【ま】
ま【真】[名詞/接頭辞](補遺)
強意の副詞的接頭辞。名詞や形容詞、形容動詞に接頭し、その意味を強調する働きを持つ。「本当に」「まさしく」「純粋に」などと意訳できる。例:「真夏の太陽」「真っ白なドレス」。この例では、「夏の太陽」「白いドレス」としても意味は十分通じるし、逆にどのくらい純粋なら「真」が付くのか、その基準は非常にあいまいなのだが、歌詞の世界では何事もかっこよくオーバーに表現される。まいく【マイク】[名詞]
英語の「microphone マイクロホン」の略語。音を電気信号に換える素晴らしい装置。その換え方によっていろんな種類がある。例えば、カラオケやライブ会場で使うようなマイクはだいたいダイナミック型で、ちょっと落としても全然平気。その名の通りものすごく迫力のある音が出る、という訳ではない。電池を入れたり電源を入れないと音が出ないマイクはコンデンサ型。ダイナミック型よりダイナミック・レンジが広いので、本来はこちらが「ダイナミック型」と名乗る資格があると思うが、電気が切れたら音が出ないし、思いのほか壊れやすいというひ弱な面がある。私はこいつが壊れる瞬間を一度でいいから見てみたい。しかし、どちらにしても最近のアコースティック・ギタリストは9割方ピックアップを使うので、歴史を作った素晴らしきマイクたちはライブハウスの物置の中でガッカリしている。まいくあれんじ【マイクアレンジ】[名詞]
マイクの位置を調整すること。ブルーグラスの演奏者は、楽器をとっかえひっかえ交換したり立ち位置をコロコロ変更するので、マイクアレンジをしている時間が他のジャンルの人より長い。ステージにおける生ギターのマイクアレンジはやっかいで、PAさんはハウリングのみならず、ギタリストの気まぐれとも戦わなければならない。せっかく調整した位置が、ステージ替えでメチャメチャにならないように、マイクスタンドの立つ床にテーピングする手法がよく採られるが、ギタリストはその位置に窮屈さを感じ、自ら身をよじってしぶとく抵抗する。キミ、そんなに嫌ならピックアップにしたら?まえむき【前向き】[名詞/形容動詞](補遺)
『大辞林 第二版』によると「@前の方を向くこと。(略)A考え方や取り組み方が積極的・建設的である・こと(さま)(略)」。対語:後ろ向き。普通によく使うホメ言葉の一つ。例:「彼の前向きなメッセージは人の心を打つ」「常に前向きな生き方」。この語を冷静に見つめ直すと、要するに首が前を向いていることだけを表すので、クマから逃げるときのように正面を向いたまま撤退する場合にも問題なく適用できる。言ってることは前向きなのに、いつまで経ってもさしたる成果を挙げられない人は、首よりも足をもっと動かすべし。まけない【負けない】[動詞+否定辞]
勝負に勝ち続けること。ダメになったりヤケになったりしないこと。励まし系の使うキャッチコピーの一つ。例:「自分に負けない強さが欲しい」「オレは絶対に負けない」。彼らが一体どこまで本気で励ましてくれているのか、問い詰めても得るものは少ないだろう。よく失敗から学べと言うが、世の中には何回か負けないと悟ることのできないものもある。何度やっても何かに負け続け、仕方ないからあきらめて、一人寂しくやけ酒の一杯でも飲もう、などという失敗の快楽がわからないヤツは、人間としてまだまだ経験が足りない。あの神聖ローマ帝国やスペインの無敵艦隊ですら、負けるときは盛大に負けたのだから、あんまり片意地を張らない方がいい。→あきらめない。まっく【マック】[名詞]
@某ハンバーガーチェーン店の略称。
Aアップル社のパソコン「Macintosh」の略称(Mac)。しばしばマイクロソフト社のOS「Windows」を搭載したDOS/Vパソコンと対比される。その直感的なインターフェースから、デザイナーや芸術家、さらにミュージシャンにマックの利用者が多いことは有名だが、だからといってWindowsユーザーに芸術センスがないと即断することには疑問を呈したい。エッチなページを検索するという密かな目的を目立たなくするために、芸術家ぶって無理にマックを選択するのはもっと疑問である。まもる【守る/護る】[動詞](補遺)
他者の身の安全を図る。安全を保障する。保証された安全も、保証されない危険を完全に遠ざける訳ではない。この言葉は時に「攻めよう」「覇権を得よう」とする邪心の裏返しだったりすることが、国家のレベルで歴史的に繰り返し証明されてきた。この語がモラトリアムだった対立構造をわざわざ鮮明にして、結果的に新たな火種を生むこともある。さて、現代のようにじわじわ治安が悪化している時代においては、この語は求愛の言葉としても頻繁に使われるようになる。私は諸外国の歌に特に詳しいわけではないが、とりわけJ−POPの歌の文句として、異常なほどたくさん出てくる。例:「キミを守ってあげるから」。作詞者は、治安当局がよっぽど信用できないのだろう。もしくは、この言葉の世界では、求愛の時にだけ架空の侵略戦争が勃発するのである。他の異性から守られていると感じることで、自分が宝物になったような良い気分になるということも、この語が未だ求愛の効力を失わない理由だろう。でも、そうしてゴールインした彼らの生活の実体を、私の知る実例から個別に精査すると、被庇護者に多大な迷惑を掛けてきたのは、むしろ当の庇護者だという残念な結論に達することもある。まやく【麻薬】[名詞]
本来はモルヒネのような医薬品の一種だが、医師が適切な処方で慎重に使うという場合を除き、人の精神に深刻な影響を与えてしまう危険な薬でもある。俗にヤクともいう。ミュージシャンと麻薬の伝説は、あんまりおもしろがって聞くものではない。彼らは知らない世界を見てきたとか、耐えがたきを耐えて克服したなどと自慢して、ちょっと図に乗っているのだ。タバコに含まれるニコチンの方が毒性が強いなどと屁理屈をいう人は、とりあえず喫煙席で大きく深呼吸してもらおう。→大麻。まゆげ【眉毛】[名詞]
眉に生えている毛。最近では、眉に描き込んだ線のこともこう言うらしい。お年寄りは眉をひそめているはずだ。特に、テレビの時代劇に描き込み眉毛の女優さんが出演していると、私はそのたびに江戸時代の余りに巧みなお化粧技術について疑問を抱く。もし著名ミュージシャンやテレビ俳優を対象にして眉毛のカット率を調査すれば、非常に面白い結果になるだろうが、とてつもない数になりそうだから労力がもったいない。調査対象は、甲子園の高校球児あたりに限定してもいい。まんどりん【マンドリン】[名詞]
英語で「mandolin」。イタリアで盛んになった、4コース8弦からなる比較的小さな撥弦楽器で、チューニングは擦弦楽器のバイオリンと同じ。今は、ほとんどピック(プレクトラム)で弾くことを前提としている。奏者はマンドリニストという。体の大きな外国人の太い指が、このチマチマした指板を押さえられることに、いつも感心する。クラシックなマンドリンの胴体は板を組んで作ったもので深く丸いが、比較的近年登場した(ブルーグラスなどでよく使われる)フラット・マンドリンの胴体は薄くて平らである。どちらの愛好家もどちらか一方をよく思っておらず、「あんなタマネギみたいなの弾きたくない」とか「薄っぺらなやつらめ、こんなのマンドリンじゃない」とか、互いの悪口を言い合い続けて長い歴史が推移している。彼らの和解の日は遠い。