★ ブルーファンク・イズ・ア・ファクト! Bluefunk Is A Fact!/キザイア・ジョーンズ Keziah Jones(ヴァージン・ジャパン、1992年)
キザイア・ジョーンズは、以前「コネクション・アンリミテッド」のCD紹介でも触れたファンク系のアーティストで、実は私にとってかなりお気に入りなのです。このCDは彼のデビュー盤に当たるもので、日本でも話題になりました。
ライナーノーツによると、彼はナイジェリア出身、ロンドンのストリート・ミュージシャンからスターダムにのし上がった人です。なるほど、一度テレビで彼の来日公演の様子を見ましたが、本当にアグレッシブかつかっこいいパフォーマンスが、いかにも場数を経ている人ならではと思わされました。彼は、自分の音楽を型にはめるのが嫌いなようで(しばしば自意識の高いミュージシャンがとるスタンスにも同じことが言えますが)、このアルバムでは自分の音楽を「ブルーファンク」と呼んでいました。もちろんこの語は、ブルースとファンクを掛け合わせたものですが、まさにそのイメージがピッタリ当てはまるのです。
音楽的な点から特筆すべきは、そのタイトなグルーブ感の表現です。バンドの基本構成はボーカル&ギター、ドラム、ベースというトリオで、たまに別のメロディー楽器が絡みますが、そのシンプルな構成からは信じられない音の重厚さ、そして躍動感が感じられます。それは、彼自身のハードなギタープレイにも多くの要因があるようです。スパスパ切れるコードカッティング、ここぞというときに決まるストップ・ブレイクの妙、絶え間なく流し続けるフレーズからはレゲエの面影も感じられて、一筋縄では行かない奥の深さがあると思います。テクニックばかりでなく、そのクールな雰囲気を醸し出す独特の歌詞の世界に支えられた精神が、聴く人に強烈にアピールされています。
このアルバムの白眉は、ファンキーな演奏と刺激的な歌詞で聴衆を挑発する「Walkin' Naked Thru A Bluebell Field」、破天荒な比喩のようで実にうまい表現を使う「Free Your Soul」など。というか、私にとっては各曲それぞれがもはや名曲の域に達しています。ライナーにある「(族長である父親の)部族の掟を破ったおかげで、警察や一族から追われている」というような(直接には音楽に関係しない)眉唾話も、アーティストの神秘性を高めることになっています。ロック音楽のソロアーティストで、ここまでかっこよく自らを演出できた人は、後にも先にもあまり記憶にありません(よくいる他のカッコツケ音楽家たちは、演出の仕方がわざとらしかったり、歌詞や持論の理屈がありきたりだったりして、底の薄さがばれてしまう)。日本盤の帯の煽り文句に「超人出現!」とあるのは、その音楽を形容する面からも、そしてアーティストを劇的に演出するという面からも、決してオーバーな宣伝ではないのです。
私は、実はうかつにもこのアルバム以降をチェックしていないのです。同好の方がいらっしゃれば、彼についてぜひ語り合いたいです。