目 次
1.11月4日(金)札幌・らぐたいむ(with 野田悟朗)
2.11月5日(土)札幌・ファニー(with 野田悟朗)
3.11月6日(日)小樽・一匹長屋(with 野田悟朗)
4.11月7日(月)舞鶴・Mchステーション内(with 野田悟朗)
5.11月8日(火)名古屋・ ウエスト・ダーツ・クラブ(with 野田悟朗)
6.11月9日(水)大阪・ STUDIO 73(with 野田悟朗)
7.11月10日(木)倉敷・ Cookie Jar(with masaki μ)
8.11月11日(金)広島・ OTIS!(with ウパシクマ)
9.11月12日(土)北九州・フォークビレッジ(with 若菜潤一郎)
10.11月13日(日)福岡・ライブバーGENGEN(with KAYA)
11.11月14日(月)福岡・そらや
12.11月15日(火)お休み[久留米にて]
13.11月16日(水)熊本・ヌアージュ(with なゆた) NEW!!
14.11月17日(木)小樽へ帰還 NEW!!
「秋の本州ツアー」!何と甘美な響き。
毎年恒例になっている年に二回程度の本州ツアーですが、今回はなりゆきで、3〜4月、11月、そして12月の年三回になりました。最初はそういう予定がなかったのですが、何と12月初頭にあこがれのギタリストであるジョン・レンボーンとウッディ・マンが来日するのです。つまり、12月はどのみち本州に行かなければならないので、ついでに12月もツアーを組むという事になったのでした。その線でブッキングしていたら、11月は名古屋以西、12月は関東中心という形ができあがりました。
今回、最初のツアーには、さらに二つの特徴がありました。まずは共演者。過去に共演した12弦ギター奏者の野田悟朗(ノダゴロー)さんの北海道ツアーを私がお世話することになり、どうせならついでに大阪まで一緒にジョイント・ライブしようということになったのです。私もいろんな人と共演してきましたが、ここまで連日でジョイントするのは初めてのことでした。
もう一つの特徴は、久しぶりに九州の地を踏み、さらに初めて熊本まで足を伸ばすということ。九州には知り合いがなかなかいないので、まずは名前を覚えてもらおうという意気込みで、今回のツアーに望みました。
さて、その旅程は...?
本州ツアーとは違いますが、この日の札幌ライブから二週間に渡るライブ・シリーズがスタートしました。
この前日に小樽入りした野田悟朗さん。二年前の秋に長野と三重で共演したことがあります。詳しくは「ライブ日記」もご覧下さい。その後、野田さんはお体を壊したらしく、生死の境をさまようような大変な時期もあったそうです。今でも食前の薬が手放せないし、そんなに激しい運動も出来ない状態なのに、このツアーでは重そうなギターを二台持ってきて、気合い十分でした。
私の地元で死なれたらエライコッチャなので(?)、最初は私も極力気を遣おうとしたものの、野田さんは最初に会ったときと同じかそれ以上に、とてもマイペースで落ち着いた大人物の風格でした。私はその自信に満ちたお顔を拝見して、少し安心。野田さんの車がない以外は前の通り、楽しい旅がスタートしたのです。
[写真:ジャックでコーヒーブレイクする野田さん。]この日は多少早めに小樽を出発して、私のなじみのお店であるジャック・イン・ザ・ボックスに行きました。
噂の12弦バリトンギターをここではじめて拝見。バリトン・ギターは通常より4度低い音が出るギターで、使用者も増えてきてはいますが、その12弦バージョンというのは聞いたことがありません。小坂さんという京都のギタービルダーの手による、おそらく世界的にも珍しいギターです。
たまたまお客さんとして来ていた音楽デュオ「クオクオ」の吉田君も驚いていました。札幌の「らぐたいむ」さんで演奏するのは5年ぶり。もはや想い出の世界でした。私としても感慨深く、最初は柄にもなく緊張してしまいましたが、次第にお客様の反応を楽しみながら演奏に入り込みました。 今回のツアーでは、前半に私、後半に野田さん、最後に二人でインプロというライブ構成で統一されていました。
野田さんの二本目のギターは、クレオバンブーという工房の手による竹製のハンドメイド・ギター。打田十紀夫さんなどが使用していることで知られていますが、野田さんのこのモデルはナイロン弦で、非常にまろやかで心地よい音が出ていました。 野田さんのイマジネイティブな即興演奏は、私のギタースタイルとは正反対で、ゆったりと間を取りつつ自らの心象風景をフリースタイルで綴っていくものです。そのアーティスティックな世界に、聴き手は徐々に引き込まれていきます。
[写真:札幌・らぐたいむにて。]最後に二人でのインプロ対決。
この取り合わせで、過去『ライブ・ラギング2』(2004)に「アット・ふぉの」が収録されています。この日のインプロもかなりいい具合でした!おかげさまでこの日は多くの方々にお越しいただき、心から感謝!
