ライブ日記2008春(6弦12弦ラグタイムツアー)(2008年6月11日更新)

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 目 次

はじめに

5月13日(火)千葉 新柏・キッチンパタータ (with 伊藤賢一)
5月14日(水)鎌倉・ The organic & Hemp Style Cafe & Bar 麻心(with 阿部哲也)
5月15日(木)国分寺・クラスタ(with 堀尾和孝、覆面シンガー)
5月16日(金)横浜・ぐりふぉれ屋
5月17日(土)茨城・EAST OF EDEN (with okayan)
5月18日(日)東京 文京区・音楽的自由空間 けやき(JRCミーティングに参加)
5月19日(月)松本・アクアヴィーテ(with 前澤勝典)
5月20日(火)空き日程
5月21日(水)大阪・TEN-ON(with Yousei)
5月22日(木)岡山・Pinball Cafe(with masakiμ、まる)
5月23日(金)山口・フォークソング
5月24日(土)北九州・フォークビレッジ(with 城直樹、長谷場隆嗣)
5月25日(日)福岡・Fermata(with 城直樹) NEW!!
5月26日(月)小樽へ戻る NEW!!

 

◎ はじめに

 2008年5月、早くも二回目の本州ツアーを行いました。
 一回目は2月、小松崎健さんとのジョイント・ツアーでしたが、今回は本来のソロ・ライブ・ツアーとなりました。

 全体の半分以上が初めて演奏する場所で、また数年ぶりにお邪魔するというお店もあり、私にとって新鮮なツアーでした。ただし、なにぶんにも連休明けでしたから、集客の面では苦しいライブ・ツアーになるだろうと予想していましたが、皆さんのご協力のおかげで形になって、正直ほっとしています。
 なお、いつも話題の一つになる「忘れ物」については、寝具として持って行った股引をホテルに忘れてしまったくらいで(やっぱり忘れたのかよ?)、特筆すべき忘れ物はなく、順調な旅ができました。というか、前回のような超ど級の忘れ物と比較すると、股引一枚くらい、平気の平左のです。

 今回のテーマは「6弦・12弦」。12弦ギターによるラグタイム・ギターの新たな魅力をお届けしたいと思い、無理してヤマキF-250を持って行くことに決めました。さらに、今までのツアーでは使わなかった、我が生涯の愛器フィールズ・F・カッタウェイも初めてツアーに持ち込みました。ツアー出発直前にヤフオクでまたギターを落札するなど、国産ギターマニアックにさらに磨きのかかった私ですが、さて実際のステージはいかに。

 

★ 5月13日(火) 千葉 新柏・キッチンパタータ (with 伊藤賢一)


[写真:格安なのに全客席に液晶画面の付いた飛行機。]
 当日、またも格安航空券で羽田へ、そして南千住の格安ホテルにチェックインと、すでにパターン化している私の旅なのでした。

 キッチンパタータさんにはいつも週末にお世話になるのですが、今回は日程の都合で平日になってしまいました。お忙しい中ご尽力いただいた、戦うオヤジ応援団の山下さんとお店には、本当に感謝いたします。


[写真:サウンドチェック中の伊藤賢一くん。]
 意外に肌寒い、天気の悪い日でしたが、このお店に入るとどこか暖まります。

 ギター仲間の一人・伊藤賢一くんは、キッチンパタータ初登場。相変わらず、素晴らしい音楽性を持ったギターを弾く人です。大屋ギターとマリンの音の良さは、すでに定評があります。

 ところで、ギタリスト二人なのに、それぞれギター2本ずつ持ち込んだため、ステージ上にはギター4本が並んでいました。知らない人が見たら「どこのバンドだ?」と思ったことでしょう。


[写真:ヤマキの12弦ギターを弾きまくらんとする浜田。]
 何と熊本から松戸に引っ越してきたばかりの一卓嗣くんまで見に来てくれて、感激しながら張り切って演奏しました。

 12弦ギターによるラグタイム演奏は、一種独特の強烈な音圧を生むので、なかなか新鮮に聞こえるのではないかと思います。

 歌ものの新曲「ふるさと困窮歌」「川のほとり」は、この日が初演。まさに歌い飛ばす感覚でやってみました。


[写真:フィールズを弾く浜田。「ふふん」と、ちょっと自慢気味?]
 そして、ツアーでは初登場となる、フィールズ。音は太くて密度が濃く、私のライブ演奏に今までになかった心強さを与えてくれました。

