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★ マイ・タートル・イマジネーション My Turtle Imagination /亀工房(Kame-Kobo Music KKM-001、2001年)

 私の生涯の友人でありライバルでもある不世出のギタリスト、前澤勝典くんと奥さんの朱美さん(ハンマーダルシマー)のデュエット・バンド、亀工房。「過去の共演者ご紹介」でもご紹介しています。

 ここでいきなり脱線して、私の個人的な昔話をします。
 私と前澤君との出会いは今から約15年前、1986年にまで遡ります。私が就職活動で上京した際、ウィンダム・ヒル系のギター同好会の同じメンバー同士として、南澤大介君の家に集合したのが始まりでした。引っ込み思案だった私にとって、北海道から旅立っていろんなギター仲間と交流できたことはとてもうれしい出来事でした。前澤君はストレートな性格で、またレオ・コッケの熱狂的なファンで、ちょうどレオのことを色々知ろうと思っていた私はすっかり意気投合してしまいました。また、彼の聴かせてくれた日本人離れのパワフルなプレイ・スタイルは、明らかに今まで聴いたことのないギター世界だったのです(CDのライナーでも触れられていますが、雄叫びもすごかった)。前澤君も、北海道から思いがけずやって来た私のつたない自作曲に驚いてくれたらしく、しだいにお互い良き友人兼ギターライバルとして、親交を深めていったのでした。

 その後、もともと旅好きだった前澤君は狭い日本に留まらず、アメリカのナショナル・フィンガーピッキング・チャンピオンシップ(カンサス州のウィンフィールドで行われている有名なコンテスト)に数度参加し、かつアメリカやカナダのキラ星のようなギタープレイヤーたち(少し挙げるだけでも、ジョン・レンボーン、レオ・コッケ、ピエール・ベンスーザン、マイケル・ヘッジズ、トム・ロング、ペッピノ・ダゴスティーノ、ドン・ロス、キャットフィッシュ・キース etc.)と交流し、そのワールドワイドなギターに磨きを掛けていきます。会いたいと思った人に、どこだろうと構わず直接会いに行く行動力に代表されるこうしたバイタリティーは、同じ頃、会社員生活で音楽へかまける時間が少なくなっていた私にとって、とてもうらやましかったのです。

 彼は、その後旅の果てに出会った朱美さんと結婚し、山梨県の清里で暮らし始めました。そしてそれが落ち着いた頃(1995年)、ちょうど私は東京での会社員生活にピリオドを打ち、アイヌ語研究と故郷での音楽活動のため、北海道へ帰ることになりました。そこで記念にと、友人と共に清里に遊びに行ったとき、私は初めて亀工房の音楽に触れたのです。前澤君のギターは問答無用ですが、以前から話には聞いていた朱美さんのハンマーダルシマーを初めて聞き、私はビックリしてしまいました。前澤君は、ずっと以前から立派なダルシマーを持っていても「自分はモリソンズ・ジグしか弾けない」といっていたのに、そのだいぶ後からダルシマーをはじめた奥さんの方がとても素晴らしい響きなのです。そしてその端正で星のような響きと、前澤君のドライブするアメリカン・スタイルのフィンガースタイル・ギターの組み合わせが絶妙でした。これが、私の亀工房初体験だったのです。ソロ・ギタリストとしての前澤君しか知らなかった私は、やっぱりとてもうらやましかったのです。

 このCDは、待望久しかった彼らのデビュー盤です。
 アメリカの音楽(「ディル・ピックル・ラグ」や「ウィリーズ・ワルツ」など)やアイリッシュ、ケルティック音楽(「シーベグ・シーモア」「ドロシー・マギー」など)といったバラエティーに富んだ選曲です。2人のデュオの他ギター・ソロやダルシマー・ソロもあり、ダルシマー・バンドの HARD TO FIND とはまた違った形で、良質な臨場感(実は私、録音に参加しました)と美しい演奏が楽しめます。そして今年(2001年)、このCDを契機に、亀工房は拠点を長野県に移して、本格的な活動を始めています。
 私は、初めて聞いたときからの、彼らの音楽の一ファンです。これからももっと、うらやましがらせてください。
 なお、亀工房のホームページは以下の通り。
http://www7.ocn.ne.jp/~kamekobo/

 

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