次の日も札幌。ススキノにあるなじみのお店ファニーで、非常に雰囲気の良いライブ・バーです。
この日は、昨日偶然ジャックに居合わせた吉田君がお客様としてやってきてくれて、感激。
リハが終わると、近くでうまいと評判のラーメン屋さんへ二人で行きました。 「あれ、野田さん、ラーメン食べても大丈夫なんですか?」
「いや、あかんな。」
とか言いながら食べるし...この日を含めて、北海道にいる間、寿司、札幌ラーメン、スープカレー、バターアワビ、ラムしゃぶなどたいていの北海道名産を制覇なさっていました。いで立ちや音楽の瞑想感から、よく「修行僧」に例えられるという野田さんですが、むしろ「破戒僧」というべきかも。
今までのおつきあいから、いろんな意味で覚悟が出来ている人だとわかっているので、私はもうあえて何も言いませんけど、どうかお体を大切に。
[写真:札幌・ファニーにて。]前日と同じく、私が前半を務め(写真がない!)、しばらくのインターバルの後、野田さんの登場。昨日に引き続き、ごついバリトン・ギターがたわむほどの魂の熱演! また、ナイロン弦ギターの甘い音色に、自らの人生経験を語り伝える吟遊詩人や琵琶法師の面影を見た気がしました。
札幌の予定が続いてバッティングしたせいか、この日の集客は残念ながら今一つでしたが、残ったお客様たちとの話が大いに盛り上がり、終電の時間が近づいてきました。
「野田さん、時間ですよ!」
「じゃあ、泊まろか?」ということで、野田さんが見つけた格安ホテルに予期せずお世話になりました。ま、こういうのはありがちですね...。
朝、札幌のホテルで朝食バイキングを楽しんだ後、高速バスで小樽へ。その後、我が「Good Old Otarunay Studio」にて、私がプロデュースするオムニバスCD用の録音をしていただきました。このCD「ジョン・フェイヒイ・トリビュート」(題未定)、発表は来年の1〜2月頃になりますので、どうぞお楽しみに。
[写真:小樽・一匹長屋にて。]さて、成り行きで野田さんが道に迷ったりといろいろありましたが、何とか無事に一匹長屋でのライブ開始。最初はお客さんがいなかったのですが、私の番が終わってからやっと野田さんのお知り合いの方々がいらっしゃり、ホッと一安心すると同時に、私は地元のアーティストとして一抹の寂しさを感じました。 今年の一匹長屋、私の予定が多かったせいで客足が延びなかったのかも知れませんが、「客足を鈍らせないためにライブを控える」と考えるのも変です。
ご都合が合わずにこのライブをご覧になれなかった方々には本当に残念なことですが、この日の私たちの演奏はとても輝いていたと思います。またの機会にぜひよろしくお願いします。
終演後、私たちは真夜中のフェリーに飛び乗り、一路舞鶴へ!
ついに本州ツアーの開始です。
4.11月7日(月)舞鶴・Mchステーション内(with 野田悟朗)
フェリーで舞鶴という黄金の経路、私は学生時代から愛着があり、何度も何度も利用してきましたが、道連れが出来たのは初めてかも。今回は運悪くかなり波が高かったようで、お風呂も食堂も休止状態。私はこういうのも慣れていましたが、野田さんはさすがに少し船酔い気味でした。
「野田さん、実は今回のトリビュートCD、私の参加曲は「舟歌」というんですが、これは「船酔い」をテーマにしているんですよ。」
「そんなん、よう聴かんわ!」などとやっていると次第に波も収まってきて、この日の夜9時にやっと舞鶴港に着きました。着くといきなりお迎えのお車が。野田さんの計らいにより、地元FM局のMchステーションにて、すぐにミニライブと番組の収録をすることになっていたのです。まさに休み無しの連戦ツアー!
