【た】
たいじゅう【体重】[名詞]
体の重さ。目方。ミュージシャンは、中肉中背が最もよくなく、細身かまたは正反対にまるまると太っている方がよい。スマートでかっこいいのがよいのは言うまでもないし、太っていれば体重や減量がらみの話で、MCのネタに困らない。たいとる【タイトル】[名詞]
英語の「title 題名」。CDの「ジャケ買い」と同じく、曲についても「タイトル買い」という消費性向があり、よいタイトルをつけることで、曲を実際に聴いていなくても買いたい気持ちにさせられてしまうことがある。しかも最近は、超有名曲(たとえばビートルズの曲など)とほとんど同じようなタイトルにして、カラオケ店で検索間違いに引っかかるのを待ち構えるコバンザメのような曲もある。題名を借りるだけなら、著作権の侵害にならないらしいから、私もアノ曲から題名だけ拝借してあやかりたいものだ。たいばん【対バン】[名詞]
複数のバンドが出演するライブ形式のこと。いわゆるオムニバス。また、出演するバンド同士もそう呼び合う。例:「今日の対バン、ひでぇな」「あれなら(ウチが)勝ってるな」。何の略かいまいち不明で、「バンド対決」なら言葉の順番が合わない。「対決バンド天国」みたいな感じだろうか。しかし、お目当てのバンドの出番が終わったらさっさと帰ってしまう客が多いため、実際は地獄のような屈辱を味わう場でもある。たいま【大麻】[名詞]
麻薬の一種。やったことはないのでよくわからないが、シンナー<大麻<覚醒剤<トリカブトの順に人生が悪化するらしい。ミュージシャンが大麻や覚醒剤で逮捕されるニュースは、もう聞き飽きたと感じる人が多い。これが公務員なら一発で免職。職場復帰なんてとんでもない。あまりにも多くの芸能人がヤクをやっては身を持ち崩し、ファンの熱い声援を受けて涙の復活を遂げたりするため、それほど悪い事だとは感じていない人もいるのは困ったものだ。なんて浮き世離れした文化人たちなのだろう。あまり彼らを甘やかすものではない。薬の犯罪は、性犯罪と同じく再犯率が高いので要注意だ。これで得ることができたという「新しいアート感覚や創造性」は、外から冷静な目で検証するとまるで大したことなく、ただの支離滅裂状態に他ならない。こんなものより、一般常識の足りない頭にビタミン注射でも打っておけ。たたきけい【叩き系】[名詞]
主にアコースティック・ギターを手で叩く奏法を好む人、またはその奏法一般を指す。フラメンコにも似た奏法があるようだが、ここでは鉄弦のフラットトップ・ギターを使う場合に限定したい。ライトハンド奏法やハンマリング/プリング奏法などを伴うことが多い。マイケル・ヘッジスという今は亡きアメリカの天才ギタリストが、この奏法を一部の曲に効果的に使って一世を風靡したのを受け、しばらくの間に日本にも導入された。弦を叩くタッピング、ギター本体やネックを叩くヒッティングという、大別すると二種類のテクニックがある。というか、それ以外に叩ける箇所は糸巻きくらいしかない。本来のギターは音色を重視する撥弦楽器なのだが、この奏法ではギターは怪しげな打楽器に変貌する。打楽器としてのギターはかなり身勝手かつ暴力的で、勝手気ままにリズムを取ったり取らなかったり、叩いた瞬間だけやけにうるさかったりするので、よほどうまくやらないとどうにも落ち着かない。歌うようなメロディーを犠牲にして、美しかるべきギターの音色を省みず、愛すべき自分のギターを割れるまで叩くなんて、ああ恐ろしや。たち【〜達】[接尾辞]