 別にこのツアーは、私のギター自慢が目的ではないのですが、まあいいかな。

 帰りは、何とまた伊藤くんの車で送っていただき、感謝のしようもありません。
 次は6月20日から始まる、彼の北海道ツアーでの再会を約束しつつ、お別れしたのでした。

 

★ 5月14日(水) 鎌倉・ The organic & Hemp Style Cafe & Bar 麻心(with 阿部哲也)

 続いては、いきなり鎌倉までの旅。
 今回のツアーでは、首都圏のライブ会場がバラバラで、新柏の次が鎌倉、国分寺、能見台と、かなりの移動距離があります。
 いつもは南千住の安ホテルに可能な限り連泊するのですが、さすがにこれでは少し無理があるため、この日から横浜の石川町にある安ホテルに三連泊ということになりました。国分寺はちょっと遠いですが、鎌倉と能見台が近い日程なのと、どちらも南千住のホテルでは日帰りが難しいと判断したため、探したところ、横浜でかなり価格の安いホテルを見つけたのでした。

 この石川町というところは、南千住に匹敵するような安ホテルや簡易宿泊所の立ち並ぶ街がありました。
 新たな安ホテル伝説の誕生(?)です。


[写真:この手の簡易ホテルで、2ドア冷蔵庫は初めて見ました!]
 1泊の金額が南千住と競るくらい安く、しかし建物は新しいし、部屋も御覧の通りなかなかのもの。ベランダはあるし、共同トイレもキレイ。短時間ならノートパソコンを貸し出してくれて、メールチェックもできるのはうれしい。
 おまけに、朝食のパンやコーヒーは無料というありがたさ。これまた貧乏ミュージシャンにお勧めのホテルです。

 欠点と言えば、お風呂がないこと。代わりに、7分200円のコインシャワー施設があります。
 そして、高速道路が近いため、夜の車の音がうるさいこと。ただし私は、そういうのは割と乗り切れる方で、ちり紙を水で浸して簡易耳栓を作り、快眠しました。


[写真:鎌倉の大仏様の厳かなお姿。]
 石川町から鎌倉の長谷までは意外に遠く、途中、江ノ島電鉄の風情ある姿に感動したり、「麻心」さんに立ち寄って荷物を降ろしてから、歩いて20分くらいのところにある国宝・大仏様を見学しました。

 さらに時間が少しあったので、お店に面した湘南の海を散策。いやあ、なんだかリゾート気分を味わいながら、時間がなくて食べられなかったお昼ごはんの代わりに、クッキーをバクバク食べてしまいました。

 そして、お店で阿部哲也さんと再会。この素晴らしいロケーションで、ゆるゆるとライブが始まりました。


[写真:板についてきた12弦ギターの演奏。]
 「麻心」さんの和める店内の雰囲気を感じつつ、窓の外から一望できる湘南の海を横目にしつつ、リラックスした演奏を心がけました(と言っても、12弦のメイプル・リーフは何度やってもエキサイティング)。

 なんか、お客様も良い具合にリラックスしていて、全員サザンオールスターズのメンバーみたいに見えてしまいます!


[写真:このゆるい雰囲気がまたいいのです。]
 写真には写っていませんが、阿部さんのエレキベースとの共演もあり、また会場の皆さんとのコラボレーションによる打楽器や親指ピアノなどとの即席セッションもあり、終始和やかな演奏会となりました。

 終演後は、窓から見える夜の三浦海岸を真正面にして、阿部さんと二人でお店の美味しいカレーライスをぱくつき、まるで映画のように大団円となったのでした。

 湘南よ、また会う日まで!

 帰りは、阿部さんの車で送っていただき、これまた感謝のしようもありません。
 さあ、次は移動の大変そうな国分寺だ!

 

★ 5月15日(木) 国分寺・クラスタ(with 堀尾和孝、覆面シンガー)


[写真:堀尾さん、歴戦の勇者!]
 初めて「湘南・新宿ライン」という電車に乗りましたが、いやはや夢の電車でした(笑)。なんでこんなに早く新宿に着いたのだろう、と最後まで合点がいきませんでした。

 さて、この日は国分寺・クラスタで、スーパーギタリスト・堀尾和孝さんと再び共演しました。新CD完成もあり、いつも以上のノリノリ具合。付け爪を飛ばしてしまうほどの熱演でした。さらに再びKEIさんとも打ち合わせ無しで共演。やんやの喝采でした。

 「レディー・マドンナを弾いたら女性のお客さんが増えたよ!」と言ってましたので、次回の私はエリナー・リグビーでもやりましょうか?