この日の写真が残っていないので(写真を撮るヒマがないほどあわただしかった)残念ですが、至近距離でのギターの完全生音が空間を支配して、演奏しているこちらも(そしておそらく聴衆のみなさんも)スゴク良い雰囲気。いつも舞鶴は通り過ぎるだけの街だったのですが、こうして演奏の機会を与えられて、面識もない皆さんの耳に音楽を届けられて、しかも楽しんでいただけるというのはミュージシャン冥利に尽きます。
FM番組の収録も楽しい雰囲気の中で行われ、ツアー初日で今までの不安な気持ちがリセットされました。
5.11月8日(火)名古屋・ ウエスト・ダーツ・クラブ(with 野田悟朗)
[写真:JR山陰本線・安栖里駅近くにて。]お世話になった舞鶴を出立して、次の予定の名古屋に向かうところ、野田さんがギターを作ってもらった「小坂ギター」の工房に一緒に行こうと言うので、最寄り駅の安栖里に到着。小坂さんは所用のため、この近くでお迎えを待つことになりました。 この日は気分のいい小春日和で、ついついギターを出して練習してしまいました。ほとんどだれも通りかからない田舎の駅、空気が美味しい大自然に囲まれて、しばし自己陶酔。
その後、小坂さんの工房(懐かしい日本を感じさせるお家でした)で素敵なギターの数々を拝見。マカフェリタイプのギターの鳴りが素晴らしく、感激しました。
その後、名古屋まで四苦八苦して鈍行でたどり着きました。そもそもこの旅程は少し無理があり、本来は苫小牧→名古屋というフェリーを使うべき所、都合が悪くて利用できなかったのでした(そのおかげで舞鶴の予定が増えたのですが)。 やっと名古屋のウエスト・ダーツ・クラブにたどり着き、ライブ開始。
私は約一年ぶりでしたが、いつもお世話になっているお店で、もはやホームグラウンドのようにノリノリの演奏が出来ました。 安栖里での練習がよい方向に出たのでしょうし、またたくさんのお客様に囲まれて、心からやりがいを感じていたのです。
日本ラグタイムクラブの室町さんや青木さんとも再開。終演後はラグタイム関連の極秘会談(?)に花を咲かせました。
みなさん、ありがとうございます!
[写真:名古屋・West Darts Club にて。]最初に会ったときの野田さんは三重県にお住まいでしたが、現在は名古屋在住。地元に戻ってきての落ちついたプレイに、数々の障害を乗り越えてきた懐の深さを感じました。 私のギターを使った、オタルナイ・チューニングによる即興も披露してくれました!
終演後がまたまた盛り上がり、ギリギリの地下鉄で最寄り駅まで着き、そこからタクシーで野田さんの家に到着。
...家の中は、まさに野武士の風格漂う光景でした(詳細は省略!)。野田さんにとっては、沖縄から北海道までの長いツアーに一区切りついたのでした。
6.11月9日(水)大阪・ STUDIO 73(with 野田悟朗)
名古屋では思いがけず、前述した「クレオバンブー」の中村さんが野田さんの家に来て、私も竹のギター(スチール弦)を二本試奏しました。野田さんから「浜田の音に合うと思うよ」と言われていたのですが、まさにピッタリ。
従来のマーチンコピータイプのギターとはまるで違う方法論による革新的なギターで、基本的にはピックギターのような形なのですが、音が固くなくて生音の強弱が実にコントロールしやすく、ミュートのかかり具合も絶妙。響きが深い割にサスティンはそんなに長くないので、私のようなラグタイムには打ってつけです。竹という使用材やまるで作りかけ(失礼!)のような仕上がりなど、見た目の奇妙さとは裏腹に、まさにギターらしい音が鳴るギターでした。
しかも何と、私のためにギターを作ってくれるとのありがたいお申し出。正直に申しまして、私は以前、生意気にも個人的な信条から、いくつかのエンドースのお話をお断りしてきました。決して音に満足できなかったのではなく、安易にそういう美味しい話を受けてしまったら自分の音楽に生活感が無くなり、かえって自分のためにならないと自制していたのです。私はまだ無名のミュージシャンなので宣伝効果もそれほど期待できず、ギタービルダーさんにご負担をおかけするだけのような気もしていました。
