12.アリア Aria

SB−200G(ギター・バンジョー)(現在無し)

表面板:プラスチックの皮?
側板・背面板:?(というかまさにバンジョーの胴体)
指板:?
ネック:?
 
使用アルバム:なし
 
 いつ頃購入したか覚えていないが、ともかく会社員時代に数万円で手に入れたもの。
 ラグタイムとバンジョーの近しい関係については、他のページでも触れているが、さらにあの歴史的ギタリスト、Reverend Gary Davis もギター・バンジョーを演奏したレコードを残している。その意味でも、ラグタイム・ギタリストにとってギター・バンジョーはかなり興味深い楽器である。
 
 「アリア」(荒井貿易)は、国産アコースティック・ギターの分野ではかなり長い歴史を持つらしい。ホームページによると、ブランド名は何と1960年からあるという(ヤマハのダイナミック・ギターより古い?)。その割に、ヤマハやモーリス、ヤイリ、キャッツアイといった有名ギターブランドほどには名前を聞かないのが不思議だ。アコースティック・ギター以外にも様々な楽器を取り扱っていて、また会社名の通り楽器商としての活動がめざましく、自社ブランド以外の製品も多いため、そういう印象を感じるのだろうか。
 
 そんな観点で見れば、このギター・バンジョーはいかにもアリアらしい、豊富なラインナップを示すものである。ご覧の通り、ボディーが全くバンジョーそのものであるが一応ギターであり、弦が6本ある。ただ、ギターならば通常は9フレットにあるポジションマークが10フレットにあるのは、いかにもバンジョーの特徴である。音は当然バンジョーの音で、洞窟から響いて来るようなリバーブ音がユニーク。ギタリストにとって、この豊かな音量とリバーブはうらやましくもある。
 
 私はこのギターでいろいろと試行錯誤したが、なかなかに苦労した。というのも、普通に曲を弾く以前に、まずチューニングがしにくい。表面がREMO製の正真正銘バンジョー・ヘッドだから、弦もギターのものよりかなり細く、テンションも緩い。また、キンキンの鉄弦ギターを弾き馴れた左手指からすれば、このテンションの緩さはむしろ快活な演奏を阻害するだけで、普通に弾いてもチョーキング状態。どの程度テンションをきつくすればいいか、ポイントがわからない。さらに、当然サドルが移動式なので、微妙に狂ってきたりするから、ますます音が合わなくなってくる。こうなると、普通のギターはなんて安定した楽器なんだろうと思う。
 
 このチューニングの調整が煩わしくて、私は買ってはみたものの録音などで使うことは今までなかった。しかし、この記事を執筆するために改めて持ち出して、久しぶりに弾いてみると、なかなか面白い。要は、そんなにシビアにメーターを見ても仕方がないと割り切るのが正解である。
 適当ながらオタルナイ・チューニングに合わせると、気分はまさにピート・シーガー、またはKALI(マルチニークのバンジョー・マンドリニスト)である。ただし、通常6弦をEbから合わせるところが、このバンジョー・ギターではFから合わせるとちょうど良い。
 
追加[2008-1-12]
 
 
ギターの本数が増えたため、このバンジョーギターは2008年1月に手放しました。
 
ユニークなバンジョーギター、現在も、型番や仕様が違うものの、アリアのラインナップに載っています。
根強い人気です。
 

 

Aria Dreadnought D−80(1977年製、#770520)(現在無し) NEW!!

表面板:ドイツ松単板
側板・背面板:ローズウッド単板
指板・ブリッジ:エボニー
ネック:マホガニー
 
使用アルバム:「Echoes From Otarunay Vol.1」「Echoes From Otarunay Vol.2
 
 2008年5月、ヤフーオークションで入手したギターで、有名なクラシック・ギター製作家の松岡良治氏の監修で作られていた時期の「アリア・ドレッドノート」です。この「アリア・ドレッドノート」は、つい最近、海外製作で復活したのですが、これは日本のフォークギターの最盛期に製作された日本製です。
 
 私は学生時代、「R.Matsuoka」の合板ギターをちょっとだけ持っていたことがあり(型番などの詳細は覚えていません)、その当時はそんなにいいギターとは思っていませんでした。
 ところが、時代は流れ、2008年に楽天舎でデッドストックの「Matsuoka」ギター(表面板は単板)に触れ、そのあまりの音の良さにビックリしてしまいました。そのギターは残念ながらお金がなくて買えなかったのですが、おかげで松岡やアリア・ドレッドノートの真の実力の一端に触れ、私にとってそれは憧れに変わっていったのです。このギターの入手は、仕様からすれば格安の中古価格だったのですが、それでも悩みました。しかし、日本の名器といえるこのオール単板ギターは、一生に一度でいいからぜひとも手にしたかったので、ちょっと無理して入手したのでした。
 
 私の直感は最近よく当たるのですが、このギターに関しても大正解でした。私にとってはむしろ過剰ともいえる豊かな鳴りと心地よいサスティンの広がり方、今となっては入手困難のドイツ松と、楽天舎で調整してもらった象牙ナット・サドルが生み出す透明感のある出音、回しやすいグローバーペグ、意外に弾きやすく疲れない適度な厚みのあるネックの握りなど、およそ一般的な国産ギターのイメージを覆す素晴らしい出来です。私は心から惚れこみました。
 
 マーチンの一般的なモデルに比べると、サスティンがまあまあ適度に減衰するせいか、コードの一体感ある響きは少し抑えられて、一方、弦の分離や立ち上がりの良さは若干勝っているという、私にとってはありがたい鳴り方です。
 
 今まで私が弾いてきた数ある国産ギターの中でも、疑いなくトップクラスの音です。
 

 入手時に貼りタイプのピエゾ・ピックアップまで付いてきました。

 それにしても、今となってはもちろん貴重なのですが、昔はこういう仕様がギターとしてはむしろ当たり前でした。当たり前の仕様で当たり前のマーチンコピーモデルを作って、こんなに素晴らしい音が鳴っていた時代があったのです。

 ずっと持っているつもりでしたが、他のお気に入りのギターを集中して弾きたくなったため、2009年に手放しました。

 

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