人間、または擬人化された動物などの複数を表す接尾辞。『大辞林 第二版』によると次の通り。「名詞・代名詞に付いて、それらが複数であることを表す。(中略)〔古くは敬意を含み、神や貴人にだけ付いた。現在では「ども」「ら」のような見下した感じはないが、「かた」ほどの敬意はなく、普通、尊敬すべき人にはつけない〕(後略)」。畏れながら申し上げるが、この説明には二点の不備がある。まず一点目は、この接尾辞は「尊敬すべき人にはつけない」という、まさにケンモホロロの一言である。もしその他大勢を十把ひとからげにして「達」を付けて称したら、彼らはみんな尊敬に値しない人間だとでもいうのだろうか。いや、少なくともその内の一人くらいはまあまあ尊敬してもいい人物かも知れないのだ。そしてもう一点の不備は、あらゆる名詞や代名詞が、どんな場合でも「達」の接尾を許容するのか、という点が記されていないことである。この接尾辞は、基本的には人間の複数を表すものだから、「恋人達」はOK、「消防士達」もOK、「鳥達」「ライオン達」などは動物への親しみを以て擬人化すればOK、「ギター達」もギターを無理矢理擬人化すればまあOKだろう。しかし、今時の流行歌でよく耳にする擬人化用法は、ちょっとヒドイ。例えば「風達」、「想い達」、「恋達」、「光達」、「心達」...。断じて許すことのできない間違いばかりである。擬人化すれば良いったって、いくら何でも限度というものがある。私が許せる擬人化のレベルは、せいぜい「さよなら涙クン」あたりまでだ。動物では飽きたらず、空気やエーテルや抽象概念など、目に見えないものまで擬人化して複数形にするとはこれ如何に。こんな陳腐な、森羅万象の実状に合わない修辞ばかりしているから、詩人や作詞家たちの文学センスはどんどん一般人と乖離していくのだ。この件達に関して疑問達のある人達から、私はお手紙達をいただきたい、ってやっぱり変だろ。たばこ【タバコ/煙草】[名詞]
@煙草。植物の一種。
Aタバコ(@)の葉を細かく刻んで、小さい巻紙にくるんだりキセルに詰めたりしたもの。今のタバコは、吸い口にフィルターが付いているものが多い。タバコの先端に火をつけて出てくる煙を吸う(飲む)とやがてガンになるらしいが、それと引き替えに得られるものは、せいぜい眠気覚ましと適度な吐き気くらいだ。江戸時代の民は、何か天晴れな行いの褒美として、お上から米などと共によくタバコの束を賜ったものだが、そんな誉れ高い品物が今では社会悪の代名詞の一つにまでなっている。嫌煙家たちのご機嫌を損ねないように、飲み屋さんもライブハウスも灰皿を置こうかどうしようかちょっと悩むところだ。しかしライブ・アーティストは、自分が吸う吸わないはともかく、常にどっちの肩も持てる日和見主義者でいる方がよい。会場では分煙なんて無理だし、ただでさえ客にそっぽを向かれそうなのに、この上取るに足らないトラブルで収入を減らすわけにはいかないのだ。→ジャズ。たび【旅】[名詞]
@しばらくの期間、何かの目的があって遠方へ行くこと。計画・企画力を養い、異世界への見聞を広め、目的を達成する充実感も味わえるという、人生の醍醐味の一つ。というか、人生も大いなる旅の途中である。
Aしばらくの期間、何の目的もなく遠方へ行くこと。煩わしい日常がイヤで逃げ出すこと。たまには誰でもやる。学生フォークシンガーやヒッチハイカー、また映画の格好の題材。映画に至っては「ロード・ムービー」なる分野まであるが、これには旅(@)の場合もある。しかし、多くの歌手の歌では、たいてい目的を決めないこと、ブラブラすること、何かから逃げること、どこの馬の骨とも知れないうさんくさい人たちと出会ったり別れたりすることが奨励される。歌手本人たちがいかに真剣で神聖な旅の想い出を歌っていても、「旅を美化する歌」は無責任な性善説を広めやすい。特別な環境に身を置かないと自らの人間性を発揮できない人は、多分住所が落ち着いてから日常生活に困ることだろう。目的を決めない人生を美化して歌い上げるのは、不退転の決意で日常を送る一般人にとって感情移入しにくく、癒し系的な意味しかない。こういう歌がやたらに多いから、ミュージシャンは浮き世離れしてるなどと陰口を言われるのだ。