しかし、今回は、そういう話が出たのも何かの縁なのだと悟りました。どんな素晴らしいギターでも、もし野田さんにこういう形でご紹介いただけなかったら、話も聞かなかったかも知れません。こちらとしてもできる限り代金をお支払いするということを条件に、感謝しつつこの話をお引き受けすることにしました。そんなわけで、完成の際には昼夜・公私を問わずそのギターを弾きまくりたいと思います。野田さん、そして中村さんには本当に感謝しています。
話は違いますが、この日、名古屋駅の中にある、とあるお店で食べたトンコツラーメンにメチャメチャ感激。
おそらく今まで食べたラーメンの中でもトップクラスでした。
さて、今回のツアーでは最後となる野田悟朗さんとのジョイント・ライブ。大阪・高槻の井上楽器さんが主催してくれた「Studio 73」で、有終の美を飾りました。 野田さんと井上さんは古い知り合いらしく、その縁で今回の話がまとまったのです。
今回のツアーで最も多くのお客様にお越しいただき、さらにPAもナチュラルで最高。ここで燃えなければミュージシャンにあらず。クラシック・ラグを中心に、思う存分弾かせていただきました。
[写真:大阪・Studio 73 にて。]野田さんのプレイも今までで最もエキサイティングな、素晴らしいものでした。 ステージでは、お客様のパワーも頂きながら演奏するとのことで、一心に聴いてくれるみなさんとの相乗効果なのか、起伏に富んだ長大なインプロビゼーションが圧巻でした。
最後の共演では、野田さんが私のギターを使い、私が野田さんのバリトン12弦を使い、摩訶不思議なインプロとなりました。
いつもは共演している天満さんや平野さんはじめ、お越しいただいた皆さん、本当にありがとうございました!
その後、例によって例の如く、高槻での飲み会が大盛り上がり。野田さんは約束していた友人の家に泊まらなければいけなかった(私も同行する予定でした)ため、一足お先にここでお別れ。私は最後まで飲み会を全うして、止せばいいのにカウンター席でギターまで披露してしまいました。全く関係のないお客さん達も喜んでくれたみたいで何よりでした。
当然終電も過ぎ、井上さんの紹介でまた例の(?)ホテルにお泊まりとなりました。
7.11月10日(木)倉敷・ Cookie Jar(with masaki μ)
大阪からバスで岡山へ。最初は倉敷でホテルを取ろうと考えていましたが、翌日の広島にバスで行くためには岡山で泊まった方が楽だ(倉敷からは出ていない)ということがわかりましたので、例によって岡山の格安ホテルにチェックインした後、倉敷へ。
今年二度目の共演となる岡山のギタリスト、masaki μさん。いつもお世話になっております。
今回はオベーションではなくシモのパーラーギターをプレイしていました。ギターレストを使っての独特のスタイル。今まで masaki さんと何度も共演してきましたが、今回はその中でも格別、絶句するほど素晴らしい演奏でした。
[写真:倉敷・Cookie Jarにて。]初めてお世話になったお店「Cookie Jar」はとても雰囲気の良いお店で、投影スクリーンや音響設備なども素晴らしいもの。噂にお聞きしていた通りでした。
ただ、ああ、この日は久々にお客ゼロのライブになってしまいました...。
共演の masaki さんやお店の方々に迷惑をおかけして、大変申し訳ありませんでした。ところが、以前にも書いた通り、こういうときのライブこそ、私は実力以上に充実した演奏をやるのが性分なのです。MCも含めて我ながら絶好調。アンコール(?)で masaki さんとフリースタイルの共演までこなしました。まさに会心のパフォーマンス!
私は、みなさんにいい音楽をお届けすることが仕事です。
そして、いい音楽でありさえすれば、いつかお客さんも集まるものだと信じています。
岡山県の皆さん、次の機会にまたよろしくお願いします。
8.11月11日(金)広島・ OTIS!(with ウパシクマ)
岡山から広島行きの高速バスに乗り込んだ時点で雨がぽつぽつと降ってきました。今回のツアーで初めて雨に降られたのです。まあ、広島に着いたら止んでいるだろうと思っていたら、むしろ激しさを増していました。相当強い雨で、しかも全然止まないのです。うわぁ、昨日の涙雨か?
