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Brazil - Roots - Samba / V.A.(Rounder CD 5045、1989年)

 私はつい最近、同じ小樽市の信香町から入船町の一軒家へ引っ越しました。今までのアパートはそれなりにいい所でしたが、なにぶん恐ろしく古かったので、実は大きな音が全く出せませんでした。自分の人生を捧げられるくらいに音楽が好きなのに、自分の家ではまともにギターも弾けない、オーディオもかけられないという生活を、よくも4年間続けることができたものだと、改めて考えると我ながら感心します。
 その反動からか、外がまだ寒くて仕事に出られないということもあって、最近は新しい「リスニング・ルーム」でCDを鬼のように聴きまくっています。まったく、電気代が心配になるくらいです。アンプが壊れていて、しかたなく投げ銭用のアンプ2台をCDプレイヤーに繋げて音を出していますが、これが結構いい音で、久しぶりの心休まる幸せを味わっています。

 そんな中、真っ先に聴いたのがこの楽しいコンピレーション・アルバム。輸入盤で、細かい背景などのライナー情報はめんどくさくて全然見ていませんが、ブラジル版「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」みたいな好アルバムだと思います。まず、ミュージシャンは以下の通り。

Rafael Rabello (7-string guitar), Henrique Cazes (nylon string guitar, tenor guitar and cavaquinho), Claudio Jorge (nylon string guitar), Chiquinho (accordeon), Paulo Sergio Santos (clarinet), Dazinho (flute), Nelsinho (trombone), その他、パーカッションやコーラスの人多数。また The Velha Guarda da Portela (Mauro Diniz, Francisco Santana, Casemiro, Alberto Lonato etc...).

 ご覧の通りにぎやかな編成が魅力で、Wilson Moreira や Nelson Sargento といった作曲家たちの歌を中心に演奏されています。まさに全編、ブラジルのサンバのリズムが刻まれていて、いい気分。思わず踊りだしてしまうくらいです。レストランなんかでかけてもよい感じの安心感は、やはり本場の音楽です。なお、ラファエル・ラベーロは、ギター・ファンには有名なギタリストだと聞いています。ギター属の大活躍も、ブラジル音楽の大きな魅力の一つです。
 当時のラウンダーは、ブレイブ・コンボなど多くのワールドワイドな音楽を紹介していて、いわゆる「ワールド・ミュージック・ブーム」に大きな影響力を示しましたが、こういう伝統的な力を持った音楽は、一過性のブームに帰してしまうものではありません。

 ラグタイムと南米音楽との関係は、私の生涯の疑問になりそうなのですが、そういう観点から見ればこのサンバのリズムもラグと同じ2拍子、伴奏の絶え間ないシンコペーションは白人系ラグによく見られる「セカンダリー・モチーフ」(2拍子を細かい3拍子系の倍数で埋めていく音型)が定型化したものだと考えることが出来ます。伴奏のリズムが絶えずこうしてシンコペーションしているため、伴奏とバッティングしないようにメロディーのシンコペーションが控えめになっています。よって、結果としてラグタイムとは逆の形に見えるのです。これは、他の多くの南米音楽にも言えることだと思います。

 

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