【ヴ】
う゛【ヴ】[文字]
外来語の[v]の発音を表すという奇妙なカナ文字。「う」に濁点を付けるという反則技を使っているので「う」の次の項目としたが、普通の日本語の発音には[b]と[v]の区別がないので、元々無理がある。パソコン入力では、ひらがなの「う」を濁音化することができないことからも、これが外来語専用のカナ文字であることがわかる。「ヴ」に拗音(ねじれる音)の表現を加えて、「ヴァ」「ヴィ」「ヴ」「ヴェ」「ヴォ」と表すが、本来は「バ」行がこれに当たる。この本では、意味に支障がない限りは「ヴァ」行を「バ」行の表記にしている(凡例を参照のこと)。私は子供の頃、スペクトルマンの故郷であるネヴュラ星の読み方がわからなくて困ったものだ。洋楽の曲名を「サヴァイヴァー」とか、「ラヴィング・ユー」とか書いても、普通の人にはやかましく思われることが多い。発音に正確を期すつもりで、リビングのことをリヴィング、ボーカルのことをヴォーカルなどと言ったりするのなら、コンピューターのことはカンピュートゥと言った方が元の発音に近くなるし、テレビのことはテレヴィ、じゃないティーヴィー、ワゴンのことはウェガン、チョコボールのことはチョコバゥゥゥルなどと言わねばならない。和製英語のミシンとかホームランを、ヴの使用者はいちいち本場の正式な語に置き換えるだろうか。否。そもそも発音の違う外来語の完全なる表記は、カナではほとんど無理なのだ。いくら字体に凝ってもそれなりに近くなると言うだけで、元の発音とは当然ながら乖離があるし、日本語にない外来語の発音はヴの他にもいっぱいある。しかも、本当はバ行の語をついヴァ行にしてしまうという、困った誤植も多い。中途半端な西洋かぶれたちが通ぶって「ヴ」を乱用するのを、私は文字通りヴァカじゃないかと思って見ている。