[写真:多分「川のほとり」を歌っている時の浜田。ちょっとマジです。]
 私も12弦とフィールズの二本立て演奏がとても楽しく、次にどの曲をやろうか、いっぱいありすぎて迷う場面もありました。

 そして、まあ、恒例というのか何と言うのか...


[写真:覆面シンガーの、嬉々として歌う姿。]
 このお店でのライブでは恒例行事となってしまった、覆面シンガーくんのステージ。

 何とオタルナイ・チューニングの12弦ギターを何の問題もなく弾いていたらしいです。やるね、覆面クン。ちなみに、私はこのとき、ちょっと外で夕涼みしてました。


[写真:二人の共演。堀尾さんは何でも合わせてくれるので助かります。]

[写真:上で終わりのはずが、メイドさんのエンディング?]
 そして、いつも楽しみにしている共演。堀尾さんはイナズマのように凄いフレーズがどんどん出てくるので、私も力技でなんだかわからない世界に突入。こうして、無事二人のライブが終わったのでしたが、実はここからが長かった(笑)。

 終演後もお客さんは大盛り上がりで、一人また一人とステージに上がり、気が付いたらなんか長大なセッション状態になってしまいました。

 なぜかクラスタに常備されているコスプレ衣装、実はいっぺん着てみたかったという女性が割と多いそうで(?)、この日もお客さんが着て、こんな感じになってしまいました。もう、何考えてるんですか(笑)

 ところが、ここで別の問題が発生。当然予想すべき事ながら、横浜・石川町までの終電に間に合わなくなってしまいました...
 すると、お客様の一人に送っていただけることになり、またまた大感謝。ホントにありがとうございました。

 こうして、無事に恒例のライブを終えることが出来たのでした。

 

★ 5月16日(金) 横浜・ぐりふぉれ屋

(この日の写真はなし...すみません。)

 横浜連泊の最終日は、能見台の「ぐりふぉれ屋」さんでの久しぶりのライブ。横浜といっても、意外に遠いのです。
 マイペースでたどり着くと、駅の近くで偶然店長のみとうきょうこさんと鉢合わせ。

 そもそも今回のライブは、MIXIの書き込みで知ったのですが、お店がJASRACの著作権料支払いに関する交渉に難儀していることがわかり、私もそういう問題には敏感なので書き込みしているうちに盛り上がり、「では、著作権問題に一石を投じるライブを!」ということで企画したのです。JASRACの「包括契約」(使った曲ごとにカウントするのではなく、店の広さや定員で一律みなし計算する方法)は、現在再考を求める論議が活発化しているところですが、私もラグタイム時代の曲を取り扱う関係で、以前から著作権の本質についてはいろいろ考えるところがありました。

 選曲は、PD(パブリック・ドメイン=著作権切れの楽曲)またはオリジナル限定で、あえて微妙な例もご紹介しながら、楽しく著作権について考えるステージとなりました。実は一般聴衆よりもむしろミュージシャンに見ていただきたいライブでしたが、あいにく思い通りの集客とは行きませんでした。しかし、この意義深いコンサート、私の今回のツアーでもベストパフォーマンスの一つだったと自負しています。横浜近郊の皆さん、またの機会によろしくお願いします。

 著作権とは何か、そして音楽とは何か、それは個人の発明品なのか、それとも多くの人から受け継ぐ伝統なのか。
 どんな方法ならみんなが納得して著作物にお金を払うのか。
 音楽家に限らず、ものを作る人が一生抱えていく問題です。
 その問題を、演奏させていただくお店にまかせっきりにせず、また単なるモラルの問題にせず、演奏者自身もきちんと考えていきたいものです。

 

★ 5月17日(土) 茨城・EAST OF EDEN (with okayan)


[写真左:安ホテルのパンとコーヒー。写真右:つくばエクスプレス。]

[写真:某ホテルの入り口。実は昔はラブホテルだったらしい。]
 三日間お世話になった石川町の安ホテル。無料のパンとコーヒーをいただきながら、また横浜ライブの機会があったら、次もここにしよう、と心に決めたのでした。

 この日は横浜から一路茨城県つくば市へ。秋葉原から初めて「つくばエクスプレス」という電車に乗りました。まるで新幹線のように早い地下鉄という印象でした。
 これはまだ新しい電車で、時間帯もあるのでしょうが、終点近くになると誰もいなくなってしまうのが奇妙な感じでした。

