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★ タンゴとギター/飯泉 昌宏(BORDONA MA-0103、2004年)

1. Los mareados (J. C. Cobian) / 2. La trampera (A. Troilo) / 3. Libertango (A. Piazzolla) / 4. Chiquilin de Bachin (A. Piazzolla) / 5. 海へゆこう (飯泉 昌宏) / 6. Nostalgico (J. Plaza) / 7. Danzarin (J. Plaza) / 8. Melancolico (J. Plaza) / 9. La ultima curda (A. Troilo) / 10. Mi refugio (J. C. Cobian) / 11. 約束 (飯泉 昌宏) / 12. Entre Brecht et Bref (A. Piazzolla)

 日本のタンゴ・ギターの第一人者、飯泉 昌宏さんの最新作は、初のソロ・ギター・アルバム。バンド演奏がメインであると言う飯泉さんですが、そのソロ・ギターの素晴らしさは、今までほとんどライブでしか知ることができなかったので、これはまさに待望のアルバムでした。そして内容的にも前例のない、日本のタンゴ・ギターの歴史に大きな一ページを加える、素晴らしいアルバムとなっています。

 飯泉さんはすでにご自身のバンドでピアソラ作品集も発表されていますが、ここではピアソラを含めアルゼンチン・タンゴの作曲家4人と、オリジナル曲という構成になっています。アルバム全編に流れる南米音楽への熱情溢れる演奏。リバーブ感を抑えた非常にナチュラルな音像。そして様々に表情を変える叙情的なナイロン弦ギターの響き。飯泉さんの日本人としての感性が、ダンス音楽であるタンゴに、この切ない叙情性を加味するのでしょう。

 冒険を恐れずに言うと、私は飯泉さんのギターに「上品な色気」も感じます。ライナーノーツの解説では「タンゴを作るには、Serio(誠実)でなければならない」というA.ペノンの言葉が紹介されています。もちろんそれは真実でしょう。しかし私は、文化や伝統はただ誠実に受け継ぐだけのものではないと思うのです。あのピアソラは、普遍的な音楽への愛の命ずるまま、自ら「タンゴ界の異端児」となりました。私は同じように飯泉さんのギターが、受け継いだ以上の何かを伝える「新しい伝統」を作りつつあると感じます。だからこそ、同じギタリストとしても深い共感を覚えるのです。

 タンゴという言葉を聞いて「ラ・クンパルシータ」しか思い出せない人は、このアルバムで今まで体験したことのない音楽を聴くことになるでしょう。ギター・ファン、南米音楽愛好家以外にも、広く楽しまれるべきアルバムです。

http://homepage3.nifty.com/bordona/

 

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