【の】
のうぜい【納税】[名詞]
国に税金を納めること。対語:脱税。長者番付の上位を占める人たちは、国の税金の使い道について、まるで皇室関係者のようにおごそかな口調で一言注文を付ける。例:「意義のあるところで有効に使われることを希望します」。最近は、(芸能レポーターの質問が意地悪という事もあるが)ミュージシャンにもこういう発言が目立つ。昔から派手な脱税事件の絶えないメディア業界側の人間は、国税庁からかなり睨まれているから、あんまりいい気になって使い道にまで口を出さない方がいい。次回の取り立てが、担当者のちょっとした気分のせいできつくなる。のうひん【納品】[名詞]
労働や仕事の成果物もしくは収穫物である品物を、依頼先に納めること。ほとんどの場合、「納品書」と呼ばれる伝票を「請求書」とともに付ける。本来、この語の対象となる物は、箱に入るような「モノ」でなければならない。手工を凝らした木彫りの盆や漆器を殿様に献上するという、水戸黄門でもおなじみのあのシーンを思い出していただきたい。しかし、現在の音楽業界や印刷業界などでは、「情報」を渡す際にもこの語が使われる。例えば、DTPの版下ファイルの入ったMOディスクや完パケテイクの入ったマスターテープ、そしてこともあろうに手書きの原稿なども対象になっている。例:「版下のファイルを明日までに納品します」。そのように使っている人たちは気付かないかも知れないが、実は一般人にとってちょっと奇妙な言葉遣いなので、専門用語としてここに掲げる次第である。心理学的には、オレはこんなにがんばったんだという事を暗に強調する、一種のディスプレーだと思われる。のーぎゃら【ノーギャラ】[名詞]
無理矢理な和製英語で、報酬(=ギャラ)のないことを指す悲劇的な言葉。できれば誰の口からも聞きたくない単語だ。給料がもらえないのをわかっていて仕事をする人は、普通いない。よって、プロのミュージシャンがノーギャラで仕事を受ける条件は、本来とても限られている。まずチャリティーやボランティアなど、自らに何か宣伝効果などの見返りがあるような場合。実際は、チャリティーの一つや二つやっても罰が当たらないほど金銭的に余裕のあるミュージシャンが行う。意外にも、お祭りなどの比較的大規模なイベントも、最近は予算がないのか「ギャラ出ないんだけど、いっぱい人が見に来るから、ちょっと出てみない?」と催し物の宣伝効果を挙げて誘われたりすることがある。換言すると「お前は無名なんだからオレんところで宣伝しろ!」というのと同じ意味で、ひどく安く見られているわけだ。場合にもよるが、プロであれば「おととい来い!」と言いたいのを我慢するのは体に良くない。次に、ミュージシャンが仕事の依頼者と知り合いだったりして、友情や義理といった精神的絆によって行われる場合もある。これはまあ良くある話。結婚式や個展・同好会・発表会などでの友情出演という形が多い。記念行事であれば、鉛筆くらいはいただけると思う。お店のマスターと知り合いである場合は、ビールくらいにはありつけるだろう。こんな話は確かに美しいが、でも頻繁には無い方がいい。ミュージシャンを完全犯罪にて殺す気ならば、ノーギャラの仕事をたくさん持っていけばやがて自然死するだろう。→ギャラ。のーとぱそこん【ノートパソコン】[名詞]
携帯用のパソコン。英語では「notebook PC」。といっても、1980年代後半に日本のメーカーが市場を開拓した。昔はノートといえるまで薄く作るのは難しかった。代わりにラップトップ(膝の上)パソコンというものがあったが、これはかなり大きくて重たかったので、ラップクラッシュ(膝を壊す)などと陰口を叩かれた。持ち運びがたやすいノートパソコンは、特に打ち込み系の音楽家にとって、なくてはならない道具である。私も利点は確かに認めていて、ライブ録音をノートパソコンでやったりしている。しかし、交通機関で移動中にもこいつを開いて「仕事」をしている奴を見ると、どうも首をひねってしまう。ひょっとして彼は、新しく買ったご自慢のパソコンを、人に見せびらかしたいのかも知れない。だいたい、仕事の時間中に仕事が終わらなかったというのは、あまり誉められたものではない。どうせ電車の中では大したことなどできないのだから、移動中は移動に専念した方がいい。のどうた【喉歌】[名詞]
喉で声を共鳴させて高い倍音を作り出す歌い方、またその歌を指す。モンゴルの喉歌が有名。名手の喉歌は、倍音が口笛のように大きく聞こえ、人間の声とは思えないような、とても神秘的な風情がある。一方、歌い慣れない人は、喉歌をやろうとしてもなかなか倍音が出ず、酔っぱらいが飲み仲間を威嚇しているようにしか聞こえない。日本では喉歌を歌える人がそう多くないためか、何と打ち込み音楽用の喉歌音源が発売されているらしい。何でもかんでも、機械でお手軽に取り入れてしまうのはいかがなものか。のめりこむ【のめり込む】[動詞]
→入り込む。のる【乗る(ノる)】[動詞]
@(何かの)上になる。のっかる。例:「馬に乗る」。
A(車などの乗り物の)中に入る。例:「乗るなら呑むな」。
B(儲け話などに)参加する。例:「その話、乗った」。
C調子に乗る。例:「今日はちょっと気乗りしないな」。
D(心が音楽のリズムに合わせて)楽しくなる。例:「アイツ、ノリノリだね」。リズムに乗ることは、音楽鑑賞の醍醐味の一つだが、紳士淑女がクラシックでひざを揺らすのははしたないことだと思われていて、彼らの足踏みなんて一度も聞いたことがない。私が観客に言いたいことはただ一つ。「呑んでもいいからノってくれ」!
Eちょっと恥ずかしくて言いにくいのだが、乗る(@)から転じて、「(誰かと)性行する」ことを表す暗喩となる。例:「こんな夜にオマエにノれない......」。この場合、別にナイターで乗馬してみたいなどとダダをこねてるワケではない。