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【く】

く【く】[動詞]
 「行く」の不可思議な省略形。→行く(A)。

くーる【クール】[形容動詞]
 英語の「cool」。
 @涼しい。冷たい。
 A(人が)冷静である。冷たい。
 B最近の語で、「かっこいい」を表す。例:「すげぇクールなバンド」。この語は、みんながかっこいいと感じるミュージシャンが、例外なくイヤミで無慈悲で無感動で人の好意を鼻でせせら笑う冷血漢であることを表している。

くずれ【〜くずれ】[接尾辞]
 元は動詞「崩れる」の名詞形。職業や身分を表す名詞に接尾し、その「なれの果て」とか「落ちぶれた者」であることを示すという、ちょっと性格の悪い語。そこそこの実績があるのに現在うだつの上がらない人を侮蔑するには最適の言葉だ。例:「歌手くずれ」「ミュージシャンくずれ」。人からこんな風に言われたらぐれるだろうな、と一瞬思ったのだが、よく考えたら私には、落ちぶれたと感じるに必要なほど過去の実績がないのだった。

くとうてん【句読点】[名詞]
 文を区切るための記号(句点と読点)。日本では句点に「。」、読点に「、」を付ける。戦前の資料などを見ると、句点に「.」を使っているものもある。これは、あくまで込み入った文章の読解を助けるため、近代に取り入れられた記号であるから、見出し語、人名・地名などの固有名詞、詩吟・俳諧の言葉などには使う必要がない。しかし、少し前のコピーライターブームあたりに端を発し、最近になって句点をその名に持つ某アイドルグループが登場して以来、句読点が本来不要な箇所(歌詞やアーティスト名など)にわんさか現れることになった。この表記の煩わしさは、大して給料の良くない印刷業界を直撃し、要らない写植の工数が増えた。人の思いつかないことをやりたいという目的は充分達成されたはずだから、最初にこのアイデアを出した人は、もうそろそろ文字表記のリストラ宣言を業界横断的に提案していただきたい。さもなくば、この手のわがまま表記には際限がない。例えば、洋楽ファンならご存じ「元プリンスだったアーティスト」を示す抽象記号のような、JISコードやユニコードでも表現できない芸名すら、既に現れつつある。

くびわ【首輪】[名詞]
 首に付ける輪。なぜか人間は古来より首が寂しかったようで、この手の装飾品は昔からあらゆる文化圏に普及している。英語ではネックレス(necklace 首紐)またはカラー(collar)などといい、グリコのオマケみたいなものがぶら下がっていたり、蝶のリボンが付いていたりする。犬の首輪は誰かに飼われている証拠だが、実は人間の場合もそうであるかも知れない。こざかしくも首輪をしている芸能人を見よ! そう言われると何となく、オシャレというより従順な下僕に見えるではないか。引っ張られたら、そっちの方について行きそうだ。

くらしっく【クラシック】[名詞]
 英語の「classic 古典音楽」。古いものなら何でもクラシックかというとそうでもなく、ヘンデルやバッハ以後、つまり中世よりは時代の新しいものを指す。現在の音楽の分類(classification)は、クラシック以後に始まったと言える。このあたりは「邦楽」と考え方が似ている(→邦楽)。さて、世のほとんどの自治体は、文化的音楽といえばクラシックを指すと思っているが、本来音楽とは全てが何らかの文化を表している。ヒップホップもデスメタルも軍艦マーチも文化的だ。クラシックと大衆音楽の違いは、古くはチケットの額に現れていた。比較的少人数で効率よく実現できる大衆音楽に比べ、クラシックは大編成のオーケストラを筆頭に経費が掛かることが多いからだ。しかしこの不況下では、チケット代を泣く泣く値引かなければ客が集まらないし、経費も払えない。例えばファミリーコンサートにしても、別にタダで子供たちに遊び場や居眠りの場を提供しているわけではない。そこで湯水のような自治体予算の登場となる訳だ。偉そうに見えて、結構クラシック演奏家の家計は厳しい。だから、今ではクラシック演奏家にも大衆感覚が求められている。ジャズやポップスもたしなむクラシック演奏家は、一方ではエンターテナーとして尊敬され、一方では色物に手を染めた堕落者として非難される。現代は近世よりは確かに文化的なのかも知れないが、貴族たちの支援がないままクラシック音楽をやり通すのは、かくも大変なことである。

くらぶ【クラブ】[名詞]
 →ディスコ。

くりえいたー【クリエイター】[名詞](補遺)
 英語の「creator 創造者」。書き方によっては神を表す言葉(造物主)にもなる。メディア関連の人がよく使いたがる語。「作曲家」「編曲家」「シンガーソングライター」「プロデューサー」「歌手」「演奏家」など、音楽制作に携わる人を表す言葉はいろいろあるが、「音楽クリエイター」という珍妙なる言葉が、これらを総称するような意味で現在用例を増やしつつある。しかし、和洋折衷の語法に疑問がある上に、一体彼が何者であるのか、要するに何ができる人なのか、この言葉だけではほとんどわからない。スタジオの片隅でワンコーラスに一回ドラをジャンと鳴らすだけの人も、一応クリエイターの一員である事に違いはない。なお、クリエイターが作った物は「クリーチャー creature 創造物」といい、場合によっては口にするのもおぞましいとんでもないモノを表すこともあるらしいから、一応注意しよう。

くる【来る】[動詞](補遺)
 @(『大辞林 第二版』の記述を要約すると)何かが、話し手のいる方または何かの基準点に接近すること。転じて、何らかの感動や感銘を受けるに至ることを表す場合もある。例:「あいつのギターソロ、上手いんだけど、なんか来ないんだよな」「ああ、来ねえな」。また、性の絶頂を迎えつつあることをこう表現することもあるが、この場合は行くんだか来るんだか止めるんだか続けるんだか、どうもはっきりしない。
 A(補助動詞として)何かが進行することを表す。言うまでもないが、進行するものは良いものとは限らない。例:「いい音楽だけど、眠たくなってきた」「誰もお客が来なくて、空しくなってきた」「忘れていた請求書が出てきた」。

ぐるーぷさうんず【グループサウンズ】[名詞]
 日本で主に1960年代に流行したバンド形式のロック音楽。略称GS。しかし英語圏の人に「group sounds」と言っても話が通じない。→ロック。

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