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Tom McDermott and His Jazz Hellions(Jazzology JCD-227、1994年)

 最近の順番として、次はピアノということで、わたしの好きなニューオーリンズ・ピアニストのトム・マクダーモットをご紹介しましょう。1957年生まれ、セントルイス出身で、16歳からプロとして活動しています。この手の音楽の名手としては、まだ若手に属するでしょう。ジョプリンやジェリ・ロール・モートンなどのラグタイムからスイングジャズ、そしてモダンな響きを持つ独自のオリジナル・ソロまで、素晴らしい演奏で聴衆を惹きつけるエンターテナーです。

 私がトムを最初に知ったのは、このホームページで度々触れているクラシック・ギタリストの新間英雄さんから紹介されたからでした。今は無き六本木のWAVEは、私たちラグタイム熱狂者たちのコレクト拠点と言ってもよかった時期がありました。まだCD時代に入る前、ジャゾロジーやストンプ・オフなどといったレーベルの、ラグタイムやアーリージャズの名盤が、面白いように手に入ったのです。新間さんに言われて探してみると、トムのレコードをはじめ、今考えたらきら星のような名盤がズラリ。就職のため上京した1986年から翌年にかけて、ギター関係を含めて購入したレコードは数知れず、私はレコード大魔人と化していたかも知れません。今思えば、こういう情報を手に入れたことは、私の人生にとっても大きな意味を持っていました。

 ちょっと話がそれました。そうして私が最初に手に入れたのが、「New Rags」(1980)というレコードでした。タイトル通り、トムの作曲した新しいオリジナルのラグタイム・ピアノ・ソロを収めた名盤です。トムのラグタイムは、クラシック・ラグの影響はありますが(彼は特にデビッド・トーマス・ロバーツに影響を受け、彼に「Big Man」というシリアスなピアノ曲を献呈しています)、むしろモートンの影響やジェイムズ・P・ジョンソン風の軽妙なセンスを持つ「いろんな人が楽しめる」スタイルでした。がちがちのラグよりは、ジャズ・ファンが楽しめそうな感じなのです。先のドクター・ジョンの音楽とも、多くの部分でクロスすると言えるでしょう。また、これまた先のジョン・アーピンの時と同じく、コンピュータ・ソフト「New Orleans Pianist」でも12曲の演奏を楽しめます。立派に一枚のアルバム分です。

 このCDは、ピアノ・ソロも数曲入っていますが、主に先進的なニューオーリンズ・ジャズ・バンドの演奏を堪能できるアルバムです。ソロもいいですが、やはり彼のようなスタイルには、こういうジャズバンドの形式がピッタリという感じがします。曲目もデューク・エリントンやホーギー・カーマイケルからジャンゴ・ラインハルトまで、何でもあり状態。最後の「Twilight In Turkey(Raymond Scott作)」はクレツマーみたいな感じで、「クレツマニア(私の知り合いがやっている、札幌のクレツマーバンド)」のレパートリーでもおかしくないくらいです。幅広いリスナーが楽しめるでしょう。
 トムのピアノは、バンドのアンサンブルを際だたせるバッキング、キャッチーなリフによる合いの手(特に装飾音の決め方が素晴らしい)、そしてストライドになったときの無敵な感覚が絶品です。これもピアノ・ファンにはたまらない、至福のひととき。ああ、幸せ。私もピアニストだったらよかった

 数曲のピアノソロは、クラシック・ラグのリスナーにもお勧めです。中でも「For Brenda」はバラード風の曲想が情感たっぷりで、短いのですがとてもいい曲です。
 彼のCDを見かけたら、迷うことなく買うことにしています。

 

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