★ With A little Help From My
Friends/Sketch(GoldHat Music、2004年)
http://sketch3.jp/
1. Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band / 2. With A Little Help From My Friends / 3. Maxwell's Silver Hammer / 4. I Am The Walrus / 5. Blackbird / 6. Piggies / 7. Strawberry Fields Forever / 8. Michelle / 9. Ob-La-Di, Ob-La-Da / 10. I Will / 11. All You Need Is Love
横浜在住のギタリスト、Sketch さん(益田 洋さん)のビートルズ編曲集で、アメリカでリリースされたCDです。
Sketch さんのギター歴は長く、1977年に渡米してバークリー音楽院などで洋楽をどん欲に吸収し、チェット・アトキンスやガイ・バン・デューサーなどのギター・スタイルをマスターし、1980年代にライブや演劇などでギタリストとして活躍しました。
一時期音楽から離れて、コンピュータ関連の翻訳家として生計を立てる道を選びましたが、2001年頃からギタリストとしての活動を再開し、以降はライブ活動を積極的に行っています。このCDは、1988-2002年にかけて作られたオリジナル集『Sketch One』とともに、Sketch さんを世に知らしめた代表的なアルバム。曲目を見るとおわかりの通り、ビートルズのギター編曲としては普通あまり取り上げられない後期の作品を中心に選曲されています。
今でこそ Steven King や 山下和仁などのビートルズ・アルバムが世に出ていますが、十人十色の世界ですから、逆にオリジナルに負けないくらいのオリジナリティーを競える分野です。その意味で、このアルバムはいろいろユニークな編曲を収めています。ナイロン弦とスチール弦という両刀使いで、一聴して奇をてらわないオーソドックスな奏法しか使っていないのに、原曲のマジカルな感覚が見事に抽出されています。特に異色のアレンジはジョンの「I Am The Walrus」。この曲を編曲するということ自体、ギタリストにとっては一つのチャレンジなのですが、Sketch さんは当たり前のようにギターのメロディーに乗せています(残念ながらこのアルバムには未収録ですが、「A Day In The Life」のアレンジも絶品です)。多くの部分を占めるポールのレパートリーも、「With A Little Help From My Friends」「I Will」など、自然で暖かい雰囲気を醸し出しています。60年代イギリスの曲を70年代アメリカの感覚で弾いているといった感じで、同じく70年代のキッキングミュールに影響を受けた世代の私は、とても懐かしさを感じる世界です。
いわゆるタッピングやストラミングなどの「超絶テクニック」は、必ずしもギターの最良の音を届けてくれるとは限りません。特に原曲がある場合は、音楽解釈上はミスマッチだったり、ずっと聴いていると疲れたりすることもあります。その点、Sketch さんの編曲は、実にギターの理に叶っていて、耳に心地よく響くようにコントロールされています。良いギター編曲とはこういうものを指すのだという典型です。
また、Studio Migmig のサウンドプロデュースも光っていて、良質なギター録音という意味でも抜きん出ています。
ギター、ビートルズの愛好家はもちろん、一般の人も気軽に楽しめる雰囲気のアルバムです。
お勧めします。