ち去りました。ただし、お昼の練習や軽食のために、2階のVenezian
Roomだけはミュージシャンに解放されていたので、またお昼には一度戻ってくる予定です。
そう言えば、Marriottの会場のNewportやCaliforniaなどもそうですが、部屋に名前をつけるのって、なかなか風流ですね!
そそくさと本会場のMarriottに向かい、まず最初はCaliforniaの隣にある売店に行ってみると、なんとお預けしていたCDが全て売れてしまったということがわかってビックリ。Warrenさんか誰かが前日そんな話をしていたので本当かなと思っていたのですが、まさか本当でした。
日本から来た珍しいギタリストで、おまけに円安のために他の皆さんの物より安い売価(15ドル/枚)だったのもあったのでしょう。ちなみに、本来の日本での私のCDの定価は2500円で、仮に1ドル150円とすれば約16ドルです。
たまたまいらっしゃったRichard Dowlingさんにもお祝いの言葉をいただき、恐縮しつつ、嬉しくて夢のようでした。
さて、Newportで昨日の続きのようにOpen Pianoを鑑賞していると、最後の枠(15分)で誰も希望者がいなくなり、それではと私も急遽ギター演奏しました。なんか「Open
Guitar」?になっちゃいましたが、いい腕試しになりました。
続いてはパフォーマーの登場で、Jack
Bradshawさん。奥さんの追悼ライブを前日に拝見していました。他の作曲家の曲もありましたが、オリジナルのラグがとてもメロディアスで、いわば詩的な優しい音楽。もっともっと聴いていたかったです。
続くIsaiah Burtonくんは、2024年のRagtime
Kid(セダリアのJoplin Festivalで行われている若手ピアノコンテストの優勝者)。まさに若い力を存分に発揮した、おじさんたちもビックリの凄腕ピアニストです。
ああしかし、申し訳なくも途中で失礼して、Juniorへ。いや、CaliforniaでのRichard
Dowlingさんの素晴らしいに違いないライブも見たいし、ああ体が二つ欲しい。結局、泣く泣くもう少しじっくり見たかったWill
Perkinsさんを選んでしまったのでした。
ここでは、Willさんが「スターク特集」で、いろいろ語りつつ演奏するという企画でした。ラグタイム時代の最も有力な出版社だったスターク出版の興味深いトピックや宣伝文句のユニークさなどを紹介し、実際の曲を鑑賞するという粋なアイデア。この時代の大袈裟すぎる宣伝文句は、ちょっと研究のしがいがあるテーマと言えるでしょう。
私はWillさんのピアノの弾き方も好きなのです。
続くMax Libertorくんも若手凄腕ピアニスト。日記(1)に書いた通り、目を見張るプレイとエンターテナー性を見せてくれています。しかし食事と練習の時間に追われていた私は、これまた失礼して、一度Holiday
Innに戻りました。
Venezian Roomでの昼食もこれで最後。お腹を満たして練習もできてくつろげる、ありがたい空間でした。全て支援者やボランティアの方たちのおかげで、心からお礼申し上げます。
ここでJohn Reed-Torresさんと少しだけお話しできたのも嬉しかったです。とても気さくな方です。自分の出番や他のライブが重なって、彼の演奏をもっと見たかったのが心残りでした。
そう言えば、このフェスの責任者、Virginia
Tichenorさんは、伝説的名ピアニストTreborさんの娘で、自らもソロやラグタイムバンドを率いて演奏しています。Virginiaさんの演奏ももっと見たかった!
Virginiaさんが時間をかけて考えた各会場のスケジュールは緻密で、よく見ると、きちんとチェックすればなるべく誰も見逃すことのないように算段されています。ミュージシャンはただ良い演奏をすればいいのですし、観る方もただ楽しめばいいのですが、彼女の裏方としてイベントをまとめる労力についても大いに賞賛されるべきだと思いました。
さて、再びMarriottに戻って来て、JuniorでMaxくんの演奏の最後を楽しんだあと、再びIsaiah
Burtonくんの演奏。ラグタイム界の未来を背負って立つ、見事な演奏です。若手ラグタイマーからのすごい刺激は、今回の旅でも印象的なポイントでした。
そして次は私の番。このフェスで最後の自分の枠で演奏しました。一番最後の曲は、やはり思い出深いDavid
Thomas Robertsさんの名曲「Roberto Clemente」で、自分で弾きながら感慨無量でした。
Davidさんの曲は、他にも何人かのピアニスト(思い出す限りではWill
PerkinsさんやBill McNallyさんなど)演奏していました。
特に、McNallyさんの演奏したCamilleは、素晴らしい選曲センスと演奏で、また泣きそうになりました。
こうして、世代を超えて人から人に受け継がれていく芸術の美しさ。私もその音楽家たちの一人になれれば良いと思って、今まで活動してきました。
私の次にJuniorで演奏したMcNallyさんが、「僕の地位なんてもう若いピアニストたちに取って代わられるよ!」などと笑いながら紹介してくれたのは、まだ11歳の男の子(名前は失念してしまいました)。ところが、この子の自作自演したと思われるラグ演奏がメロディアスでとっても良かったのです。全く、どうなってるのでしょうか!