B何となく近場に行って日帰りすること。通常は「旅」の範疇から外れるのだが、不景気が長引いているため、最近の旅行代理店ではこちらも旅と称している。軽薄短小もついにここまで来た。たぶふ【TAB譜】[名詞]
英語の「tablature タブラチュア」の略語+α。音楽そのものではなく、運指やフレット数などといった演奏情報を文字や数字で表したもの。現代ではギターのTAB譜が最も浸透している。あれだけ頑固にTAB譜を拒否していたクラシック・ギター界も、最近の消費者動向には勝てず、これをしぶしぶ楽譜に導入し始めている。特にオープン・チューニングや同音異弦の多いソロ・ギターにはピッタリの表記方法で、少なくともあのわかりづらいギター用の運指記号よりはよっぽどマシだと思うのだが。だぶるすとっぷ【ダブル・ストップ】[名詞]
英語の「double-stop」で、バイオリンのような擦弦楽器で重音を出す(二本の弦を押さえて同時に鳴らす)こと。ストップといっても、別に演奏をやめてしまうわけではなく、英語では弦を指で押さえることも言う。つまり本当は「二重に押さえる」という意味なのだ。バイオリンにおいては一応特殊奏法の扱いだが、カントリー・フィドルにおいてはよくある技巧というか、アメリカ人は弓を握った右手の力があり余っているらしく、自然に二つの弦を鳴らしてしまうらしい。だぶるぶっきんぐ【ダブル・ブッキング】[名詞]
英語の「double-booking 二重に予約を受けること」。ミュージシャンの場合は、もっぱらライブの予定を同じ日・同じ時間に二カ所入れてしまう事を指す。もちろんこうならないために、日頃のスケジュール管理はきちんと行わなければならない。しかし、私のように、管理するほど多くのスケジュールが入らない人に限って、たまたま入ったスケジュールが何かとかぶってしまう。こうやって、人は死ぬまで自分のスケジュールで苦労するのである。逆にお店から見た場合は、同じ日時に二人のアーティストからライブの予定を受けること。その際は先着順で決めるのが原則だと思うが、オムニバスライブにしてしまう裏技もあるから、出演者ほど困ったことにはならない。たましい【魂】[名詞]
生命の本質を指す抽象名詞。人間だけでなく、本来は全ての生命に宿るもの。例:「一寸の虫にも五分の魂」。死んだ人の魂は霊魂とも言う。男の場合は特に男魂(だんこん)とも言う(言わないことの方が多いが)。魂は、「心」や「精神」と場合によっては同義として扱われることもある。例:「魂のこもった一打だ」。しかし心や精神と決定的に違うのは、その人にとって唯一無二のもので(たとえ出来が悪くても)替えられないし、良くしたり悪くしたりもできないことだ。ものを考える身体器官が脳であることは明白だが、魂はなぜか心臓に宿るとされる。ただしこれについては、臓器移植に関係する人たちから異論が出ることだろう。一方、ミュージシャンは、この世界で最も神秘的な言葉を畏れ多くも軽々しく用いて、自分の無芸無策ぶりを隠蔽しようとする傾向がある。例:「この魂の叫びを聴いて欲しい」「これこそ魂のプレイ(演奏)だ」。しかも、他者の魂が自分にも宿ると主張したりする。例:「ジョンの魂はオレの中で生きている」。しかし、ジョージ・ハリスン風に言うならば、魂は生きない。それは生命そのものなのだ。だめだし【ダメ出し】[名詞]
仕事の依頼者や上司などの監督者が、仕事人に「やり直しだ」と伝えること。「ダメと書いた紙を差し出す」という文を無理に名詞にして略したらしく、美しかるべき本来の日本語とは思えない。蛇足だが、「ダメ押し」は「ダメと書いた紙を押しつける」というのが語源かも。以前は「リテイク」という英語の方が多く使われていたが、こちらの方が「何だかキミ、全然なってないよ」と冷たく切り捨てる印象が強いので、プロデューサーの心がよりスカッとする。