迷ってずぶぬれになりながら何とかホテルにチェックインして、またまた迷いながらバスでお店の最寄り駅に着きました。お店に入って挨拶もそこそこに愛しのギターをチェックすると、レインコートのすき間から雨水が漏れて表面板に若干の被害あり!...こんな状況だったので、正直言って私にしては珍しく、始まる前からちょっとだけめげていたのでした。
しかし、そんな憂鬱な気分は、すぐにどこかに消えてしまいました。マスターの佐伯さんのねぎらいのお言葉。PA担当の若者との愉快なやりとり。お店の奏でる不思議に落ち着ける音楽。温かいコーヒー。まさに「シェルター・イン・ザ・レイン(雨の避難場所)」でした。
一年前に私のライブにお越しいただいたお客様を含め、思わぬ盛況ぶりに泣きそうになりながら感謝しました。
さて、開演。オープニングで出ていただいた「ウパシクマ UPASKUMA」です。佐伯さんを中心とした音楽集団ですが、今回は居森やよ美さんとのユニットでした。 新作CD『SO RA NI KA ZE』を発表したばかり。世界の民族音楽を取り入れて、独特の音楽を紡ぎ出しています。非常にバリエーション豊かで広がりのある音楽です。
その瞑想(または激情)に誘うようなイマジネイティブな音に、私は二日前まで共演していた野田悟朗さんの音楽との共通点もほのかに感じました。
続いて私。聴いていただく皆さんへの、とても言い表せない感謝の気持ちを込めて、ギターを弾く手にも力が入りました。 楽しいときはあっという間に過ぎるとよく言いますが、いつもと同じほどの曲数をやったのに、気がついたらもうお終い?という感じでした。
名残惜しい...
[写真:広島・OTIS! にて。]ということで、最後に、全くリハも何もやっていなかったのですが、ウパシクマ・ユニットとの歴史的な共演が実現! いつ果てるともない長いインプロとなりました。 野田悟朗さんとの共演がクセになってしまったようですが、これからも機会があれば、いろんな人と異種格闘技戦をやってみたいと思います。
9.11月12日(土)北九州・小倉・フォークビレッジ(with 若菜潤一郎)
[写真:小倉の高速インターを下りると、こんなのどかな風景。]広島のホテルを出て、広島バスターミナルへ。そして福岡行きの高速バスに乗り、一路九州へ。天気は晴れだし、景色はいいし、割と順調な旅路。 前回九州入りしたときは深夜バスだったので体調は最悪でしたが(「ライブ日記」参照)、今回はホテルに泊まるだけでこの快適さ。やっぱり深夜バスはもうやめようと心に決めました。
さて、途中の小倉ICで下りたのですが、いきなり写真のような情景が。ここからJR小倉駅まではバスで40分以上掛かりました。と、遠い...
インターネットで調べておいた超格安のホテル(というかシェアルーム?)を探している内にどんどん時間が過ぎて、やっとチェックインして今日のお店のフォークビレッジに着くのが少し遅くなってしまいました。ともかく、2年半ぶりにマスターの小野さんと再会して、しばし音楽談義に花が咲きました。専業ライブハウスで、かつ心から和める素晴らしい空間。
オープニングに、クラシック・ギタリストの若菜潤一郎さんが演奏して下さいました。ナイロン弦の心地よい響きに、私はしばし旅の疲れを癒すのでした。 たくさんの生徒さんを持ち、地域のギター界の活性化に貢献されている若菜さんのような音楽家は、本当に貴重だと思います。
私も、もし自分の生徒がいたら自分の知識と技術を伝えてみたいなあ、と思ったりして。...いないですが。
[写真:小倉・フォークビレッジにて。]おかげさまでまたステージが盛り上がる中、私も気持ちよく演奏しました。フォークビレッジは音が素晴らしく、ギターはもちろん、いつも唄っている「忘れません」も普段よりうまくなった気分。 これからも、少なくとも年に一度はおじゃましたいなあ、としみじみ思いました。小倉の皆さん、またよろしくお願いします。
ホテルは店から歩いて30分ほどだったので、終演後はのんびりと余韻を楽しみながら帰路に着いたのでした。
10.11月13日(日)福岡・ライブバーGENGEN(with KAYA)
福岡でも格安の旅館にチェックインして、次のお店へ出発。
GENGENさんとはこれまた二年半ぶりで、懐かしさを感じながらリハをしました。
来年初頭に発売予定のジョン・フェイヒイ・トリビュートが縁で知り合った福岡在住のギタリスト、KAYAさんがオープニングを務めてくれました。 奥さんと共に運んできたギターアンプ、音響機器、二台のギター、そして服装やディスプレイに至るまで、実に気合いの入りまくったKAYAさん。
KAYAさんはとても激しくアーティスティックなギタリストだと思います。お話の飾り気のなさから一変して、スライドギター演奏となると、まるで何かが憑依したかのような迫力。例えは突飛ですが、ある種、空手家のようなオーラを感じました。また素晴らしいギタリストの友人ができました。