 終点のつくば駅を降りて、ネットで探した安ホテルまで歩いたのですが、重たい荷物を抱えて30分近くかかり(私はこれを「茨の道」と名づけました)、しかもチェックインが4時から。1時間早く着いたのですが、何とフロントに誰もいないので、荷物を預けることも出来ません。

 この某ホテル、部屋の電話で外線を掛けることができないし、飲み物の自販機が建物の外にあるし、おまけにトイレの水が少しユニットバス排水溝に漏れてしまうというていたらく...ここを選んだのは失敗でした。


[写真:リラックスして演奏するokayanさんの雄姿。]
 以前から共演したかった、地元のギタリスト・okayanさん。モリダイラのフィンガースタイル・コンテストでの受賞歴もある素晴らしいギタリストです。何と私とほぼ同い年。

 ホテルで待ち合わせていたのに、私が前述の状況もあって、ついうっかり部屋でグースカ寝てしまい、okayanさんはロビーで一時間も待っていたという話を、会場入りして初めて知りました。くは〜...すみません〜。
 この「ホテルでグースカ寝」事件、私のツアー伝説の一つに加わってしまいました。

 知り合いのお店で腹ごしらえした後、会場入り。先行のokayanさんのバーサタイルなギター演奏を、思う存分楽しんだのでした。


[写真:蛇の皮みたいな模様のヘンタイギターなのに、良い音だ!]
 East Of Eden は、もちろん初めてのお店で、アメリカで見た奥に長いカントリー・バーを思わせる、かっこいいお店でした。投げ銭ライブということもあり、和んだ雰囲気の中、私もokayanさんの楽しい盛り上げに負けじと、実力以上の熱演。

 持ち込んだギターの他、お店のギターであるレインソング(カーボンファイバー製の革命的ギター)も弾かせていただきました。ブレイシングもネックブロックもないという、ギターの常識を根底からひっくりかえすようなヘンタイギターなのに、出てくる音は実にギターらしい良い音をしていました。

 いや〜、全く不思議です。


[写真:二人の初共演は、ちょっとチェット風。]
 okayanさんは、やはりチェット・アトキンスのスタイルをマスターした人で、そこにイサトさん風のフィンガースタイルの感覚も感じられ、題材も含めてとても親しみやすい音楽だと思います。

 この二人の共演曲は、チェットやマールの演奏で有名なスタンダード・ナンバー「夢で逢いましょう」。私は、意外にも全く弾いたことのない曲だったので、即席でアレンジして合わせましたが、改めてokayanさんの楽しいプレイに引っ張られました。

 いわゆる「専業のプロミュージシャン」ではなくても、私はokayanさんやmasakiさん、北村昌陽さんのように、多くの才能あるギタリストたちを知っています。音楽に対する人それぞれに愛し方の一端に触れ、私は改めて彼らのような素晴らしいギタリストとの出会いをうれしく思うのです。それにしても、今回も私はokayanさんに車で送っていただき、このツアーでは終演後に人の車で送っていただくという幸運に何度も恵まれてしまいました。この場を借りて、お礼申し上げます。

 

★ 5月18日(日) 東京 文京区・音楽的自由空間 けやき(JRCミーティングに参加)

 5日連続ライブの後、この日は日本ラグタイムクラブ(Japan Ragtime Club、略してJRC)の年に一回の関東地区オフミーティングがあり、つかの間の休息という感じでした。といってもこの日はかなり蒸し暑い日で、つくばから重たい荷物とギター二本を抱えての移動は、とてもお休み気分では済みませんでした。途中、カワセ楽器にご挨拶して、それからやっとの思いでたどり着くと、待っていたのは皆さんの温かい笑顔でした。


[写真:ギターの佐藤さん、そして菅生くんと中岡さんのピアノ連弾。]
 好評だった昨年に引き続き、アマチュアのラグタイム好きが集まって親睦を深めるという会でした。初めて参加していただいた方も二名いらっしゃり、ラグタイム愛好家の輪が少しずつ広がりつつあります。

 思えば、ここは2006年秋のデヴィッド・トーマス・ロバーツさん来日招聘という一大企画にて、彼が一度練習場所として使った場所でした。あれからすでに2年も経過しているんですね〜。


[写真:浜田と室町さんの共演、そして記念写真。]
 会員の演奏もあり、ラグタイムとの出会いを語り合う時もあり、そして大矢さんの貴重なラグタイムのビデオ映像を鑑賞したり、また桜井さんのレコードコレクションの持ち込みもあり。あっという間に時間が過ぎていき、ついつい1時間延長してしまいました。

 菅生くんのコーヒーも美味しかったし、中岡さんが振舞ってくれたビールもうれしかったし、実に有意義かつ癒される会でした。

 次回は、またオムニバスCDの企画で盛り上がりましょうか!

