【ね】
ねたむ【妬む】[動詞]
(人をうらやましいと思って)悔しがる。憎む。嫉妬する。人間、きれい事を言ってはいても、人の成功は誰でもねたましいものだが、かの『悪魔の辞典』には次のような解釈がある。「嫉妬 名 能なしに一番適した競争心」。まさに詩的で含蓄に富む名句である。ミュージシャンも聖人君子ではない。「同業者である彼があんなに評価されたのに、私が不遇なのは不当な扱いだ」と嘆く人は多かろう。そうなってしまった理由は、実は本人が想像する以上にいっぱいあるのだが、可哀想な「私」には、努力はしたという自負ゆえにそれが見えないだけなのである。能なしと言われたくなければ、黙って練習するしかない。ねっと【ネット】[名詞]
@英語の「net 網」。通常の「網」の他、何かの被害をこうむった人や法人に対する手広い救済措置のことを言うこともある。例:「セイフティー・ネット」。趣旨はいいが、英語で言われるとどうも胡散臭さが抜けない。
A英語の「internet インターネット」の略語。インターを言うのすら面倒くさいのだ。ねんきん【年金】[名詞]
国を信頼して毎月払う、老後の蓄え。昔、天引きされている人にはそういう実感がなかった。今ではみんなが国を信頼していないので、不平不満の格好のネタになっている。みんないいたいことを言えずに我慢しているので、話題につまったときには、この話を持ち出すとしばらく盛り上がる。一方売れないミュージシャンは、
1.やはり国を信頼していないし、政策に関する文句が山ほどある。
2.毎月の定期収入がない、またはありつきにくい。
3.今の自分が楽しければそれでいい。
4.っていうか制度もよく知らない。
5.減免申請すら面倒くさい。
という学生アルバイトみたいな人が多いので、あたかも当然の権利のように堂々と、自分が払っていないことを友人に披瀝したりする。彼らには、年金で生活する親や祖父母に孝行しようという気持ちがこれっぽっちもない。ねんきん【年金】[名詞](別定義)(補遺)
毎年払い忘れることができ、また敢えて払うことを拒絶しようと思えばできる不思議な社会保障制度の金。現状では、払い忘れた金を過去二年以前に遡って払い戻すことはできない。他人が未納であれば辛辣なバッシングの対象になるが、自分が未納であれば他人にも寛容になることが許される。つまり自分と同じ不正者の数が問題なのだ。この際、一部の著名人のみならず、全国民の加入状況を公表してもらいたい。政治家、メディア関連の業界人、そしてミュージシャンの年金未払い率は、おそらく世間様に公表するのが恥ずかしいものとなるだろう。制度の不備がどうの、プライバシーの侵害がどうのと怒る前に、まず自らの不正を恥じて悔い改めよ。ねんしゅう【年収】[名詞](補遺)
一年間に得た収入。たいていの貧乏ミュージシャンには、これを尋ねることはタブーだと思ってほしい。しかしどうやら一般の人も、言われるまでもなくそう思っているらしく、うっかり尋ねてしまった後で「あっ、聞いちゃいけなかったですか?」と中途半端に気を利かせてくれることがある。こういう人は、むしろ鈍感より始末に負えない。