[写真:福岡・GENGENにて。]私はいつもの通りマイペースでラグタイムを演奏。何とあの城直樹くんが、お客さんとしてきてくれていました。前は共演者としてでしたが、今は聞かせる立場として恥ずかしくないような演奏をしたつもりです。 GENGENさんでのライブ、またの機会のを楽しみにしています。
福岡に連泊。お昼の余った時間を利用して、天神駅前の広場でストリート・ライブ。持ってきた小さいピグノーズのアンプで控えめに音を出して1曲目の演奏を終えると、すぐに広場の管理員がやってきました。「ここではアンプ禁止です」「物品の販売もできません」と例によってお決まりの規制が入りました。予想はしていましたが、1曲目でいきなり来るとは、なかなか仕事熱心な方でした。
そんなに大きな音でもなかったと思うので、本当はごねることもできたのですが、音楽は誰にもはばからない環境でこそ気持ちよく演奏できるものです。だから、禁止とあれば私は素直に引き下がります。演奏自体は構わないらしかったので、アンプ無し・CDは単なる飾りということで弾かせていただきました。他にも妙に堅いオジサンからワケのわからない文句を言われたりしましたが(座るところが他にもいっぱいあるのに「場所をとりすぎだ!」とか)、それは適当に受け流して2時間ばかり演奏。飾りのCDもこっそりと売れ、まあ良しということで旅館に戻りました。
その後、城くんから紹介された居酒屋の「そらや」さんでの公開演奏。城くんのなじみのお店らしく、何度かお電話でお話ししていましたが、どういう場所か私はほとんど理解していなかったので、前日の終演後に偵察がてら城くんたちと飲みに行ったのでした。
最初、お店に行く前までは、明日は演奏後、お客様に投げ銭をお願いしようなどと漠然と思っていたのですが、いざお店に入ると、まさにアットホームで親しみやすい普通の居酒屋さん。お店の方もお忙しそうで、またギターを置く場所もないくらい混んでいました。私は、自分の性分として、こういう普通のお店で、皆さんの楽しいひとときを邪魔して、ずうずうしくも金の無心をするような真似はできないな、と思い至りました。要するに、私がもっとよく条件を確認しておけばよかったのです。結局、当日は城くんや彼の顔見知りの方たちと共に語らいながら、ギターを弾いてはまた飲み、またギターを弾いて飲むというタダのお客さんとして、このひとときを楽しんだのです。私はプロですから、無償でギターを弾くということはまずありませんが、紹介してくれた城くんの手前もあり、今日は特別。
お店の人も、お客さんもみんな楽しんでくれたみたいで、私もうれしく、城くんたちと共にうまい酒を飲んだのでした。
今日は長いツアーで唯一のオフ日(昨日も休みみたいなものでしたが)。当初は長崎にでも行こうと思っていましたが、思いのほか遠かったため、明日の熊本に行く途中にある久留米にかなり安いホテルがあることを突き止め、ここで空き日程を過ごそうと決めたのでした。
[写真:JR久留米駅前にある「からくり時計」。なかなかいい味出してます。]久留米は全く知らない街でしたが、昨日「久留米はとんこつラーメン発祥の地だよ」と聞かされていたので、JR久留米駅前のラーメン店でさっそく食べました。う、うまかバイ... JRの駅からかなり歩いて件の安ホテルに行くと、トイレ・お風呂は共同ながら夕食・朝食が付いて3500円以下という、信じられない安値。オマケにその御飯が美味しいとくれば、何の不満もありません。お風呂(シャワールーム)はかなり広く、しかも一人で占有できるため、非常に快適。
これだ! こういうホテルを探す楽しみも、ツアーの醍醐味の一つなのです。
なお、この街のレコード店で、スティービー・ワンダーの新譜を買い、しばし感涙。いや、本当に泣きました。
夜、やはり空き日程には「投げ銭活動」と心に決めていたので、西鉄の駅前のアーケード街でストリート演奏しました。雨に降られたり、人があまり通りかからなかったりと、あまり思い通りには行きませんでしたが、とてもいい気分で演奏を楽しみました。というか、11月の夜に外でギターを弾けること自体が、北海道の私にとっては幸せなのです。
昨日のことも含めてですが、私は投げ銭活動は外でやる方が性に合っていると改めて感じました。
今回のツアーで一緒になった人の中では、図らずも野田さんとKAYAさんが、お店での投げ銭方式(KAYAさんはそれを「ドネーション donation 寄付金」と言ってました)のライブを行っています。もちろんそれぞれのお考えや利点があると思いますが、少なくともこれからの私は、お店ではチャージ制・外では投げ銭制という考え方にきちんと分けて活動していきたいと思います。
13.11月16日(水)熊本・ヌアージュ(with なゆた) NEW!!