 

★ 5月19日(月) 松本・アクアヴィーテ(with 前澤勝典)

 朝はあいにくの雨。このツアーでは、この後もよく雨に降られました。ともかく、新宿から高速バスで松本へ。
 松本に行くのは初めてで、今日は古くからのギター仲間にしてライバル、亀工房の前澤勝典くんと久しぶりのジョイント・ライブです。
 松本に着くと、怪しい雲行きながら、雨は降っていませんでした。まだ時間もあったことだし、ライブ会場近くの川のほとりで、1〜2時間練習しました。
 ひと気がない場所でしたが、何人か話しかけてくれたりしました。
 最近、小松崎健さんの影響もあってか、時間があったらとにかく練習がてらギターを弾きたい自分がいるのです。


[写真:ギルドの12弦ギターを弾く前澤くん。]
 前澤くんはもともとソロ・ギタリストで、アメリカのギタリストであるレオ・コッケやマイケル・ヘッジスなどから影響を受けつつ、アメリカでのギター武者修行の旅で自分の音楽を培ってきた人です。

 この日は、懐かしいレオ・コッケのレパートリーから、パワー全開のオリジナル曲まで、三本のギター(S.Yairiローデンタイプの6弦、ギルド12弦、そしてカナダ製のバリトン6弦)で弾きこなしていました。

 私にとって彼は、まさしく日本のレオ・コッケなのです。ソロ・ギタリストとしてはまだアルバムが発表されていないのが実にもったいない。早く出してよ!


[写真:数年ぶりの共演で、前澤くんの歌も!](写真:Oisanさん)
 私もギター2本ですから、この日は二人で計5本の超豪華ギターの祭典(?)でした。やはり前澤くんとのジョイントは、一種独特の緊張感と連帯感があるのです。彼と一緒に思う存分ギターを弾き倒してきたという感じです。

 お忙しい中お越しいただいた皆さん、どうもありがとうございました。

 帰りは、前澤くんの車で送っていただき、彼の家のある高遠へ。久しぶりにお子さんたちにも挨拶したかったのですが、時間がなかったので、またの機会に。


[写真:ぜひ一度紹介したかった、亀天国。]
 それにしても、前澤くんは実は亀研究家としての側面もあり、自宅前にはこんな亀天国まであります。「亀工房」の名前は、決して伊達ではないのです。

 ジョン・フェイヒイが好きな人ならピンと来ると思いますが、亀と言えばタコマ・レーベルの裏テーマとして、事あるごとにイメージを提供する不思議な生き物です。亀のようにゆっくり、しかし長く着実に歩み、自分の音楽を作っていきたいものです。

 実は、亀工房も6月に北海道(道東方面)に行くとのことですが、残念ながら札幌方面での演奏はないようです。また機会があったら、北海道でも共演しましょう!

 

★ 5月20日(火) 空き日程

 この日は、今回のツアーで唯一のオフ日。
 前澤くんの家に別れを告げ、名古屋行きの高速バスに乗り、名古屋に着いたら今度は近鉄の格安特急券を買い、大阪まで割とスムーズに移動できました。
 と言っても、一日移動に費やすことに変わりはなく、これならやっぱり名古屋でライブを入れておけばよかったと後悔しました。

 JRCオフミも入れると7連続ライブでしたので、さすがにちょっと骨休めも必要でした。
 宿泊はもちろん、天王寺動物園近くの安ホテル。何度泊まっても快適そのものです。
 むしろここに住みたいくらいです。

 この日やったことと言えば、メールチェックと、前回のツアーで健康保険証無しで掛かってしまった病院に行き、保険料負担分の還付を受けたことくらいでした。
 さあ、次からは西日本5連続ライブです。

 

★ 5月21日(水) 大阪・TEN-ON(with Yousei)


