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【け】

けい【〜系】[名詞](補遺)
 「系統」「系列」が接尾辞的に使われるときの形。連体修飾を受ける形で、何かの共通点や繋がりによる分類を表す合成名詞を作る。例:「E231系」「外資系」「家系」。また、厳密な分類でなくても、あるジャンルの特徴を非常に大まかに指すときによく使われる。例:「癒し系」「叩き系」「バラエティー系」「エロ系」「出会い系」。さらに現代の用法では、別に系を付けなくても意味が通じるのにわざわざ付ける時がある。例:「音楽系」「文筆系」「Mac系」「劇団系」「漫画系」。しかし系とは、そもそも音楽のような野放図なジャンルに一定の範疇を設ける時にこそ便利な言葉である。つまり「ブルース系」「ブリティッシュ系」「グランジ系」「GS系」「ジャズ系」「フォーク系」「ファンク系」「ビートルズ系」「ポール・モーリア系」「ハンク・ウィリアムズ系」など無数の系が設定される。この語の使用を禁止したら、コピーライター系や評論家系の人は困るかも知れない。

けいじばん【掲示板】[名詞]
 @駅前やロビーなどに置いてある、書き込み自由の黒板。昔の映画などでは重要な小道具だったし、実際にこれを利用してロマンをかき立てられた人は多いと思う。しかし現在ではケータイで用事が足りてしまうので、もはや絶滅の危機。
 Aインターネットで利用される、書き込み自由のページのこと。本当の掲示板(@)は絶滅に近いのに、こちらは大いに繁盛している。批評家が集う掲示板には、あるミュージシャンへの悪口とその反論、そして人を混乱させるのが好きな人のいたずらがいっぱい書いてあり、見ているだけで吐きそうになってくることも多い。人は、匿名の存在となって加害者としての責任から解放されると、とことん失礼で下品な悪魔になれる。皆さんご存じの通り、ミュージシャンのオフィシャル・ページにもよく掲示板があるが、ここには目を皿のようにして巡回する管理人がいて、悪辣な書き込みや宣伝行為は何事もなかったようにもみ消される。管理人は、手間が掛かるので大変だ。その管理人が何とミュージシャン本人の場合もあり、虫も殺さぬ顔してサクッとやってしまうのをリアルタイムで目撃した人もいるかも知れない。かくいう私の掲示板(ゲストブック)には字数制限があり、クドクドと陰湿な書き込みはできないようになっているので、とても助かっている。もちろん管理人は私。まあしかし、ミュージシャンをけなすのはたった一言で事足りる。「下手くそ!」とか「金返せ!」とか「親不孝者!」とか。何でそんなに文句を言われなきゃならんのかは別にして、人に文句があるなら表に出てサシで話し合うのがベストであろう。→失言。

げいじゅつせい【芸術性】[名詞]
 何だか難解で、でも格調高そうに思える文化の傾向。音楽においては、そうとしか誉めようがない、色気のないものに多く使われる言葉。

けいたい【ケイタイ(ケータイ)】[名詞]
 携帯電話の総称。PHSというものもあるが、やはりこれの一種と見なされる。技術革新の結果、進化を200年ほど先取りしてしまい、23世紀が舞台のスタートレックに登場する通信機より小さくなってしまった。さて以下の文は、特に私の個人的な「アンチ・ケータイ主義」の宣誓文として読んでほしい。本来の日本語としての「携帯」とは違う意味として定着したという理由と、こんなチンケな道具を使う愚か者どもを侮蔑する意味で、私はこの語を特にカタカナ表記することを奨励する。爆発的な勢いで普及したが、主な使用者は、心の隙間を多くの空しい言葉で埋めたがる人、単に横並びを好む人、もしくは仕事で仕方なく持っている人。よく言われる社会的問題(援交・家出・さらには殺人など、犯罪の温床と化している)については、耳タコだと思うのでわざわざ言及しない。コミュニケーションは、あんまりやりすぎると余計なことにまで相互理解が深まり、仲違いや没個性化の原因になる。実際に会わなくても話が成立するようになるため、これによってかえって人間関係が寂しくなる場合もある。普通は心に秘めるようなもどかしい言葉まで、ケータイで全て洗いざらいしゃべってしまうため、詩人は育ちにくい。思いがけないドラマも起こりにくいので映画はウソっぽくなった。ケータイをみんなが持っているという前提で、あのロマン溢れる公衆電話が無くなりつつあるのは、何とかならないものか。音楽のライブやコンサートでは、ケータイを切るかマナーモードにすることを客にいちいち要求しなければならず、神経質な奴だと客に陰口を叩かれる。着信メロディーはどんどん進化して、とうとう本物の曲(オーディオ)になってしまったが、TPOを考えない突然の音楽など、まさにくそったれだ。カメラ付きケータイは史上最悪の発明。この世の二大悪が手を組んだようなもので、怪しげなカメラ人口がこれによって急増した。あっちでもこっちでもピロリンピロリンカシャカシャと鳴り響き、撮られた人が抗議する間もなく瞬時にメールで配信される。その画期的なすさまじさは、私のような貧乏人にかろうじて残された最後の権利、肖像権というものを全て灰燼に帰す勢いである。ケータイを使う人々の脳や耳や唇には、おそらく絶え間ない電磁波によるガンの種が宿っていることだろう。人の命がかかっているような場合でない限り、私はケータイを一生持たないし、可能な限り持たせないでほしい。(編注:その後、2009年夏から、ソフトバンクの携帯を持っていた彼女との交際を目的にあっさりiPhoneを持った私は、アンチ・ケータイ主義者からさんざん「裏切り者」呼ばわりされました。この場を借りまして、伏してお詫びいたします。)