泣いても笑っても、この日がツアーの最後の予定。初めて熊本の地を踏みました。私はまだ沖縄にも行ったことがなく、ここが今までで最も南の地なのです。JR熊本駅前のラーメン屋でさっそくラーメンチェック。またまた、うまかバイ...
天気が良かったので、風光明媚な路面電車を横目に見ながら、目的地まで散歩がてら歩いていきました。札幌で言えば豊平川のように広い河川敷に沿って、小春日和の素晴らしい景色を楽しんだのでした。売れ残ったCDを入れたカートさえなければ、もっといろんな所を歩いてみたかったのですが...新しいCD、ちょっと持ち込みすぎでしたね。アーケード街に着くと、まず帰り(熊本→福岡まで)の格安チケットをゲット。明日の飛行機が結構早い便なのでやむを得ないという側面がありましたが、特急券自由席で2000円という安さ。普通乗車券より安い!
その後、この旅で初めてカプセルホテルにチェックインして、やっとお店に到着。お店のマスター片山さん、そして今日の共演者・なゆたさんと初対面。意外にも私と同年代ということもあり、すっかり打ち解けてしまいました。
なゆたさんは、モリダイラのコンテストの出場経験もある実力派のギタリストで、初めて間近にそのプレイを拝見しましたが、一聴して「どうしてなゆたさんが賞を取れなかったの?」と審査員に疑問を呈してしまうほど、素晴らしいパフォーマンス。 特殊奏法もビシバシ決めていましたが、それ以前にギタリストとしての底力があり、幅広い音楽性を感じるプレイは聞いていて実に楽しめました。ステージ衣装も含めて、ショーマンシップも持ち合わせている人でした。
だいたい、リハが終わった後、ちょっと開演前にご飯を食べに行ったつもりが、いきなり飲み屋さんで酒盛りになってしまい、「なゆたさん、始まる前から打ち上げしてどうするんですか?」「いやあ、これで普通ですよ?」などと楽しいやりとり。
いろんな意味で面白い人です!
[写真:熊本・ヌアージュにて。]ヌアージュさん、普段はジャズのお店だそうですが、おしゃれな中にもくつろげる素敵な空間。実はマスターの片山さんも素晴らしいギタリストなのです。
なゆたさんたちのおかげで会場が大盛り上がりの中、私は心から楽しんで演奏しました。なゆたさんとはこの日が初めての共演でしたが、最後のセッションもバッチリ決まりました。これで長かったツアーが終わり、私は皆さんのおかげで有終の美を飾ることができたのです。
終演後、なゆたさんやそのお友達と打ち上げ。噂に聞いていた「からしレンコン」や「馬刺」など、熊本名物を総まくり状態。日付が変わるまで飲んでいたら、何と偶然にもボージョレ・ヌーボーの解禁日だったらしく、さっそくみんなで飲んでしまいました。
ああ、何て幸せ。
朝早く起きて、ホテルの近くにあった和菓子屋さんで、なぜか「いきなり団子」という変わった団子を食べました。これは団子というよりむしろ饅頭なのですが、中には餡の他に大きなサツマイモが入っているのです。作りたてということもありましたが、これは美味しい。一個でもかなり大きいので、軽い朝食にピッタリでした。
出発前に、どうしても一目見たかった熊本城を見学。門まで行って遠目で見るだけでしたが、とりあえず満足しました。
その後、一路福岡空港へ。福岡→千歳空港。超割のチケットを手に入れておいて本当によかった!
このおかげで、実に安上がりで故郷へ帰ることができたのでした。というわけで、野田さんとの北海道ライブに始まって、九州まで足を伸ばしたこの長いツアー、やっと無事に終えることができました。共演者の皆さん、お店やライブの関係者の皆さん、そしてライブをご覧いただいた皆さん、本当にありがとうございました。またしばらくしてから次回の予定を立てたいと思いますので、その時はよろしくお願いします!
(完)