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The Animals EP Collection(SEE FOR MILES Records、1964-1965, 1999年)

 2002年春、気づいてみたら小樽に本格的な中古レコード店が出来ていました。久々におもしろいCD探索をやりまして、ハリー・コニック・ジュニアとこのアニマルズのCDが目にとまったのです(ジュニアの方はまた日を改めて書きたいです)。以前からアニマルズについては勉強したいと思っていたので、ちょうどいい機会でした。今まで「朝日のあたる家」のヒットでしかアニマルズの名を知らなかったのですが、それは「ユー・リアリー・ガット・ミー」でしかキンクスを知らないのに等しい、実にもったいない事だとわかりました。

 プロフィールや歴史(1963-1966という短い期間)など詳しい事は勉強不足なので他に譲りまして、ここではこのCDの印象に絞って書きます。とにかくうまい! 演奏が文句のつけようのないほど素晴らしい、というのが第一印象です。特に前面に押し出されているオルガン(アラン・プライス)の響きが、R&Bへの徹底的な傾倒とあいまって、このバンドのカラーを決定付けています。いちいち心憎いラインを取るベース(ブライアン・チャンドラー)のはつらつとしたビートも素晴らしく、明らかに当時のポール・マッカートニーより技巧的です。
 この(当時としては)大人びた、ジャズ・ロックを思わせるサウンド・アンサンブルは、同時代の他のグループ(ビートルズやストーンズ、キンクスやフーも含む)に比べても格の違う、優れた演奏だと思います。

 リーダーのアラン・プライスは、ジャズのルーツ(特にブルース)への愛着を持っていたそうで、これがメンバー全員に浸透。ジョン・リー・フッカー、ファッツ・ドミノ、チャック・ベリーなどの黒人アーティストたち、そして優れたトラディショナルへの敬意が、これでもかこれでもかと言うほど感じられます。アニマルズは、ジョン・メイヨールやヤードバーズ、クリームといったいわゆる「ホワイト・ブルース」の先駆けなのかも知れません。
 逆に彼等のオリジナル曲があまりにも少ないのが奇妙な特徴で、この「EPコレクション」からだけではその魅力は良く伝わってきません。こういう点が、ビートルズを中心にオリジナルを重視していた当時のロック界の気風に合わなかったのかも知れません。あまりに黒人音楽の世界をそのまま志向しすぎて、新しいポップな機軸を打ち出せなかったということかも知れません。

 しかし、私は彼等の音楽にとても感動しました。もちろんR&Bのエネルギッシュな魅力は髄一なのですが、彼等の音楽は当時のストーンズのように若さにまかせて荒っぽく突っ走るものではありません。また、ビートルズのようにちょっとした芸術を気取った音楽でもありません。一曲一曲何をやっているかが自分たちで良くわかっているという意味ではとても抑制的、非常にオーソドックスでクレバーな音楽だと思うのです。
 よいバンド演奏とはこういうものだというお手本のような、優れた音楽でした。

 

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