18.ブルーベル(鈴木バイオリン製) Blue Bell (made by Suzuki Violin)

BW−400(1981年製、ネックブロックに刻印された番号は #810304)(現在無し)

表面板:スプルース合板
側板・背面板:ローズウッド合板(3ピース)
指板・ブリッジ:ローズウッド
ネック:マホガニー
 
使用アルバム:なし
 
 性懲りもなく2008年3月にオークションで手に入れたギター。
 ブルーベルは、エレキギターの「グレコ」で有名な富士弦楽器製造のアコースティック・ブランド名(特にブルーグラス系)です。しかし、製造された工場は時期によって違ったらしく、「スリーエス」でもご紹介している鈴木バイオリンが作っていたモデルもありました。このBW-400もその一つです。
 
 オークションで購入するときは期待と不安が半分半分なのですが、到着した楽器をチェックしてみて、予想が悪い方に裏切られました。というのは、表面板が目視で明らかに合板なのです(下のサウンドホール周りの写真を参照のこと)
 
 ネットで検索できるカタログ資料などを見ると、BW-400では表面が単板と載っているので、ちょっと疑問があるのですが、ひょっとしたら時期によって仕様に違いがあったのかも知れません。実際、鈴木バイオリンについて詳しいホームページ『鈴木バイオリン製のギター』には、Three-S の後期モデル「SW」について、「WシリーズはW400から上がトップ単板になるが、SWシリーズだとSW500以上でないと単板にはならない」と書かれていますから、それと似たようなことがOEM先でも起こったのかも知れません。これは盲点でした。


 しかし肝心なのは音。弦を張っていろいろ弾いてみましたが、さすが鈴木バイオリンのOEM、楽器の作りはかなりしっかりしています。チューニングもゴトーの糸巻きと正確なフレットでピッタリ合い、音も存在感があって、ヤマキR-60に迫るくらいにガンガン鳴っています。ピッキングの弱い人や、歌もののパッキング用には最適でしょう。

 ただ、やはり表面板が合板のギターの宿命でしょうか、音色の微妙な変化がなかなか付けられず、以前ならともかく、現在の私のプレイスタイルには合いません。同じ理由で、私は以前、非常に鳴りのよかった Three-S W-200 を手放したことがあります。 さて、どうしましょうか。
 
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 しかし、このブルーベル、ずっと弾いていくうちに「これはこれでありかな〜」と思えるようになってきました。ブルーベルはもともとブルーグラスを念頭に置いたブランドですから、ジャランと弾いた時のコード感は抜群だし、タッチの微妙なところも、こちらの弾き方を少し変えてやると、それなりに応えてくれるようです。
 
 合板ギターは、要するに響きが強すぎてかぶり、強弱がコントロールしにくくなるのが問題なのです。私が弾くときは、強弱やON/OFF(つまりミュート)を普通より意識して弾くと効果的に感じました。割と快活な曲(例えば「パインランド・メモール」など)では、単板のヤマキよりも粒のそろった安定した出音が、より心地よいラテン系のグルーブ感を出してくれます。
 実際、オール合板ギターなのに、単板ギターよりも軽いのです。材の乾燥、そして合板の加工技術において長年の経験を蓄えてきた会社ならではのことだと私は思います。
 
 
 なお、先の『鈴木バイオリン製のギター』によると、鈴木バイオリンの後期ロゴのモデルには、ドブテール(ダブテール)ジョイントと「セキュアーネック」という独自の方法がネックブロックに取り入れられていたそうです。左の写真の通り、このブルーベルにもその特徴があるようです。鈴木バイオリンのギターの作りがしっかりしているのは、こういう普段見えないところにも現れているようです。

 このギター、いろいろ考えましたが、手放すかどうかは、とりあえず白紙ということにします。実は Three-S W-200 も決して悪いギターではなかったので、手放したときはもったいないと思ったものです。
 意外と、次はこれがメインになったりして...。

追記(2008-4-16):いろいろ考えましたが、よく鳴る合板ギターはすでにヤマハFG-140を持っていて、これからも弾く機会は多く持てないことが予想されたので、悩んだ末に手放すことにしました。短い間でしたが、改めて鈴木バイオリン製ギターの魅力と、国産ギターの不思議な歴史の一断面を感じることができるモデルに出会えて、有意義な勉強をさせていただきました。

 

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

W−1000(1976年製?、ネックブロックに刻印された番号は #6025099)(現在無し) NEW!!

表面板:ジャーマン・スプルース単板
側板・背面板:ローズウッド単板
指板・ブリッジ:エボニー
ネック:マホガニー
 
使用アルバム:「Echoes From Otarunay Vol.1」「Echoes From Otarunay Vol.2
 
 もはや弁解無用、2008年11月に再びオークションで、このグレードにしてはかなり安価に手に入れたギターです。
 このギターは、同じブルーベルでも製作が異なり、国産ギターのファンには評価の高いTAMA(多満製作所)製です。ブルーベルのモデルでは、エントリーから中堅モデルまでが富士弦や鈴木バイオリン製、そして上位モデルがTAMA製という分担になっていたそうです。
 
 気に入っていながら手放してしまったイバニーズのAW-70DMも、同じTAMA製で、私は足りない気持ちを埋めるかのようにこのギターに飛びついてしまったのでした。外面もサイズも違いますが、持った感じがやはりAW-70DMを少し彷彿とさせます。

 さっそく弦を張り替えて、バリバリと弾きまくり。
 もう文句なし。これも素晴らしいギターです。
 作りには定評のあるTAMA製なので、チューニングもピッタリ合い、調整の必要は感じません。
 なお、このギターはトラスロッド調整のレンチ穴が、ナットの下に付いています。

 心地よい倍音、おなかに来る振動が、マーチンの良質なギターを思わせます。音の傾向としては、高音に少しシフトしているような、いわばガラスのような明るい音です。といっても、中低音もしっかり出ていて、録音でも使えそうなバランスの良さがあります。この音の傾向は、マホガニーも感じるものですが、このギターのローズウッドはまるでマホガニーのような木目で、そのイメージと重なります。

 実はほとんど同じ仕様を持つ、
アリア D-80と比較してみました。
 D-80の方が厚い木で作ってあるらしく、かなり重量感があり、音も低音の存在感が勝っています。
 ただし、高音の透明感や音のうなりは、W-1000の方が良い鳴り方です。
 しかし、甲乙付けがたし。

 いきなりライブや野外演奏で使いましたが、一口で表せないくらい、心地よい響きのギターです。D-80もそうですが、ルックスも音も派手ではなく、ただ当たり前にギターとして、奇をてらわず確実にいい音を出しているのです。この確かな音、製品から感じる作り手のごまかしようのない誠意の前に、「所詮安いマーチンコピーモデルさ」という国産ギターにお決まりの陰口は、全く無意味です。
 野外演奏用に最近導入した
K & K Trinity Systemの出音も、このギターの生の魅力をきちんと引き出しています。

 ずっと持っているつもりでしたが、他のお気に入りのギターを集中して弾きたくなったため、2009年に手放しました。
 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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