★ 鍵盤上の子猫〜ゼズ・コンフリー/ノベルティ・ラグの名技/ゼズ・コンフリー(WARNER CLASSICS WPCS-11686、2003年)
これは、「日本ラグタイム・クラブ」のページでも解説されている技巧的かつ描写的ラグタイムの一種「ノベルティー・ピアノ」の第一人者、Zez Confrey(1895-1971)のピアノ・ロール・アルバムの日本盤です。彼が主に1920年代に残したピアノ・ロールを、現代の技術で再生した、非常に歴史的意義のある好アルバムです(Artis Wodehouse による自動演奏も数曲含む)。
ピアノ・ロール(ロール紙に穴を開けて演奏を記録させる自動ピアノ)というと、普通はノリの悪い機械的な音を想像してしまいますが、このアルバムで蘇った最新の音を聞けば、そんな偏見は完全に消し飛んでしまいます。今までも Confrey の曲を他の演奏家が取り上げたアルバムを何枚か聴きましたが、面白いことに、そうした人間の演奏以上にノリノリなのです。私が今まで聴いてきたピアノ・ロール盤の中でも、疑いなく最高の一枚です。
Confreyは、もちろん素晴らしいピアノ・テクニックの持ち主でしたが、他にも「ピアノ・ロール職人」としての特別な才能があったようで、実際の演奏の記録・再現にとどまらず、そこにピアノ・ロールでしかできない音楽的仕掛けまで加えて、まばゆいばかりの音楽的輝きが現出しています。シーケンサーの無かった時代、よくぞここまで痛快な演奏を記録することができたものだと思いますし、再現した Artis Wodehouse らの技術も見事です。
さらに、彼の素晴らしい作曲や編曲を、23曲もまとめて聴けるアルバム自体、珍しいと思います。
少しでもピアノ・ラグに関心のある人は、このアルバムを逃してはいけません。