けいたいおんがくぷれいやー【携帯音楽プレイヤー】[名詞](補遺)
 超小型の音楽再生装置の総称。昔はカセットやCDだったが、今はご存じの通りHDDを使うもの、メモリーカードを使うものなどいろんな種類がある。つまり今の世の中は何でもケータイ。言葉も音楽もケータイで十分なのである。もうやめろ。もうたくさんだ。この軽薄短小め。彼らはいつかトイレまでケータイで済ませてしまうに違いない。
(編注:だからすみませんってば。)

けいわいご【KY語】[名詞](補遺)
 KY(空気読めない)、JK(女子高生)、MMK(もててもてて困る)、YN(夢がない)など、ある特定の句についてローマ字の頭文字を取って略称とする隠語。こうした語法は別に女子高生の専売特許ではなく、例えばNHK(日本放送協会)やYKK(吉田工業株式会社)も同じ方法論で作られている言葉である。ただし、たわいもない戯言で人をバカにしたり、あまりセンスのないオチが付いているのはいただけない。SGSKKKTZYH(最近、芸能人が率先してこういうくそったれな言葉を使っているのはぜひやめて欲しい)。MIKYMDNSMD(もっと言えば、空気は読むものではなく、吸うものだ)

けーぽっぷ【K−POP】[名詞]
 韓国のJ−POP的な流行音楽。私がもし韓国人なら、こんな人真似したような名称はお断りだ。

けつくり【ケツクリ】[名詞]
 「ケツを繰り返す」の略語。曲の終わらせ方の一つ。最後の楽節のサビを繰り返して収まりよく曲を終了させる。バンドの打ち合わせでよく出てくる言葉。最初言われたときは、猫が毛を繕うことかと思ったし、ケツをクリクリさせることかとも思った。

げりららいぶ【ゲリラライブ】[名詞](補遺)
 秘密裏に突発的にコソッと行うライブのこと。主に大物スターが都心の路上で行う宣伝ライブを指す。この語はどうやら和製英語のようで、普通の英語では「secret gig」などと言うらしい。類語:シークレット・ライブ。どちらにしても「秘密裏」のはずなのに、事務所が無粋にもホームページなどで告知したりするため、ゲリラライブに数千人ものファンが殺到することも珍しくない。これでは、思い切り本当のライブで10人も客が入らないアーティストの立場がない。自治体は、ぜひ大物スターのゲリラ禁止令を出してほしい。

けんこうてき【健康的】[形容動詞]
 身体的にも精神的にも正常である。お天道様の下、どこも悪かったりやましかったりするところがない。どこか退廃的なところがあるブルースやロックのような音楽の批評表現としては、あまり肯定的でない言葉。色気は、この状態に限ってお茶の間に流すことを許可される。

けんこうほけん【健康保険】[名詞]
 保険の一種。払っていない人にとっては、病気になった時、払っておけば良かったと後悔させるもの。払っている人にとっては、病気をしないと損をするという思想を生み出すもの。→保険。

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