[写真:TEN-ONのペット、大ガメ様。]
 疲れていたのかぐっすりと眠り、よく休んで体調は万全。初めて行く町「関目高殿」(「せきめたかどの」と読みます)の貸しスタジオ、TEN-ONさんにて、楽しみにしていたYouseiさんと一緒にライブをしました。

 TEN-ONさんは親しみやすいスペースで、小規模ライブにはピッタリの環境でした。なぜかガメラみたいに大きな陸ガメがペットで、ここに前澤くんがいたらうらやましがりそうでした。

 そのせいでもないでしょうが、この日のライブは最もタコマ色の強い、不思議なライブになりました。


[写真:Youseiさん。ヤマキとマーチンを交互に弾いていました。]
 インターネットで知り合った大阪の若手ギタリスト、Youseiさんは、私が今まで知り合ったギタリスト中で最もジョン・フェイヒイに近い、不思議な感覚でギターを弾ける人です。この「アメリカン・プリミティブ・ギター」と呼ばれるスタイルは、実に奥が深く魔術的で、まだまだ未知の可能性に満ち溢れています。

 すでにCDやマイスペースで彼の音楽に触れていましたが、生演奏はまた格別。私は、自分の出番も忘れるくらい楽しんで聞きました。


[写真:ジョン・フェイヒイもビックリ、夢の共演!]
 大阪に滞在していた益田洋(Sketch)さんなど多くの方々に見に来ていただき、私も無様な演奏は出来ません。Youseiさんの演奏も刺激になり、演奏にどんどん熱が入りました。

 最後の共演は、完全フリーのセッション。ふと、今は亡きノダゴローさんと合わせている時の気持ちを感じました。

 これからも、自由なギターの魂を抱えて、お互いがんばりましょう!

 

★ 5月22日(木) 岡山・Pinball Cafe(with masakiμ、まる)

 さて、「私のギター列伝」にも書きましたが、「12弦ギター・ネック折れ事件」について語りましょう。
 ツアーで初めて持ち込んだヤマキの12弦ギター、F-250。ライブでも使えるこのギターの音の素晴らしさを再認識しましたが、実は...この日に大阪の御堂筋線のホームにて、ソフトケースの肩掛けのジョイント部分が不意に外れて、立てていた状態からうつぶせにバタンと倒してしまいました。幸い、念のためタオルを入れていた表面板は無事でしたが、ネック(ナットの裏あたり)に大きなヒビが入ってしまいました。
 仮にもギタリストならあんまり見たくない写真ですが、こんな感じでした。

 
ヘッドがもげてしまうのではないかと思えるほどの重症で、さすがの私も落ち込んでしまいましたが、ツアーはまだ4日残っているため、そんな甘っちょろいことは言っていられません。岡山に着いてから、ホテル近くの公園で、右の写真の通り、ガムテープで強引に補修して、何とかこれからの日程を乗り切る決意を固めました。

 なお、岡山でお世話になったホテルは、基本的にはカプセルホテルなのですが、鍵のかかる小さな部屋(ベッドの代わりにカプセルを使う)も少ないながらあり、私はその「カプセルルーム」に泊まりました。リッチでもなくチープでもない、なんか微妙な気分でした。


[写真:あの横山ギターを弾くまるさん。]
 ホテルから会場の「Pinball Cafe」までは歩いて1分という近さ。こんなに近かったのは多分初めてです。小粋なバーで、窓から見える川のほとりの景色もステキです。

 今回が初顔合わせとなる、ギタリストのまるさん。モーリスのSシリーズを作った職人として知られている横山正氏の「横山ギター」を駆使し、ラグタイムっぽい曲からパーカッシブなプレイまで、しっかりした演奏で楽しませてくれました。

 またまた若く有能なギタリストと知り合いになり、CDも物々交換。また新たな刺激を受けています。


[写真:masakiさんとは久しぶりの共演。]
 私が岡山でライブをやるときは、masakiさんを抜きにしては語れません。ライブのセッティングなど、いろいろご尽力いただき、改めて感謝いたします。

 この日はオベーションを用いた硬派な音色で、幻想的な曲からブルースまで、変幻自在の演奏を味わいました。この雰囲気はお店の空気にも合い、絶妙です。

 私の哀れな12弦ギターに大変ビックリされたようです。まあ話の種で一笑に付すには、ちょっとショッキングすぎでしたね。


[写真:ヘッドがもげないかどうか心配そうな浜田(?)。]
 12弦ギターのガムテープ補修は功を奏し、とりあえず弾けない事はないという状況だったので、いつもの通りの弾きまくリでした(笑)。

 ギターソロから歌もの「プハプハ」まで、一気に演奏していたら、あっという間にお時間となってしまい、最後に三人でワンコードセッションも行い、終演となったのでした。

 初めてのお店、初めての共演者、そして初めてのお客様。
 また新たにお知り合いになれた人たちと楽しい時を過ごし、私はライブ・ツアーの醍醐味に思う存分酔い、ギターの被災という悲しみをしばし忘れたのでした。

 お開きの後、ホテルが近いのは大正解で、筆舌に尽くしがたいほど楽ちん状態でした!

