17.イバニーズ(現・アイバニーズ) Ibanez

AW−70DM(1979〜1980年製、#0305103)(現在無し)

表面板:エゾ松単板
側板・背面板:マホガニー単板
指板・ブリッジ:黒檀
ネック:アフリカンマホガニー
ピックガード:ローズウッド
 
使用アルバム:なし
 
 現在はアメリカの呼称に沿ってアイバニーズと言うそうですが、当時は本来のスペイン語に近いイバニーズという名称でした。もともとエレキギターで有名なメーカー(TAMAと同じく星野楽器製)ですが、この「アートウッドシリーズ」も、国産ギター史上特筆すべき良質なギターだったようです。
 バインディングやピックガードまで、素材をほとんど木で統一した作り。スキャロップト・ブレイシング、チューニングに配慮したサドル、全機種オール単板など、時代を先取りしたこだわりを感じます。
 
 このモデルは、2007年12月にヤフーオークションで購入。アートウッド・シリーズの中では格下ではあるものの、マホガニーの上位機種で、コンタクトマイクとピエゾ(張りマイク)の二系統をミックスできる純正ピックアップ付きのようです。ただし、専用コードとミックスボックスは欠品で、今のところピエゾの出力だけが生きているようです。
 
 結論から言って、国産ギターの名器の名に恥じない、素晴らしいギターです。特にサイド・バックのマホガニー単板は、見た感じかなり上質なものが使われていますし、仕上げも見事。現在のギターに換算すると、少なくとも15〜20万円くらいの価値があると思います。

 私がマホガニー単板で持っているギターは、シーガルのSS-50(OOO-18タイプ)とモーリスRA-801P(フィンガースタイル向けのFタイプ)だけだったということもありますが、私にとって今まであまり体験したことのないような新鮮な響きです。おそらく、マホガニーのドレッドノートのギターでスキャロップト・ブレイシングという、ユニークな組み合わせもその理由の一つでしょう。
 強いて言えば、私が大学生の頃持っていた、マーチンD-18STにかなり近い響きだと思います。ローズウッドのような深いドンシャリではなく、弾いた後のコードの余韻が暖かく包み込むような感じが素敵です。
 
 実は、持った感じも、普通の国産ギターというより、意外とマーチンなどのイメージに近いようです。サドル側の弦幅が若干広く、一般には日本人向けに弦幅をほんの少し狭くするギターが多い中で、外国での販売を視野に入れた規格だったことが伺えます。
 
 このイバニーズ独自の糸巻きは、ギヤ比も高く、ダンボの耳みたいでちょっと不恰好ですが回しやすい形状。これまた独自の形状を持つ5ミリ幅(!)の調整済みサドルの効果もあり、チューニングは実に正確に決まります。このあたりは、他のメーカーも見習ってもらいたいところです。
 
追加[2007-12-12]:その後、叶ッ野楽器販売様に質問メールを出し、ありがたくもお返事をいただきました。それによると、このモデルの製造年は1979年と1980年の2年間だけだったこと、ピックアップについては資料がなく詳細不明であることがわかりました。ステレオケーブルで音を出そうと試みましたが、やはりコンタクトの方は反応無しなので、機会があれば見てもらうつもりです。
 
 
追加[2007-12-30]
 
コンタクトマイクの電源がわかりました。
何と水銀式の旧ボタン電池(1.3V)がマイク本体に入っていました!
ギター用のアクティブ・ピックアップならば、当然9V電池だとばかり思い込んでいたため、これはちょっと予想がつきませんでした。
 
ヤフーオークションで他の人がこれ以前に出品していたAW-60DMの説明用追加写真に、デュアルミックスの説明書が少しだけ写っていて、その画像を拡大して解読し、初めて判明したのです。
http://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/106810617
http://photos.yahoo.co.jp/bc/hide_kao/lst?.dir=/87ec&.view=t
 
電池の型番は「H-C」という旧式ですが、これは現在の「LR44」(1.5V)で代用できるようで、それを入れてステレオコードでRチャンネルを試してみたら、ちゃんとマイクから音が出ました! つまり、ジャックには標準ステレオジャック用のケーブルを挿し、電池はマイク本体にボタン電池を入れることで、2系統のピックアップ出力を出すことが可能だということがわかりました。
 
