【に】
にじ【虹】[名詞](補遺)
『大辞林 第二版』によると「夕立のあとなど、太陽と反対側の空に弧状にかかる七色の帯。空中の水滴粒子にあたった光の屈折と分光によって生じる」という。つまり単なる光のマジックショーのようなものだが、見た目のきれいさから、夢や希望、「心の架け橋」といったものの象徴として、歌詞の世界などでもよく使われているのはご承知の通り。これのおかげでプロポーズが成功したという芸能人の方もいらっしゃるそうだ。しかしこのように虹をきれいなものと捉えるようになったのは割と最近の思想で、昔、虹は蛇と同一視されるほど毛嫌いされていたらしい。例えば『アイヌ語千歳方言辞典』によると「(虹は)不吉なものとされ、指差すと指が腐るといわれる。また非常に臭いものであり、その匂いで人も殺すといわれる」とあり、日本の民間伝承などにも同種のものがある。「指が腐る」とはまた実に激烈な嫌われようであるが、少なくとも、正体がよくわからないものを信用せず警戒するという気持ちは理解したいところである。もし、誰かさんの口から急に「虹」のような美辞麗句が出てきたら、その人の言葉を一応警戒してみるのが妥当だろう。彼の伝えたいことが、つまり単なる言葉のマジックショーみたいなものかも知れないので。にっぽん【日本】[固有名詞]
東アジアの一国。日本国。我が祖国。日本の伝統文化は、明治維新以後、国策として猛烈な勢いで進めた西洋化の波に抗しきれず、どんどん担い手が減っていった。現代では、羽織袴や着物を着るのは一生の間に何度も機会がないほど珍しいことになってしまった。音楽も例外ではなく、今では伝統的な日本音楽(邦楽)を聴く機会はあまりない。この反動からか、不思議なことに、昔さんざん西洋文化の素晴らしさに没入していた日本人アーティストが、年を取るごとに日本の伝統的な良さに目覚め、現在の文化の状況を嘆き、逆に西洋文化のダメさ加減を若者達に説いたりすることがある。アンタに言われたくないね、と多くの若者は思うことだろう。そもそもあらゆる文化は、さまざまな国の文化との相互交流によって育てられた今の生活そのものである、という視点を持たなければならない。例えば音楽だけが日常の生活から独立して、伝統に回帰するなどということはあり得ない。今の生活に合った、新しい文化、新しい音楽が生まれていくのは当然である。文化的独立(孤立)や純血主義に陥りやすい思考パターンのことを「島国根性」とも言うが、これは先人が生み出した、含蓄ある自戒の言葉である。これからは、どんどん外からの影響を取り入れた、もの凄く奇妙な和洋折衷の作品を「これが新しい日本の文化だ」と押し通すカリスマが必要になるだろう。我が愛する日本。その行く末はなかなか見えない。私を含めて変に頑固な奴が多すぎるのかも知れないし、そういう意味では明治維新が未だに続いているのかも知れない。にほんご【日本語】[名詞](補遺)
『大辞林 第二版』によると「古来日本民族が用いてきた言語で、日本国の公用語。北海道から沖縄までの島々にわたり、一億余の人々に使用されている(以下略)」。この言語は、もともとの純粋な和語が一体どういうものだったのかがよくわからなくなるくらい、古来から外来語を積極的に取り入れてきた。これは歴史的な事実である。ここまで私が書いた文の中に中国起源の語彙がいくつ混じっているか考えただけでも恐ろしいことで、つまり、かの悪名高きJ−POPの作詞家もお構いなし、無罪放免と言うことになる。中国からはいいのに、欧米から言葉を借りるのが何でいかんとや?ということである。しかし、言葉というものは意志伝達の手段のはずなのだが、こいつらの使う日本語ときたらまあ、何回聴いてもまるで四次元殺法みたいに意味が通じない。上代の言霊たちは目を回して、どこか日の沈む国の方に逃げてしまいましたとさ。にゅーえいじ【ニューエイジ】[名詞](補遺)
英語の「New Age 新しい年代」。『大辞林 第二版』によると以下の通り。「新時代主義者 ((60年代後半のヒッピー世代から派生し,超自然の瞑想派から80年代の環境保護派,菜食主義者までを含む))」。日本語で言えば「新人類」(現在はほとんど死語)という言葉が最も近いが、完全に一致はしない。ニューエイジの本質を突く最も大きな特徴は「癒し」であり、つまり無個性と非主張と低脂肪であり、他者に対する淡泊さや差し障りの無さである。音楽に適用される際は「環境音楽」「癒し系」を指すことが多く、この特徴を裏付けている。常識的な人生を全うしつつあるご年配が、自分たちには理解できないものにこだわる、非快楽主義的な若者たちの文化を定義するための、最も差し障りのない呼称。一方、快楽主義的な若者たちの文化(ロックやヒップホップなど)は、担い手の若い年齢にも関わらず、ニューエイジとは全く認めてもらえない。いつの世でも普通の若者たちは快楽主義的なので、特に新しいとは言えないのだ。にゅーじゃず【ニュー・ジャズ】[名詞]
主にヒップホップを取り入れたジャズ。または主にジャズを取り入れたヒップホップ。しかし、このジャズという音楽、今までさんざんいろんな音楽を取り込んでおいて、ヒップホップを加えたら急に新しくなるというものでもないだろうに。