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Discovery David Thomas Roberts(David Thomas Roberts、2005年)

1. Discovery / 2. Charbonneau / 3. Mariana's Waltz / 4. Ice Floes in Eden / 5. Memories of a Missouri Confederate / 6. Fantasy in D / 7. Chorale-Prelude / 8. Chorale No. 2 / 9. Frederic and the Coast / 10. Cynthia / 11. Babe of the Mountains / 12. Nancy's Library

 待望久しかった David Thomas Roberts の新作アルバム。
 Brun Campbell 集(2000)や最近の Joplin 集 volume.1、少し遡ってオムニバスCDの「Terra Verde」(1998)はありましたが、ソロの自作自演集(ただし2曲は他の作曲家の作品)としては意外にも「American Landscapes」(1995)以来10年ぶりとなります。
 しかし、このあまりにも長い空白期間は、このアルバムを生み出すのに必要な、芳醇な時の流れだったのです。私は、一人の音楽愛好家として、より多くの時を掛けてこのアルバムを楽しんでいくでしょう。

 「Neo-Romantic and New Eclectic Piano Music」(新ロマン派と新折衷主義のピアノ音楽)という副題が付いている通り、これらの作品はショパン、シューマン、アルベニス、サティなど様々なロマン派音楽のイメージを根幹としていて、さらにジョプリン、モートン、ナザレ、南米音楽など様々な経路からの影響を昇華した、それでいて不思議に独創的なピアノ音楽です。1995年に、彼はそのような凡アメリカ的な音楽を「テラ・ベルデ」と名付けています。
 ラグタイム時代の音楽にも共通する、こうしたロマン派音楽への強い傾倒と雑食性は、彼の手を経て、さらにジャンルの枠を越えた無類の芸術作品として結晶したのです。

 ミディアム・スローの表題作「Discovery」(2004)一つを例にとっても、彼の往年の傑作「Camille」(1979)よりも自由なタッチで、しかしより深く移ろいゆく表情を見事に映し出しています。全ての曲にコメントを付けるのはスペース的に無理ですが、特に最後の「Nancy's Library」(2004-2005)は特筆すべきで、とても切なく感動的な曲です。

 私は、(もったいないので本当にちょっとずつ聴いているのですが)この素晴らしいアルバムを聴くたびに、音楽、そして人生には私がまだ発見していなかった多くの神秘があることを改めて教えられるのです。

 

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