イバニーズのDMは、販売元の星野楽器販売にすらちゃんとした資料が残っていないらしく、問い合わせてもこの点は不明だったため、余計にうれしいです。 イバニーズのDM機種をお持ちの方で、今までピックアップの使用をあきらめていた人にとっては、これは朗報ではないかと思います。
 
これでやっとデュアルミックス本来の機能が使えるようになりましたが、しかし私はそもそもラインとマイクのミックスをやらない人間でしたから、かえって面倒なことになってきました。次は、ミキサーでも買いましょうか...。
追加[2008-10-11]
 
 このギター自体に私は何の不満もなく、このギターに捧げる「アートウッド・ラグ」(2007、CD『運河のカラス』収録)も作曲したほど入れ込んでいました。ツアーや録音時(ただし実際のCDには使われず)にも活躍していたのですが、経済的な理由と、ギターの本数が増えすぎたため、一年を待たずに涙を呑んで手放すことになってしまいました。これからも新しいオーナーの元で、文字通り「木の芸術品」として、良い音を鳴らし続けてくれることを願っています。

AW−95(1979〜1980年製、#90810162)(現在無し) NEW!!

表面板:エゾ松単板
側板・背面板:ローズウッド単板
指板・ブリッジ:黒檀
ネック:アフリカンマホガニー
ピックガード:ローズウッド
 
使用アルバム:「Echoes From Otarunay Vol.2
 
 2009年10月にヤフーオークションで落札。なんとかギターの本数を減らそうという意気込みとは裏腹に、いいギターが安く出品されているのを見過ごせないのが私の辛いところ...。しかし、本当にいいギターを手に入れました。
 
 以前手放したイバニーズAW-70DMと同じ「アートウッド」シリーズ。TAMA製のギターは、国産ギターファンに高く評価されていますが、今度はよりグレードの高い、ローズウッドかつ12弦仕様のギターです。
 
 といっても、実は最初から12弦として使うつもりはあまりありませんでした。アートウッドシリーズのネックの幅広くなだらかな触感から、12弦ではたとえ弦高が低くても弾きづらいだろうと予想していたら、やはりその通りだったのです。
 
 すぐ6弦のミディアム弦を張って試してみたところ、さすが納得の音。
 すでに体験済みだったアートウッドの良質な作り、確かなボリュームやバランスの良さに、ローズならではの低音のうなりが加わり、特にスローテンポの曲ではにやっとするような野太い音が出ます。
 
 12弦の幅広いネックがちょっと気になりますが、もともとネックの状態はいいみたいで、6弦くらいのテンションでちょうど弾きやすい感じがします。ナット幅が通常より5ミリ広い分、込み入った運指の曲では有利な場合もあります。セーハは通常よりきつくなるため、これで練習すると筋力トレーニングに最適(笑)。
 
 なお、12弦ギターを6弦にする際、私は全ての弦を細い弦が通るナット溝に通し、サドルは逆に太い弦が通る溝に通し、なるべくサドルに近いブリッジピンで留める事によりテンションを稼ごうとしています。本来は邪道なやり方ですが、ピッチの誤差はまあまあ許容範囲。最近気に入って導入しているサウンドオフセットスペイサー(「S.O.S.」、ナットの下に挟むピッチ調整用器具)を3弦以降に付けて、さらにいいピッチになりました。なお弦は、6弦から順に11, 9, 7, 5, 3, 1弦のペグに巻いています。
 
 ひょっとしたら今(2010年で)一番、このギターの音が気に入っています。
 深く野太く鳴り、しかも響きに品位のある音です。
 特に最近、余分なブリッジピンを取ってしまってから(12個のうち6個を取りました)、さらに深く鳴るようになった気がします。
 ツアーに持って行くようなことはないかもしれませんが、この素晴らしい音はそれ以外の機会で利用したいと思います。

追加[2013-2-17]
 
 このギターの音にはとても感銘を受けていたので、手放したくなかったのです。
 しかし、ギターの本数を減らす必要があったので、やむなく2013年1月に手放しました。
 次の持ち主にいっぱい弾いていただけることを願っています。

 

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