 

★ 5月23日(金) 山口・フォークソング


[写真:JR徳山駅前。「アサヒビール」駅ではありません。]
 岡山の両備バスでまず広島へ。そして徳山行きの高速バスに乗り換え。先の名古屋もそうですが、広島はただ経由するだけだったので、ちょっともったいない。この日程のやりくり、理想的ではありませんでしたね。

 揺られ揺られてついに到着した徳山。駅前のロータリー付近は信号機がなく、とても面白い町並みでした。

 格安ホテルは駅から歩いて1分、しかも吉野家の近く。ちゃんと部屋にユニットバスもあり、今回のツアーでは一番きちんとしたホテルでした。コインランドリーで洗濯を済ませてから、ライブ会場のお店へ。


[写真:「フォークソング」で初のライブ。後ろには日本フォークの名盤も。]
 ホテルから歩いて数分のところにある「フォークソング」は、以前何度も共演した岩手県のブルースシンガー・やなぎさんの公演記録を見て打診したお店でした。改めまして、やなぎさんに感謝いたします。

 ご覧の通りステージ背面に大型テレビが装備されていて、広さにも余裕のある素晴らしい作り。またマスターの寺本さんの飾らないお人柄に癒されました。

 全く知り合いのいない初めてのお店でのライブにもかかわらず、多くのお客様にお越しいただき、望外の喜びでした。張り切って歌い、また弾きまくりました。


[写真:「鳥」がピックで削れてしまったギブソン、いい音だ!]
 実は、お店にお電話した時に「浜田さん、歌は歌えますか?」と言われました。お店の名前が示す通り、歌を全然歌えない人はここでは出演できないのです。

 最初は歌ものオンリーライブにしようかなとも思いましたが、やっぱりギターが聴きたいという方もいらっしゃったので、歌とギターが半々というバランスになりました。

 私のギター2本の他に、お店にあったギター(カナダ・シーガルの12弦と、写真のギブソン・ハミングバード)も弾かせていただき、このツアーで唯一、豪華4本を駆使したライブになりました。

 終演後も、お客様の歌を満ち足りた気分で聴きながら、このお店の和気あいあいとした雰囲気に浸るのでした。
 みんな、私より歌がうまい...(笑)。

 

★ 5月24日(土) 北九州・フォークビレッジ(with 城直樹、長谷場隆嗣)


[写真:長谷場隆嗣さん。なかなか渋い写真になりました。]
 徳山から小倉までの移動は、JRを使いました。高速バスは小倉インターにしか止まらず、以前、あまりに駅までの移動が遠かったので(2005年秋のツアー)、これは避けようと思っていたのです。

 あいにくこの日は土砂降りの雨。格安ホテルからライブ会場までの道のりが遠く感じました。着いたらギターケースはびしょ濡れでしたが、フォークビレッジの小野さんがタオルを差し入れてくれて、とても助かりました。

 長谷場隆嗣さんは、前回のライブでもお世話になったクラシック・ギタリスト。レパートリーがさらに広がっています。私は耳に優しいメロディーを楽しみ、雨の中歩き通しだった疲れを癒したのでした。


[写真:リハ中の城直樹くん。中国のNAGAギター、カッコイイ!]
 前回、外見も中身もたくましい変貌を遂げていた(?)福岡のギタリスト、城直樹くん。パワフルかつパーカッシブなプレイと、世界を駆け回って自分の音楽を強くしてきたバイタリティー。いつも刺激を受ける存在です。

 あのAKIさんが新たに立ち上げた「Harvest Moon Records」からの新譜発表は、予定より遅れているようですが、それは完璧を期してのこと。間近に迫った発表の日がとても楽しみです。

 それにしても、彼がエンドーサーになっている中国製の「NAGAギター」、すでに表面板が大きく割れちゃってる...キミ、前にオベーションも割ったでしょ。ギターはいわば女性なんだから、もっとやさしくしなさい(笑)。