そして、そんな後進の指導に力を惜しまないMcNallyさんの人柄も垣間見えて、それも心温まる瞬間でした。
体が二つ、いや三つ欲しいところ。この後はCaliforniaへ急行し、Frederick
Hodgesさんの演奏を堪能しました。余裕しゃくしゃくの演奏も、ウィットを忘れない優雅な振る舞いも、まさに英国紳士といったところ。あれあれ、プロフィールを調べてみたら、生粋のカリフォルニア人でした!ともかく、もっと見たかった!
NewportのThe Sullivansをはじめ、他の3会場も見たかったのですが、ここはCaliforniaに留まって、Neville
Dickie & Carl Sonny Leylandさんたちの連弾をやっと堪能できました(with
Eggers & Bakerさんたちのベース・リズム隊)。
ブギウギ風スタイルを得意とするCarlさんですが、その実力はNevilleさんも舌を巻くほどで、二人の鬼のような超絶即興プレイが最高でした。鬼といっても、本当に遊んでいるみたいに弾いていて、しかもメチャクチャにならずに相手とのやりとりを楽しむ余裕が感じられます。多くの現代ジャズが失ってしまったシンプルで陽気なグルーヴ感と、思わず人が笑顔になってしまう高揚感が、彼らのオールドジャズには生きているのです。
終演後は、まるで瞬間移動のようにNewportに飛んでChisholm
& Guniaさんの連弾を見て、さらにCaliforniaに戻って来てDowlingさんとHodgesさんのクラシック的なエンディングを見て、パフォーマーたちの全てのライブをこれで見納めたのでした。
最後、Californiaで行われたのは、フェスの最後を飾る「Finale」。出演者の代表たちがお別れの挨拶がわりに一曲ずつ披露するオムニバス・ステージです。
トップバッターの私は、今更ながらMaple
Leaf Ragをギターで演奏。29年間、小樽運河でのストリート演奏で、この曲を弾かない日はほとんどありませんでした。
その後も、司会進行のRichard Dowlingさんを含む、ラグタイムの綺羅星たちが、次々と圧倒的に華麗な演奏で私たちを楽しませてくれました。最後のNeville
& Leylandさんたちの演奏には、あのMax
Libertorくんのトランペット演奏まで加わって、これがまた驚くほどピッタリとハマっていました。
こんな素晴らしい音楽家たちと一緒に競演できた光栄は、2年前のセダリアと同じく、まさに一生の宝物でした。

終演後はなかなか立ち去り難し。皆さんもそう感じていたのでしょう。この機会に語り合い交流し合うミュージシャンたち。私も出会う皆さんたちから口々にねぎらいの言葉をかけていただき、恐縮しつつ嬉しかったです。
私にもっと英語の語彙があったら、皆さんの演奏がいかにすごかったか、いかに私が感動したかをもう少しきちんと伝えられたのでしょう。せめて、この日記でそれを覚えている範囲で記していけたらと思ってここまで書いて来ました。

★11/23〜24〜25
日本への帰還
- 11/23の続き:
三日間のフェスも、終わってしまえばあっという間。Rancho
Cordovaに用意されたお食事やお飲み物。最後のアフターパーティーで皆さんと談笑して、素晴らしい音楽家たちとの別れを惜しんだのでした。
Warren & Tomoko Jenningsさんの自宅に戻り、ビールで乾杯して早めに就寝。私の帰りの飛行機は、翌日の朝8時にサクラメント空港から出発します。自宅から空港までは車で20数分の距離。セキュリティチェックの時間などを考えても、余裕を見て5時には起きないといけません。
メチャクチャ早起きを強いてしまい恐縮でしたが、Jenningsさんたちの優しさに救われました。ちなみに2年前の帰還時は、前の日にセントルイス空港に入って夜を明かしましたので、あのぐっすり寝られない苦労が免除されて大変助かりました。
11/24:
