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【ぬ】

ぬく【抜く】[動詞]
 いろいろな意味があるが、音楽演奏の世界では「力を抜く」ことを指す事が多い。実は高等技術。パワー全開のプレイばかりでは抑揚が付かないので、要所で抜いて要所で決めることが重要。作・編曲そのものについても言える。これは音波に限らず、電波、思考波、体力、バイオリズムなどあらゆる波について言えるコントロールである。音楽の抑揚は、時に性的な快感の波(オーガズム)になぞらえて説明されることもあるし、力以外に抜くものがあるんじゃないかと勘ぐる人もいるが、そういうことを言うからミュージシャンがみんなスケベな人みたいに思われてしまうので、迷惑だ。

ぬくもり【温もり】[動名詞](補遺)
 「ぬくもる(ぬくまる)」の名詞形で、要するに暖かみのことなのだが、多くの用例では単なる「暖かみ」よりも限定的に使われる。つまり、寝具や懐、肌といった、相手との愛情や親密度の高さを物語るものの暖かさを表す事が多いのだ。歌詞の世界でも、「人のぬくもり」「言葉のぬくもり」など、人のやさしさや善意を表す用例が多い。どちらにしても、燃え上がるほど熱くはなく、さりとて冷め切ってもいないという、ある種微妙でモラトリアムな温度と思われる。この語のちょっともたついたような印象からは、結局いつかはこの温度が冷めてしまうというネガティブな予測も可能である。我が友人の覆面シンガー氏によると、あくまで彼の基準でいえば、この語は「使いたくない言葉」のかなり上位にランクされているという。

ぬすむ【盗む】[動詞]
 @(了解を得ずに人のものを)奪う。万が一了解を得たとしても、人妻の誘惑や汚職の利権には手を出さないのが常識。そんなことをしたら、盗みにはならないが別の罪状に変わるだけだ。人の了解さえ得れば汚い行為が正当化される訳ではない。
 A(芸事などにおいて、黙って達人の技を)真似する。この意味における盗みは、多くの場合むしろ奨励すべき事となる。習うより馴れろ、教わるより盗め。この格言は、教える才能がない指導者の言い訳に聞こえるけど。→パクる。

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