[写真:営業スマイルっぽい浜田。この日のフィールズもいい音でした。]
 土砂降りで、道に小さな川ができるくらいの悪天候の中、わざわざお越しいただいたお客様に最大限の感謝をしつつ、私もベストを尽くして演奏しました。

 前の二人がギターソロだと、ついつい歌いたくなってしまったり、昨日の歌もの多目のライブがいい方向に作用していました。

 終演後、小野さんと四方山話をしてから、やっと少し小降りになったところで、またホテルまで根性で歩き通しました。

 ついに明日は最終日です!

 

★ 5月25日(日) 福岡・Fermata(with 城直樹) NEW!!


[写真:福岡の自販機にあった不思議なドリンク。飲みたかった...]
小倉から福岡への移動は意外に遠い。やっとたどり着いたのは、昨年もお世話になった旅館でした。
http://www.otarunay.com/livenikki5-2.html#112

相変わらず、家犬がのんびりとした風情をかもし出していました。


[写真:城くんの凄まじいグルーブ感!]
 ついにこの日は、長かったツアーの最終日。前日と打って変わって猛暑でした。旅館から20分くらい歩いてお店に着くと、早くもビールが飲みたい気分。実際、城くんと彼女はすでにビールを飲んでしまったのだそうで...。

 Fermata(フェルマータ)は、すでにビル立ち退きが決定しているお店だそうですが、小さいながらも洒落た雰囲気のバーでした。前日に引き続き、城くんと私のジョイント・ライブでしたが、演奏者との距離が近い分、生の醍醐味を味わいました。

 この日の城くんの演奏は、ホームグラウンドということもあってか、前日以上に空気がパキーンとはまった感じ。彼のスケールの大きな音楽に、会場は大きく盛り上がりました。


[写真:何とかヘッドがもげないで済みました。よかった!]
 ツアー最終日をこのように盛り上がって終えることが出来たのは、ひとえに城くんのおかげです。どうもありがとう!

 なんとか分解しないで持ちこたえてくれたヤマキ12弦ギター、そして学生時代から続く相棒・フィールズからも、ライブのたびに力をもらいました。(ちなみに、ヤマキは、北海道に帰った後、すぐにリペアに出しました)。

 万感を込めて、最後の演奏(&歌)を楽しみました。


[写真:あの城くんが、なんとクラシック・ギターを弾いた!]
 最後の共演は、私の歌もの「忘れません」でしたが、なんと城くんがお店のクラシック・ギターを弾いて合わせてくれました。

 なかなか見られないものを拝ませていただき、お客様も私も得した気分だったかも知れません。このギターで彼の代表作の一つ「フレア」とか演奏したらさらに凄かったと思いますが、多分このギターなら1分くらいで壊れてしまうでしょう(笑)。

 終演後はお客様も交えていろんな話に花が咲き、私は気が付いたらオタルナイ・チューニングの講釈までしていました(笑)。福岡の皆さん、また機会がありましたら、よろしくお願いします。

 

★ 5月26日(月) 小樽へ戻る NEW!!


[写真:福岡空港に飾ってあった信長の博多人形。]
 福岡空港は、主要都市の空港の中でも街からかなり近く、交通の便の良い空港として知られています。泊まっていた旅館から、歩きを入れても20分くらいで着いてしまいました。

 空港によっては、主要都市に着くのに1時間ほども掛かるところが珍しくないことを考えると、ツアーの行き、または帰りは、絶対ここにした方が便利です。(ついでにマイルもたまるし...)

 あいにくこの日の便はほぼ満席状態で、実はソフトケースの12弦ギターを預けるかどうかで受付と一悶着あったのですが、何とか穏便に機内持ち込みをすることができました。

 これ以上ギターのキズが広がったら、間違いなくバラバラになってしまうところでしたから、珍しくごねたのです。このギターにひどいことをしてしまった私の、せめてもの誠意なのでした。

長く、時につらいこともあったツアーも、終わってしまえば、いい思い出しか残っていません。
改めまして、関係者の皆さんやお客様たちに、最大限の感謝をしたいと思います。

さて、次回のツアーは、11〜12月頃を予定しています。
 (なお、9月には、ドン・ロスの来日コンサートを見た後、東京で1〜2日の小規模ライブ企画を考えています)。
またよろしくお願いします!

(完)

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