★ ジャーニー JOURNEY /亀工房(Kame-Kobo Music KKM-002、2003年)
私の生涯の友人でありギターライバルでもある前澤勝典くん(アコースティック・ギター)と、奥さんの朱美さん(ハンマーダルシマー)のデュエット・バンド、亀工房。「過去の共演者ご紹介」でもご紹介しています。
これは、前作「マイ・タートル・イマジネーション」(2001年)から二年ぶりの新作。亀工房は、その二年間の音楽的遍歴と成長を最高の形で示してくれました。
私は確かに亀工房の友人で、前作に続き今回のアルバムの録音作業にも参加しているため、いわば身内と言ってもいいかも知れません。しかし、このアルバムの素晴らしさは普遍的なもので、一聴すれば多くの人が認めると思います。私は自信を持ってあらゆる人にお勧めします。
全15曲、半数がアイルランドの曲という点は前作とほぼ共通しますが、演奏そのものや編曲に、遊び心や意外性、そして余裕のようなものを感じます。これはアルバム全体を通したスムースな流れにも繋がっていて、明らかに着実なライブ活動の積み重ねによる音楽的成長の現れでしょう。「早春賦」「クラリネット・ポルカ」のような幅広い選曲も彼らの魅力で、アレンジセンスにさらに磨きが掛かった印象です。また、初めてデュオとしてのオリジナル曲が2曲(「小道の向こうに...」「ジャーニー」)収録されているのが特筆すべきです。特にタイトル曲は、普通のアイリッシュバンドとは一線を画する彼らの新境地を示す傑作だと思います。そして、メンバーのソロ曲も、引き込まれるような美しさを持っています。演奏や録音は、前作でのありのままの臨場感やピーク感を抑えて、音をじっくりと作り込んでいるため、より透明感に溢れた聴きやすい作品に仕上がっています。
亀工房の、星のきらめきのように美しい音色は、どちらも鉄の弦による瞬間的ピークと減衰を持つ楽器(撥弦のギターと打弦のハンマーダルシマー)の組み合わせにもその秘密があります。これは、すんなり聴けてしまうため気づかない人もいるかと思いますが、他のアイリッシュバンドでは意外になかなか見られないのです。賛辞を寄せているカナダの偉大なギタリスト、ドン・ロスの「Their sound is individual, fresh and unique」(ライナーより引用)という言葉は、改めて私もその通りだと思います。この独特な響きの良さは、例えば車で移動中にカーステレオで聴いても(まさにジャーニー?)良いと思います。ジャケットも素晴らしく、私は最初特殊ジャケットかと見間違えたくらい、前澤一家を描写した切り絵が美しいのです。彼らを直接知る人は、「あっ、なるほど! これがあの子ね」と思わず口元が緩んでしまうでしょう。
前作が初々しいみずみずしさを示す若葉の魅力だとすれば、新作は枝葉を着実に伸ばし、よりしっかりと大地に根を張った作品であることが、いろんな意味ではっきりと感じられるのです。私は、素晴らしい音楽家、亀工房の友人であることを誇りに思います。
(亀工房ホームページ)
http://www7.ocn.ne.jp/~kamekobo/