サクラメント空港まで車で送っていただき、お二人とお別れをしました。楽しかった一週間。私がこんな素晴らしい旅ができたのは、Jenningsさんご夫婦のおかげです。
2年前のセダリアでのフェスが、我が人生最後のアメリカ体験だと思っていたのに、再びラグタイムの本場アメリカのフェスに参加できた光栄と、Jenningsさんご夫婦をはじめ、いろんな方々から良くしていただいた暖かい気持ちは、いつまでも忘れません。
飛行機の会社は、来た時と同じく、サクラメントからタコマまではアラスカ航空、タコマから成田まではハワイアン航空。いわゆるコードシェア便で、乗り継ぎ便のため荷物は出し入れしなくても良いのです。
ハワイアン航空の尾翼はハワイの女性の顔。一方、アラスカ航空の飛行機の尾翼は、どういうわけかおじさん顔なのが面白いです。複数機体が並んでいると妙な気持ちになってきます。
前の日記でも書きましたが、ギターは今回全て預け荷物にしたため、ギターケースを機内持ち込みする煩わしさから解放されて、ずいぶん快適になりました。もちろん、ギターケースや中身が空港での雑な取り扱いで破損する危険性は認識していましたが、Yamaha
S-51は小樽運河で29年間弾いてきた丈夫なギターですし、Dakota
Dave Hullさんから2年前にいただいた堅牢なケースも功を奏して、行き帰り共に何の問題もなく、ほっと一安心でした。
ほとんどの便が満席で、機内持ち込み荷物がやたらに多くて、上の棚の空きスペースに困っているお客を何度も見ていたので、いろんな意味でこれで今回は良かったのだと思います。
前回の反省(乗り継ぎ時間が空きすぎたりタイトすぎたりで大変でした)から、今回の帰りの旅程は事前にきちんと計画して、タコマ空港での無駄な待ち時間を減らし、スムーズに成田便に乗り換えることができました。
タコマ空港で成田行きの飛行機を待っている約2時間の間に、空港のお店などをいろいろ見学しました。まずやはり物価が高い。ハンバーガーショップでモーニングセットを頼んだら最低でも18ドル、サンドイッチ11ドル、菓子パン6ドル。自販機は、買うボタンを押さないと定価がわからないようなマシンがあったり、カード決済よりも現金で買った方が20セント安くなるとか、いろいろ面倒くさいです。日本でも、ここで見た自販機と同じようなレイアウトの機械をよく見ます。フルーツサンド自販機などもこの類です。
ロビーでは、カントリー歌手の男女がそれぞれ別の場所でギター弾き語りしていました。女性の方は普通でしたが、男性の方のギターケースには、かなりの皺くちゃのドル札がぎっしりと放り込まれていました。
豆知識ですが、三文楽士にお金を投げてくれるくらいの余裕がある人は、普通はそんな乱暴な投げ方をせず、まっすぐな札を優しくそっと置くはずです。ちょっと不自然なので、これはほとんど見せ金に違いない(意地悪な視点)。「そんなに儲かってるならもう投げなくても良いじゃん」という、貧乏ミュージシャンを応援しづらい心理を生み出してしまうので、過剰な見せ金は逆効果だと思う私。皆さんもどうぞ参考にしてください?(???
) ?。
11/25:

成田行きの飛行機での10時間は、来る時よりも長く、航路がベーリング海寄りになります。2回の食事とささやかなワインをいただき、うとうとしているうちに時間が過ぎ去り、成田に到着しました。
そして、やはり2年前の失敗から学び、成田から他の飛行機に乗り継ぎせず、この日は関東某所の安宿に一泊しました。街の狭さと人々の忙しなさに驚きつつ、久しぶりに食べる日本での夕食は、やはり格別。自分が日本人であることを、腹の底で感じたのでした。
小樽には、翌日の11/26に到着して、これにて1週間の旅が終了しました。
改めまして、お世話になった全ての方々、そして応援してくれた皆さんに心からお礼申し上げます。
これからも頑張りますので、どうぞよろしく!
(完)
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